流刑の神々・精霊物語 (岩波文庫 赤 418-6)

制作 : 小澤 俊夫 
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003241868

感想・レビュー・書評

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  • キリスト教の布教とともに追いやられてしまったギリシアの神々の末路を描いた『流刑の神々』と他1編が収録されたエッセー。哀愁漂うこの2話にはたっぷり心揺らされたが、それも己の遺伝子に組み込まれた古きよき魂とも言うべき信仰が根幹なので、それを言葉にするのはなかなか難しい。

  • 白島への霊魂渡しはいつもこうやっておこなわれる。あるとき船頭はこんな特別な場面に出くわしたことがある。あの目に見えない検閲官が名簿を読みあげている最中に突然読むことをやめて叫んだ、「ピッター・ヤンゼンはいったいどこだ?これはピッター・ヤンゼンではないじゃないか。」すると上品な声がしくしく泣くような調子で答えた、「わたしゃピッター・ヤンゼンのミーケだけどね、主人の名前で登録しておいただよ。」(144,145頁)
    ミーケはネコ?

  •  現代の「流刑の神々」・「精霊」はどこにいるのか、と思いながら読みました。社会・文化・政治・経済等を乱される・脅かされるのを防ぐために、古来からその時代に合わない・合わせない、適合しない・されない人々に異端者の烙印を押しているのだと思います。文学ではこういった人々に救済の光を当てています。時間の洗礼を受けても残る文学作品は、いつの時代の人々に読まれても共感できる普遍性があり、それを押し潰す力を逆にくるみこむ耐久性を持っていると思います。
     中心ではなく周辺にいる人々が共感できる普遍性と、周辺にいる人々を圧迫する力をくるみこむ耐久性を持つ文学作品。これらが文学は女性と子どもが読むモノとされる一つの理由の様な気がします。両者は共に社会システムにあまり参加できないと思います。作品中に出てきた「こびと」という精霊が、人間たちに嫌な事をされたら逃げていく事、普段は身を隠して生活している事、嫌な事をされない限り、人間達に幸福をもたらす事は、「こびと」を女性・子どもに置き換えてもある程度適用できそうだと思いました。

  • 本編そのものより、解説にある、柳田国男がこれに接点があったという事実が興味深いと思った。

    キリスト教の非寛容で抹殺された古代の神々の話、って
    それなりに数もあるし、凡人たるワタクシはなんとなく夢物語と読んじゃったんですが、これを彼岸の火事とせずに、
    (当時の)日本の現状に引き比べ、自説に敷衍して取り込むあたり、巨人の巨人たるところ。

    つーか、そもそも柳田と我が身を比べるか、という。

  • 「精霊物語」:ゲルマンの異教の神々についてのハイネによるエッセイ。グリムのドイツ伝説集が主たる典拠。パラケルススも参照してるもよう。火の精霊は悪魔(トイフェル)だとのこと。
    「流刑の神々」:キリスト教の布教とともに、魔神(デーモン)へと変質させられたギリシャ・ローマの神々について。
     中身はタイトルはとは逆の順(「精霊物語」「流刑の神々」)なので注意。うっかり間違えそうになった……。

  • キリスト教に追放された神々のその後を描いているエッセー。信仰について考えさせられる作品でした。

  • キリスト教の勢力下で、異教の神として断罪され追放された神々の行く末。かつてオリュンポスに君臨した、全知全能のユピテル神の衰えぶりはひどく哀しかったが人間味に溢れていた。アニミズムの神とは然るに、人間とは違う在り方であって、人を導いたり助けたりするものではない。そして日本の八百万の神々同様、そうあるべきなのだと思う。

  • 初期キリスト教の美術を勉強していたので、その頃に資料として読んだものですが、とても面白かったのでここに。

    ハイネは浪漫派の詩人というイメージが強いかもしれませんが、彼の生きた時代は、まさしくヨーロッパの激動の政治的動乱の時代でした。そこに生きた彼だからこその批判精神あふれたこうした作品が生まれたかもしれないですし、ユダヤ人として生まれた彼がやがてはプロテスタントに改宗するといった精神的な葛藤などが影響しているかもしれません。
    ヨーロッパをキリスト教がものすごい勢いで席巻していった時、そこにもともとあった古代信仰、民間信仰がどのような変容を強いられたか。
    『その後』の古代ゲルマンやギリシア、ローマの神々について知りたい方にとっては、この本はかなり興味深く、また、面白い本だと思います。

    そして、さすがにハイネの手によるものらしく文体もたいへん美しいです。


  • 素晴らしいです。
    この時代にこの内容を臆せずに発表した彼は本当にすごい。

    私の卒論にも参考文献として使用しました。

  • 教養として。

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