大地 1 (岩波文庫 赤 320-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003232019

感想・レビュー・書評

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  • 作品名は知っていましたが、これまで未読でした。
    第1部は、貧しい農家の王龍とその一族の運命の変転が描かれました。不作の影響で餓死しかけ、一度は故郷を後にしますが、土地を手放さなかった王龍は再び故郷へと帰り、大地主として成功しました。しかし豊かになっても、家族には問題が多く、年老いた王龍の心が安まる日はありません。
    この巻では、極限状況の中でも生き延びようと努力する王龍たちの姿が心に残りました。その心の支えになったのは、彼が故郷に残してきた土地でした。

  • 亡き父が一番好きだった小説
    尊敬する父の感性を感じたくて20年ほど前に読んだ
    素晴らしい小説を読めたことに感謝、父との絆を感じる大切な本

  • 名作

  • 一巻だけの内容を簡単に述べてしまうと農民の成り上がりの物語。
    貧しい農民は一生懸命働いて大金持ちになりました、めでたしめでたし、とどこか寓話的ですらある。
    もちろん、めでたしめでたしで終わるわけもなく、お金持ちになり、大家と呼ばれるようになっても、妻や妾、息子や娘や叔父・甥の親戚づきあいなど、王龍の家の中のゴタゴタが収まることはない。
    しかし、どんな時でも彼が持っている大地だけが王龍を支え癒やしてくれたのだ。
    彼は大地とともに産まれ、生き、そして大地に還っていった。
    飢饉で貧しく、食べるものがなくて苦しい時でも、自分には土地があると言って、自らを奮い立たせていた。

    もちろん、土地を買うのにもお金がいるし、土地を持っているだけでは意味がなくそこから作物ができなくてはならない。
    農作業をする王龍を生涯支えたのが妻の阿藍であった。
    阿藍は美人ではなかったが、彼を献身的に支え続けた。
    阿藍のおかげで王龍は大家になれたと言っても良いのだろう。

    そのため、大地の第一部の主人公は確かに王龍なのだが、阿藍も同じく影の主人公としての立場をもっといて、彼女に対する描写は非常に強い印象を残す。
    パール・バック自身が女性だからというのも理由の一つかもしれない。

    個人的には阿藍が死ぬシーンが一番心に来るものがあった。
    彼女の親に捨てられたというつらい思い、奴隷だったことの苦難、夫の愛人に対する嫉妬、息子を生み旦那を大家にしたという自負、そして旦那への愛情と裏切りに対する憎しみ、それらが死の直前に現れては消えていき、その姿は王龍を考えこませてしまうことにもなる。
    王龍にとっては、阿藍も大地の一部、もしくは大地そのものの存在だったのではないだろうか。

  • 土地にこだわり逞しく生きる民を描いた小説。時代か、平気で奴隷という表現が飛び交い、登場する。逞しく生きるとは、どういう事か。怠惰に悩む余裕のないほど、その日食べるのに必死で、しかし、子供を生み、育てる事。世代の継承と生命の維持への力強い意思。小説からはそんな事を感じた。

  • 内容紹介
    十九世紀から二十世紀にかけて、古い中国が新しい国家へ生れ変ろうとする激動の時代に、大地に生きた王家三代にわたる人々の年代記。(Amazonより)

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    第1巻の内容は、土地をベースに一代で財をなす、「王龍」の物語。

    舞台は清代末期の中国。
    動乱の時代の中で、市井の人々はどう暮らしていたか?
    についてとても興味深いです。


    個人的にもこの時代にはとても興味があって...
    宋家の三姉妹とか、1911とか映画も見たり
    蒼穹の昴や中原の虹、ラストエンペラー...


    激動の時代だからこそのネタには事欠かないのでしょうが、
    この作品はそんな中でも政治に関わらない一農民(の家族)の
    姿を描いたと言う点で秀逸でしょう。


    革命があり、飢饉があり、水害があり、それを強くたくましく乗り越えていく王龍とその妻。
    中国の人々の暮らしや風俗が、ここからも分かります。


    この妻がまた、素晴らしい。
    って言うか働き者すぎ。
    王龍の出世はもう完全にこの人のおかげ。
    労働者の妻の鑑ですよ、本当...
    よく子供元気に育ったなぁ~。
    やっぱりかまい過ぎるのもよくないんでしょうねぇ。


    作者は外国人ですが、とても中国を愛していたとのこと。
    外国人である意味特別である作者が、ここまで書けるのは、
    やはり人民の暮らしに深い興味を持って見ていたからなのでしょう。


    にしても、働く労働者が労働の内容はいろいろあるけれど、
    理由を見つけては少しでもお金をせびろうとしたり
    少しでも怠けようとしたりする姿には苦笑です。
    事実この通りだったんでしょうね~。
    監督する立場はほんと、大変(´・ω・`)


    辮髪が古臭い、と言われていたり、
    どの辺の話なのかな~と歴史を紐解くのですが、
    あまりはっきりとした答えは見つかりませんでした。


    それはきっと、民衆の暮らしは時代と関係なく流れていく部分が確かにあって、そのことを強調したかったのかも、と自分を納得させる(笑。


    もちろん革命や戦争などの大きな流れには少なからず影響はありますが...
    (2巻では三男が軍人になりますし)


    ともかく、中国の大地を愛し、大地から生命を得て、大地とともに生きてきた王龍。
    でもその息子たちは、どうやらその大地から離れて行ってしまうようです...
    二代目ってねぇ...いつの時代もねぇ...(o_ _)o.。oOO


    待て次号。(笑

  • 資料ID:C0019406
    配架場所:本館2F文庫書架

  • 高校時代に出会った本。 一気に引き込まれていく内容。波瀾万丈。

  • 全四冊の中でいちばん読み応えのある第一部を収録したのがこの巻.だから,この巻だけ読んでもいいが,他の巻も読むと全体としてはもっと良い.立体的になって,深みがでる.全体の感想は第四巻で.

    ここでは今更ながら,ちょっと気になったことを書いておく.
    手元にある本(第四巻)は,1997年の一刷で定価は700円.今2012年は987円.すごい値上がり.これじゃ,中学生とか高校生はおこずかいで四巻買うわけにはいかないだろう.そして本は売れなくなる.

  • 1巻の最後の言葉が、話を特徴付けている。

    「安心してください、お父さん、土地はけっして売りません」

    土地は売らないが、人間は売買する。

    そういう文化、そういう時代があったのだ。

    人間の尊厳よりも、自然の大地の方が強い。

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著者プロフィール

(Pearl Sydenstricker Buck)
1892-1973。アメリカの作家。ウェスト・ヴァージニアに生まれる。生後まもなく宣教師の両親に連れられて中国に渡り、アメリカの大学で教育を受けるため一時帰国したほかは長く中国に滞在し、その体験を通して、女性あるいは母親としての目から人々と生活に深い理解をもって多くの作品を発表した。1932年に『大地』でピュリッツァー賞を、38年にはノーベル文学賞を受賞。また1941年に東西協会設立、48年にウェルカム・ハウスの開設と運営に尽力するなど、人類はみな同胞と願う博愛にみちた平和運動家としても活躍した。

「2013年 『母よ嘆くなかれ 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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