- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003232354
作品紹介・あらすじ
コンプソン家の現在を描き、物語にいっそうの奥行きを与える後半。「奇蹟が起きた」と言われるこの作品の成立によって、フォークナー独自の創造世界は大きく開花し、世界の文学に幅広く影響を与えた。のちに書かれた「付録」も収録。
感想・レビュー・書評
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2023年6月22日読了。
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ああ、家族ってこうだよな、と思う。上巻では家族同士の細部の関係、微妙な距離感まではわからなかったのだけど、下巻でやっとつかめた感じ。一つの家に暮らすって、血の繋がった家族だろうと、いや血の繋がった家族だからこそ?楽じゃない。ジェイソンは嫌なやつだけど、この環境でよく耐えたなとも思う。これだけの貧乏くじを引かされたら、お金を貯める唯一の楽しみくらいは見逃してあげたくなるが、それを容赦なくぶんどって逃げる姪クエンティン。ああ、やはり血は繋がっている。
終盤の、ディルシーを始めとする黒人たちの様子を見ていると、やはり人間て原始の暮らしに近いほど幸せだったのではないかと感じる。金や家柄や社会的地位や複雑化した宗教や、そういったものに囚われた人間たちの起こす自分で自分の首を絞めるような悲劇。そしてやがて豚の尻尾をもつ子が生まれ、家系は断絶する。クエンティンが近親相姦を犯したとは思えないが、このモチーフが「百年の孤独」につかながっていくのだな。同じ名前の人物が登場するところも。兄妹間の愛情の発露など、ところどころ、アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」を思い出す部分もあった。
これで「八月の光」「アブサロム!アブサロム!」と合わせて3作読んだが、わたしにはアブサロムが一番しっくりきた。やはりサトペンが強烈な印象を放っていたからかな。この「響きと怒り」に出てくる人物たちは、それぞれが「生きている」感じがして良い意味で普通の小説というか実際の人間に近い。これが一番しっくりくるという人もいるだろう。 -
第一章を読み終えることができるかどうかが、本書を読了することができるかどううかを決めるだろう。人間の意識の流れをリアルに文章化するという試みであり、これほど読みいくい文章を他に知らない。頁内で数回という頻度で時代と場面が変換する。巻末の場面転換表と解説を見ながらでなくては全く理解できないと思う。しかし、この第一章こそが本書の最重要部分であることが読了後にわかる。
二章以降は、「アブサロム、アブサロム!」「八月の光」に比べると非常に読みやすい。これは原文がわかりやすいのか、翻訳がうまいのかはわからない。個人的には、代表作三作では「八月の光」が一番好きだが、本書も傑作だと思う。 -
さーっぱりわからん!巻末の解説を読んでわかった気になって終了。
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何の予備知識もなく読み始めると、第一章での変な文章に内容の理解を妨げられてとまどってしまう。英語でいうところの補語やら目的語が抜けていたり、主語と述語が対応していなかったりするので。そして、登場人物が錯綜して、ある人物が突然出てこなくなったかと思うと別の場面で突然戻ってきたりすることにも混乱させられる。でも、この版のすごく親切な註と場面転換点一覧表のおかげで、あの意識の流れ手法が頻繁に使われているのがわかり、用心して読み進められるようになる。小刻みな転換にはついていけないところもあるけど。もっとも、フォークナーという超絶有名作家はジョイス、プルーストやウルフと並んで意識の流れを多用するというのは文学好きにとって常識なので、この点で戸惑う人は少ないかもしれない。では、あの文章は何だ?という点に混乱は収束する。100ページほど読み進めていくとその疑問が解消する仕掛けになっている。用心深く読む人はもっと早くそのことに気づくのだろうけど。ただ、時間が入り乱れている形式を払拭すると作品自体はそれほど複雑ではないが、出来事とか体験とかが詳細されるのではなくてフワッと単発で示されたりする点がプロットを追い難くしているような気がする。また、語り手たちはそれぞれクセのある人たちで、とくにニヒリスト的に行動したり交渉したりする自人物の語りは気分が滅入ってくる。それと、背景説明がない作品なので各章がどうつながっているのかを把握するのにかなりのページ数を消費させなければならず、これが読むにあたってのストレスとなるので我慢のしどころ。併せて、注は親切であることは間違いないのだが、ある場面の解釈に、~とする説がある、と古文書解読みたいな言い方が散見されるが、そんなのフォークナーにどうして確認しなかったの?と単純に疑問に思う。もっとも、ジョイスを読んだ時にも全く同じ思いを抱いたのだが。
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津村の読み直し世界文学の1冊。ほとんどが情景描写と会話である。太字の箇所も上巻ほど多くない。100年前のことなので、黒人が使用人となっているというパターン化として描かれている。
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ディルシーの一言「とにかく、おめえさんも神様の子供だで。オラだってそうだで、ありがてえ事だ。」