オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003233016

感想・レビュー・書評

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  • 家に眠っていた本書。心あたたまる話が多くて、ほっとしました。一番好きなのは「水車のある教会」。生き別れた父娘の邂逅に涙が出そうになりました。次に良かったと思うのは「桃源郷の短期滞在客」。奇跡のロマンス。この話は何度も繰り返し読みました。

  • 津村の読み直し世界文学の1冊である。いくつかの話が教科書でとりあげられるほど日本でもよく知られた本である。賢者の贈り物や最後の一葉がそれである。他の話は犯罪や暴力と関連するので教科書に掲載されなかったのであろう。作者が刑務所に入っている間に書き上げたということで犯罪も取り上げられている。起承転結の日本型文型とさらに最後のどんでん返しでは落語の世界に通じているので日本でも愛された小説なのであろう。

  •  短編集などは今まであまり読んでこなかったがこの本が家に埃と共に転がっていたので読んでみることにした。
     全ての話が面白かった。どんな結末になるのかワクワクしながら読むことができた。中には既知のものもありこの人の話だったのかと驚いたりした。

  • 『賢者の贈りもの』
    あまりに有名な代表作。

    『警官と賛美歌』
    あえて一言で評すならば、徹底的な勧善懲悪。
    こういった世界観を面白おかしく表現できるのがオー・ヘンリーの真骨頂だと思う。

    『マモンの神とキューピット』
    『賢者の贈りもの』を書く人間が書いていると思うと面白い。
    世の中、金ですわ。

    『献立表の春』
    古風な恋愛小説。
    私も含め、恋愛を文字で楽しむのが好きな人には大好物だと思う。

    『緑のドア』
    個人的に一番好き。
    真の冒険者にはなれなくとも、並以上の冒険者ではありたい。

    『馭者台から』
    教訓話でも、感慨深い話でもない。ただオチでふふっとさせることに特化した作品。
    酒は怖い。

    『忙しい株式仲買人のロマンス』
    「職業病と恋愛」という観点では『馭者台から』と同じ。
    「仕事と私どっちが大事なの?」とはよくあるフレーズだが、本作では「仕事の合間なんかに告白?」と思わせておいて、「仕事の合間にも告白」と、どんでん返しする展開が面白い。

    『二十年後』
    オチは読めた。
    オチが読めるくらい使い古された設定ではあったが、その設定の走りがこの小説だとしたら、本作が偉大であることに間違いはないだろう。

    『改心』
    『警官と賛美歌』とは対照的な作品。
    真にまっとうに生きようとする人間は、その心がけが行動に現れるものだ。

    『古パン』
    木炭画に関する多少の知識があったため、展開は読めた。というのは読者目線の客観的な話。
    恋は盲目と言うが、相手の気を惹こうとする行為が独善的になりがちという点には気をつけなければならない。

    『眠りとの戦い』
    持つべきものは親友。
    いかに紳士的な人間であろうとも、欠点はある。しかし、それを素直に受け入れて反省できるのも紳士というものだ。

    『ハーグレイヴズの一人二役』
    信念とお金という観点では『マモンの神とキューピット』に類似性がある。
    格式や伝統、古き良き時代といったものに固執する人間は、何より「理由」を重んじる。リディアの最後の一言は皮肉が効いていてとてもよかった。

    『水車のある教会』
    都市の喧騒を離れて、自然の中で傷心を癒す2人の出逢い。
    献身者と苦労人にはこれくらいの奇跡が起きてもいいだろう。

    『赤い酋長の身代金』
    他とは打って変わってコミカルな話。
    軽快な一人称視点がよかった。

    『千ドル』
    かなり考察の余地がある作品。以下、個人的な解釈。
    二千二百ドルの宝石に対して、千七百八十五ドルの預金残高。人によって1ドルの重みや使途が違うことを知ったジリアンは、恩を着せることなく愛する人に千ドルを渡した。これは愛する人へのある種の”かっこつけ”であり、一回で使いきるというジリアンの考えにも合致する方法であった。その点、ジリアンは利己的に千ドルを使用した。しかし、表面的には利他的な行為に見える。それで5万ドルを受け取っては”かっこつかない”。ジリアンは5万ドルよりも自身のプライドを重いと捉えたのだ。
    以上のことから、お金の重みや使途から人が大事にしているものが見えてくるという話だと思った。

    『桃源郷の短期滞在客』
    隠れ家的な避暑地で思い切り贅沢をする男女の話。
    世間に知られていないような高級すぎない別荘地に少し背伸びして行ってみるというのが、肩のこらないバカンスの楽しみ方かもしれない。

    『ラッパのひびき』
    人間には信義や思想があり、ときにはそれらが善人にとっての足枷となる。しかし、お金は善人にも悪人にも等しい価値をもつ。その平等さは善人の足枷を払うことにも繋がるのだ。

    『マディソン・スクエア千一夜物語』
    おそらくチャーマーズはどちらの女性を選ぶべきか、心のどこかでわかっていたのではないだろうか。
    人は重要な選択をするときこそ、他人(それも赤の他人)の後押しを無意識に求めるのだろう。

    『最後の一葉』
    小説とは、最後の一葉みたいなものかもしれない。
    言葉や絵の具が直接病気に効くことはないが、魂の込められた作品は、人を生かす力を与える。

