水妖記(ウンディーネ) (岩波文庫 赤415-1)

  • 岩波書店 (1978年5月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784003241516

作品紹介・あらすじ

湖のような青い瞳、輝くブロンド。子供をなくした老漁夫のもとにどこからか現われた美少女ウンディーネは、実は魂のない水の精であった。人間の世界にすみ、人間の男と愛によって結ばれて、魂を得たいとねがったのだ。――ヨーロッパに古くから伝わる民間伝承に材をとった、ドイツロマン派の妖しくも幻想的な愛の物語。

みんなの感想まとめ

水の精ウンディーネと騎士フルトブラントの切なくも悲しい恋物語が描かれています。古くからのヨーロッパの民間伝承に基づき、ウンディーネは人間の魂を求めてフルトブラントと結ばれますが、彼の心変わりによって運...

感想・レビュー・書評

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  •  三島由紀夫の『仮面の告白』の中に出てくるのだが、これまで全く知らなかったので一度読んでみようと思い、タイトルを手帳に書き留めておいた。先日アマゾン・マーケットプレイスに1円で出品されていたのを見て、直ぐに取り寄せた。

     表紙には「ヨーロッパに古くから伝わる民間伝承に材をとった、ドイツロマン派の妖しくも幻想的な愛の物語」とある。

     娘をなくした漁師夫婦に育てられた水の精ウンディーネと騎士フルトブラントの恋物語だ。水の精であるウンディーネはフルトブラントと結ばれ、人間のような魂を得るが、やがてフルトブラントはベルタルダに心変わりすると、ウンディーネは姿を消してしまう。実はベルタルダは亡くなったと思われていた漁師夫婦の娘だった。やがてフルトブラントがベルタルダと結婚すると、水の精ウンディーネは掟に従いフルトブラントの命を奪う。

     ウンディーネの由来は、水精をラテン語のunda(波)に基づいてウンディーナ(undina)と名づけたが、ドイツではこれをウンディーネ(Undine)またはオンディーネ(Ondine)と呼び、フランスではオンディーヌ(ondine)と呼んでいるそうだ。

     伝承では、水の精は女の姿をしていて、人間の男に愛され妻になると魂を持つ。夫は水辺でその女を罵ったりすると、女は水中に帰ってしまう。その後別の女を娶ると、水精が夫の命を奪いに現れるという。こんな怖い伝承があって、フーケーはこの『水妖記』に仕立て上げたのだという。オペラやミュージカル、バレエなどにもなっている、ヨーロッパでは良く知られた言い伝えらしい。これまで知らずにいたのが恥ずかしいくらいだ。

     岩波文庫は「読まずぎらいしていませんか」と書いている。確かにドイツ文学なんていうと取っ付き難いように聞こえる。しかしそれでも読んでみるべきだ。読んで良かった。こんなに面白い物語が埋もれていた。三島由紀夫に感謝しなければならない。

  • ジロドゥの戯曲「オンディーヌ」(光文社古典新訳文庫)を読み、そうなると自然と手に取りたくなるのがこちら、フーケの手による「ウンディーネ」。同じ素材でありながら書かれた時代も国も違うので、その比較だけでも楽しめます。オンディーヌがフランスらしいエスプリの効いた作品で、ウンディーネはいかにもドイツ(といっても、フーケにもフランス人の血が流れているみたいですが)らしく、真面目に「あらかじめ約束された悲劇」を寄り道せずにきっちりやり抜いた印象です。これだけ感触が違うとどちらが好きかだなんて気安く決められませんね。

  • 水の精と騎士との切なく悲しき恋の物語。

    装飾の重ねられた風景描写が特に可憐。
    童話としても小説としてもロマンチックで夢がある。
    訳文(特に台詞。女性が唐突に男言葉になる)に若干の違和感があるのが残念だった。
    途中で物語を端折られて、言い訳に筆者が出てきたのも大きく減点。
    しかし全体としてみれば面白かった。

    騎士は優柔不断で乙女は心醜く、水の精だけが、ただただ憐れなほどに美しい。

  • 魂を持たないウンディーネがフルブラントと結婚することで魂を手に入れる。ただベルタルダの本当の両親をあのタイミングで探してきて披露するあたりは…。フルブラント、ベルタルダの勝手な動きは読んでいてイライラ。ベルタルダについてはちょっと同情はしてしまうけど。民間伝承って事で原型になった事件とかがあったんだろうな~とかも想像してしまう。

