- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003242261
作品紹介・あらすじ
ブリギッタは、醜く生まれ、心が頑なになってしまったが…。愛のすれ違いと交わりを描いて胸打つ「ブリギッタ」。少年少女にそそがれる大人の愛情と、それによって育まれる心を描く「荒野の村」「森の泉」。シュティフター(一八〇五‐一八六八)の愛をめぐる物語三篇。
感想・レビュー・書評
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シュティフターは私にとっては、読むことが快楽というよりも、その小説が存在することを思い浮かべることが快楽になるような作家なのかもしれない。ずっと面白いと思って読んでいるわけではないのだけれど、ふとした時に小説内の文章の美しさや細やかな視線に目を奪われてしまう。
「荒野の村」を読みながら、ホーソーンの「牧師の黒のベール」をなぜか思い出していた。目には見えないけれど人の内側から出てくる得体のしれないものについて書いてあると感じられた。
「ブリギッタ」はシュティフター自身の別の長編『晩夏』を思わせる雰囲気がある。平凡な人物もシュティフターの小説の中では叙事詩の英雄のようである。
解説によるとシュティフターはかなり不器用な人生を送ったようだ。なんとなくシンパシーを感じてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
訳者 高安国世によるあとがきの冒頭
「荒々しい現実の中で不意にシュティフターの物語に出あうと、はじめはそのゆるやかなテンポや人のよさや詳しさにいらいらしてくる」
この文がとてもよく表してくれているように思う。
静かで、心が生きている人。
そういう世界の作品は
入り込むのにかえって時間がかかってしまう。 -
小品三編。「ブリギッタ」は「晩夏」の圧縮版というか、設定や展開がよく似ていた。いずれも、大自然の中で純朴な心を培った人々の美しさを描いている。もっとシュティフター和訳出してくれ~!