本町通り 上―キャロル・ケニコットの物語 (岩波文庫 赤 319-1)

制作 : 斎藤 忠利 
  • 岩波書店
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003231913

感想・レビュー・書評

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  • NHKおはよう日本でも特集されたので「マイルドヤンキー」って言葉を聞いたことある人は多いかもしれない。いわく「「地元」「仲間」「絆」という言葉が好き」で「地元から出たくなくて、半径5km程度のエリアが生活圏のすべて」で「車(特にミニバン)が好き」「ショッピングモールが好き」などが当てはまる人種。マイルドヤンキー層自体が外向けの発信がないので統計も取りようがないらしいんだけど、今の日本の20代で言えば約3割がマイルドヤンキー層に当たるって説もある。

    でも私がそれらを聞いて思い浮かぶのは、適当って言葉でごまかすいい加減な感じで、未来志向に欠け、自分たちの属性に入らない者を排除する閉鎖性とか、ネガティブ要素ばかり。ほら、JRの電車をちょっと乗れば行けるところにあるよくある感じの地方都市で、どこの駅前でもデジャビュじゃないかっていうくらい同じような景色のなかにあるチェーン居酒屋に入れば、そういう奴らに労せずして遭遇することできるはず。だけど少なくとも私は、そういう奴らの生き方や考え方って、正直言って吐き気がする。何で格好とか考え方とかがあれだけ同じベクトルになるんだろ?

    私が嫌なのは、“あちら側”の奴らは決して“こちら側”に歩み寄ったり交流したりしようとしないだろうってこと。つまり“あちら側”が多数派を占めてしまえば、中間層は存在しないので、“こちら側”の意向なんか全く無視されてあちら側一色に塗り込められてしまうのではないかってこと。すごく危険な感じがする。
    実際、テレビ番組が明らかに“あちら側”の嗜好に片寄ってるって、常識のある人間なら気付いてると思う。だからあんなにつまらないってことも。

    以上長々と書いたけど、そういうある意味「いびつな」地元嗜好は20世紀前半のアメリカでも形は違えど似たようなものがあったらしく、そのいびつな感じを、大都会から来た若い女主人公キャロルの眼で描きだそうとしたのが、この小説。

    しかし、やはり後にノーベル賞を受賞する作家の作品だけあって、私のように「いびつな感じ」などといった“こちら側”の視点からだけの描写では収まっていない。“あちら側”から見た“こちら側”の人間の考え方の矛盾や、自分たちの考えの正当性が畳みかけるように描かれ、ページ数が多いながらも、読んでて飽きない。

    また、シンクレア・ルイスも一地方の小さな話のみにおさめず、当時のアメリカ自体を一つの大きな地方都市に見立てたかのように、望遠レンズと広角レンズを巧みに使い分けている。
    だから、目くじらたてて地元嗜好の生き方がマルかバツかとか、そんな読み方じゃなくて、両側が入り混じった喜劇的エンターテイメントとして読み、そういうふうに肩に力を抜いてたら、お互いの側のいいところ悪い所が客観的にわかるようになって別の側を否定排除するような小さな生き方から脱却できるような視点が結果的に得られたというのが作者の意図にかなっているのかなって思う。
    (2014/7/26)

  • 翻訳がひどい。が、ストーリーは面白い。田舎のねずみと都会のねずみ。勝つのはどっちだ。08.3.12読む。

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