  • フリードリヒ・ド・ラ・モット・フーケーの『水妖記』は、一見はロマン主義的なメルヘンの装いを持つが、より深層においては元素霊に関する秘教的な知識を伝える書として読むことができる。クロウリーが『魔術―理論と実践』でこの作品を「元素霊の解説として貴重」と評価したように、物語は水の精霊の本質的な性質を巧みに描き出している。
    ウンディーネという存在は、パラケルススによって体系化された四大元素の理論における水の精(エレメンタル)を具現化したものだ。注目すべきは、物語が単にその外形的な特徴を描くにとどまらず、元素霊と人間存在の本質的な関係性を探究していることだ。ウンディーネが「魂を持たない」存在として描かれる設定は、元素霊の根本的な性質――すなわち、純粋な元素的存在でありながら、人間的な意識を希求する存在であることを示している。
    物語における叔父クーレボルンの存在は、より深い意味を持つ。彼は単なる敵対者ではなく、元素界の根源的な力を体現する存在として機能する。人間世界に対する彼の介入は、自然の力が人間的な秩序を超越していることの表現であると同時に、人間存在が忘却している元素的な次元との関係を喚起する働きを持つ。
    ウンディーネが人間の騎士との結婚によって魂を獲得するという設定は、魔術的な意味を持つ。それは単なるロマンスの筋書きではなく、元素霊と人間存在の結合という秘教的なモチーフの表現として理解できる。この結合は、物質的次元と精神的次元の統合、あるいは自然の力と人間的意識の融合という錬金術的な主題を内包している。
    水辺という空間は、物語において単なる背景以上の意味を持つ。それは物質界と精神界、可視界と不可視界が交わる場として機能する。特に泉や井戸は、元素的な力が人間界に顕現する「門」としての性質を持つ。これは多くの魔術的伝統において、水が異界への通路として理解されてきたことと呼応している。
    魂の獲得と喪失というテーマも、秘教的な文脈で読み解くことができる。ウンディーネが騎士との愛によって魂を得る過程は、元素的な存在が意識を獲得していく神秘的な変容のプロセスを示している。しかし同時に、その魂が完全な「人間化」をもたらすわけではないという設定は重要だ。ウンディーネは変容後も元素霊としての本質を保持し続ける。これは自然の力と人間的意識の関係についての深い洞察を含んでいる。
    結末において、ウンディーネの涙が泉となって騎士の墓を覆うという描写は、元素的な力と人間存在の究極的な関係性を示唆している。それは完全な分離でも完全な融合でもない、より複雑な結合の形を示している。この結末は、人間存在が自然の力と取り結ぶ関係の本質的な様態を象徴的に表現しているのだ。
    このように『水妖記』は、メルヘンという形式を通して、元素霊に関する深い秘教的知識を伝える書として読むことができる。それは19世紀ロマン主義の自然観を反映すると同時に、より古い魔術的・錬金術的な伝統の知識を内包している。クロウリーがこの作品を魔術書として評価したのも、まさにこのような重層的な意味の存在を認めてのことだろう。物語は、人間存在と元素的な力の関係性について、芸術的な形式を通して本質的な真理を伝えているのである。

  • 水の妖精ウンディーネの話。騎士に見初められたウンディーネが恋に落ちて魂を得るも、騎士を慕うベルタルダとの三角関係により水に還り、騎士の裏切り(ベルタルダとの結婚)により騎士を殺すといったあらすじ。騎士がクズ。

  • 面白くもあり悲しさもあった。

  • <水妖の者の悲しき宿命☆>


     湖畔をさまよえる騎士フルトブラントは、とんでもないはねっ返りではあるが不思議な魅力を持つ美少女ウンディーネとめぐり逢う。騎士に連れられ街に出たウンディーネは、すっかり淑やかな妻に変わる。ただし、末路は悲劇。

     ネタバレですが、
     ウンディーネはいわゆる人間ではなく、人との婚姻によって魂を得る、水妖の者でした☆ そして、愛が消えたときは男の命を奪わなければならない、哀しき宿命だったのです☆

     率直な感想を書くと、魂を得る前の、悪ふざけしまくる気まぐれ精霊少女ウンディーネのほうが面白かったなぁ★ 騎士を愛してからの彼女は、健気さあまって痛々しい。
     フルトブラントは人の話を全然聞いていないね。愛を捧げられるにふさわしからぬ者です!
     しかし、このクズ男を責めている暇はありません。これぞ私たち人間です。俗物大爆発です。精霊の乙女が真心を捧げられるような人間の男が何人いるのか。
     人は、自分らの傲慢さを自覚するために文学を必要とするのです★

     それでもウンディーネが、裏切られる苦しみのなかにあっても魂があることが幸せと言い切る場面が、奇妙に胸に迫ります。どんな目にあっても想いを貫く者の、哀しい美しさ。途中経過がどうであれ(?)胸うたれる、愛と死と涙の物語です☆

     夢のある物語は、俗世を生き抜く大人にこそ必要です……☆
     先日、シャミッソー著『影をなくした男ーペーター・シュレミールの不思議な物語』に出会い、ドイツのメルヘン文学に強く惹きつけられた私。
    『影をなくした男』をいたくお気に召して、独断で(つまり勝手に)出版に持ちこんだのが、友人フーケーだったそうです。そんな経緯を知るにつけ、フーケー氏本人の作品も気にかかっていました。
     かくして芋づる式に読書した、フリードリヒ・フーケー著『水妖記―ウンディーネ』(1811)も、とても素敵でした☆(私の文章はふざけた調子ですが、作品は大変麗しいイメージです☆)