    『伯爵と結婚式の客』
    世の中のお嬢さんたちよ、男とは単純な生き物なのだ。物思いにふける態度や嫉妬心を煽るエピソードがあるだけで簡単に落ちる。
    男とはそういう生き物だ。

  • 1998/01/--

    「賢者の贈りもの」は有名である。自分の大切なものを売ってまで、相手に物を贈る気持ちは私にはもちろん、今の人もないと思う。「忙しい株式仲買人のロマンス」は「馭者台から」と同様ラブロマンス。「献立表の春」は心和むハッピーエンド。でも、「警官と賛美歌」はせっかく更正した不労者を最後になって刑務所に入れるなんて・・・。

  • 小学生の頃、給食の時間に「ラジオ図書館」というラジオドラマのシリーズが校内放送で流れることがあった。そのなかで唯一おぼろげに覚えている話があって、それがどうやら本書にも収められているオー・ヘンリーの「古パン」らしいと知り、確認を兼ねて読んでみた。
    結果、かつて聞いて断片的に覚えていた話がつながった。……つながったけど、どうということのない、おせっかいのあまり恋を逃した運の悪い女の人の話だった。男のほうも、仕事が台無しになったのは気の毒だけど、彼女の好意を受け止めず怒鳴り込んでくるなんて狭量である。何でこんな話がラジオドラマになっていたのかよくわからん。ラジオドラマ化されるくらいだから、それなりのよさがあるのだろうか。
    「古パン」を含む全20編のなかには「賢者の贈り物」や「最後の一葉」といったよく知られた作品も含まれるが、筋を知っているこれら以外は物語の世界に入り込むのに難儀した。ちょっと距離感のある筆致というか、洋モノにありがちなもって回ったような技巧的な表現がなされているということかな。何となく皮肉っぽいというか、現実を見せているというか。たとえば、「賢者の贈り物」も「最後の一葉」もハッピーエンドとは言い切れないものが残る感じ。

  • 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でも触れられた「古パン」(原題"Witches' Loaves"、劇中では「善女のパン」)も含む20の短篇を収録。
    率直に言って、すごい。彼の作品のユーモアとペーソスはいわゆる小説っぽいものではない。自分を含むあらゆる生きた人間の内も外も知り尽くし、ささやかな日常を観察し続けて得られたような、そんなリアリティーがある。
    「人の世は笑えん喜劇と笑える悲劇のよじれあい」(連続テレビ小説『おちょやん』より)という人生や人間の特徴をよく捉えた、素晴らしい作品だと思う。
    お気に入りは「二十年後」、「ハーグレイヴズの一人二役」、「桃源郷の短期滞在客」、「最後の一葉」。訳文にところどころ日本っぽさがある点が惜しい。

  • 3.9/592
    『絶妙のプロット,独特のユーモアとペーソス.この短篇の名手(一八六二―一九一〇)は,時代と国境をこえて今も読者の心を把えつづけている.それはしかし,単に秀抜な小説作法の故ではないであろう.彼の作品には,この世の辛酸を十分になめた生活者の,ずしりと重い体験がどこかで反響しているからである.傑作二〇篇をえらんだ.

    ■内容紹介
     ポー,ホーソン以来の伝統や雑誌の隆盛などで,アメリカでは短編小説というジャンルがたいへん発達し,多くの名手を生んでいるが,独自の型を作りあげ多くの読者を獲得してきた点で,オー・ヘンリーはアメリカ短編小説の代表的作家のひとりと言うことができる.アメリカ,イギリスだけでなく,西欧,東欧,日本など,世界の十数ヵ国語に翻訳されて読みつがれている.……読者の多さと作品の質はかならずしも関係ないが,ある意味で,オー・ヘンリーは『風と共に去りぬ』のマーガレット・ミッチェルとならんで世界に向かってアメリカを代表している作家と言うことができる.……
     オー・ヘンリーの作品の特徴は,しばしば指摘されることだが,独特のユーモアとウイットとペーソスにある.そしてそれを効果的に伝えている巧妙なプロット,とくに巧妙に工夫された出だしと意外な結末にある.それはまさにオーヘンリー流の作品と言えばだれにでもすぐ分るような独特な型を作りあげている.だがその意味であまりにも型通りなため,それに意外な結末がしばしば偶然の助けを借りているため,彼の作品は面白おかしいただの作り話であるかのように言われることが多い.事実その傾きもないわけではない.だが,ここで一言しておきたいことは,……彼の作品もただの作り話ではなく,彼自身の生活を代償にして生まれたのである.彼の作品が読者の心を打つゆえんはそこにある.』
    (「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b247573.html


    目次
    賢者の贈りもの/警官と讃美歌/マモンの神とキューピッド/献立表の春/緑のドア/馭者台から/忙しい株式仲買人のロマンス/二十年後/改心/古パン/眠りとの戦い/ハーグレイヴズの一人二役/水車のある教会/赤い酋長の身代金/千ドル/桃源境の短期滞在客/ラッパのひびき/マディソン・スクェア千一夜物語/最後の一葉/伯爵と結婚式の客


    著者:オー・ヘンリー(O. Henry)
    訳者:大津 栄一郎
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎260ページ

  • 楽しかった。
    赤い酋長の身代金は声を出して笑った。

  • 古典として楽しんだ。やはりニューヨークものがその時代の悲喜こもごもを描いていて面白かった。意外なオチに救いがあってあたたかい気持ちになれた。

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