  • 久しぶりに小説を読んだ。
    最初は自由気ままで感情の波が烈しいウンディーネに振り回されている気分になったが、時々垣間見える優しさ、愛らしさに次第に惹かれていった。
    どんどんウンディーネに感情移入していった結果、後半は涙無しには読めなかった。
    人に愛されて、人を愛することを知ったウンディーネは、どの登場人物よりもたくましく、優しくて、愛情深く成長する。
    そのことが結果的に自分を苦しめる原因になってしまうのだけど、その儚さがより一層ウンディーネの美しさを際立てている

  • 再読。短編なのに展開が多くて(速くて)とにかく波乱万丈。水の精と人間の異類婚姻譚でもあるし、赤ん坊の取り違え譚でもあるし、おじいさんとおばあさんが子供を授かって・・・という昔話風のスタートから、三角関係のドロドロ話にもつれこみ、最終的には人魚姫的悲劇を迎える。なんかもう、盛り沢山。

    最初はいかにも妖精風の小悪魔っぷり発揮していたウンディーネが、結婚後は天使のようになるのと対照的に、その夫となる騎士フルトブラントと、恋敵にして友人のベルタルダは、状況が変わるたびにころころと言動を変えるので結構酷い。ベルタルダに関してはまあもともと性格悪いのね、って感じもするけど、二人の女の間で行ったり来たりフラフラしっぱなしの騎士は男として最悪。

    童話の人魚姫は王子を殺さなければ自分が救われないけれど、ウンディーネもまた、自分を裏切った夫は殺さなくてはならない。ウンディーネの心情的には悲痛だけれど、客観的にはフルトブラントの自業自得。

    とりあえずいろんな民話や童話のエッセンスがいっぱいに詰まっていて面白い。

  • 人間の情の移り変わりが特に色濃く描かれているほか、表題にもある「水妖」ウンディーネの変遷様々が目に新しかった。

  • 人間のくそさ

  • ドイツ人作家、フリードリヒ・フーケが1811年に発表した幻想譚です。いくつかのオペラやバレエの原作になってます。水の精霊ウンディーネと騎士フルトブラントの恋とその結末を描く、いわゆる異類婚姻譚になってます。岬で過ごしてた頃の天真爛漫なウンディーネがとても可愛らしいです。ラストの悲しい終わり方も余韻があって良いです。物語の後半は、ウンディーネの純真や清らかさを強調するためなのか、騎士フルトブラントや恋敵ベルタルダがかなり悪役に描かれているのがちょっと気になるところです。ライトノベルっぽい感じがする。

  •  一体こんな男のどこが良いのだと思ってしまうが、ウンディーネにとっては、魂を与え、喜びや悲しみに涙することを、そして人として人を愛することを教えてくれたフルトブラントを誰よりも愛さずにはいられなかったのかもしれない。人間が簡単に心変わりするものであるのと対照的に精霊がどこまでも一途であるのは、人間がいかに残酷で自分勝手な側面を持っているかという皮肉にも聞こえるが、精霊の愛を受け止められる程の力を持たない人間の弱さ、それは現実においても僕達につきまとう見覚えのある“弱さ”を感じた。

  • (市×/県◎)

  • 精霊ウンディーネと騎士フルトブラントとの悲恋を描いた作品です。生まれ育つ環境が異なる2人が一緒に過ごしてゆくことはいくら愛があったとしても難しいのだなと感じました。

    九州大学
    ニックネーム:来見田仁志

  • ウンディーネが魂を得て精霊から人へと行動の変化が面白い話。
    人間が悪人ばかりで胸が痛みます。

  • 古典特有と言うべきか、長い説明と婉曲な言い回しに最初は読むのに骨が折れたが、次第にウンディーネに愛着がわいた。
    特にお気に入りなのが、ウンディーネの変わり様だ。
    魂を持つ前の彼女は勝手気ままで、ある種、不可解とも呼べる行動を次々と起こしていたが、騎士と結婚した彼女には心が宿り、何としとやかで思いやりに溢れる女性になったことか。

    それにしてもこの本では騎士の心がウンディーネから他の女に移る経過を端折っていて仰天した。
    けれども、ひたすら従順で美しいウンディーネは涙を誘ったし、比べて不実ですぐに心惑わせる騎士、フルトブラントには苛立ちが募った。
    とにかく、1800年代の読み物をこうして自分が読んで、同じように心を痛めたりしながら共感しているのが不思議。

  • 人間に恋した精霊の話。
    序盤の天真爛漫の姿が(ちょいウザイですが)好きだったので、後半の不遇が可哀想でならないです。
    切ない童話。

  • 情景描写が丁寧なので、初めはゆっくり穏やかに読めた。古典なのに読みやすい。人の心の動きがよく描かれていた。優しいウンディーネが虐げられ罵られるのは読んでいて辛く切なかった。フルトブラントに苛立ちもしたが、こういうこともあるよなあとどこかで共感してしまった。

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