ヴェニスに死す (岩波文庫)

制作 : Thomas Mann  実吉 捷郎 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 668
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243411

作品紹介・あらすじ

旅先のヴェニスで出会った、ギリシャ美を象徴するような端麗無比な姿の美少年。その少年に心奪われた初老の作家アッシェンバッハは、美に知性を眩惑され、遂には死へと突き進んでゆく。神話と比喩に満ちた悪夢のような世界を冷徹な筆致で構築し、永遠と神泌の存在さえ垣間見させるマンの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 深過ぎる恋に落ちたもの者は破滅に向う、ということを悟らされる物語があると聞いて、手にとって読んでみた。
    初老の男が旅先で、美少年に恋をする。厳格だった男は、少年に直面すると自分の老いた肉体がたまらなくいやになり、ついつい化粧までするようになるほど、乙女っぷりを発揮。美しさに憧れを抱き、見ているだけしかできず、エスカレートしてストーカー化してしまう。
    恋と情熱が、滑稽で悲惨なものになってしまう物語。
    1913年にドイツで書かれ、1960年に訳されたものなので、私の世代では聞き慣れない言葉、堅苦しい漢字が多く登場する。こんな日本語があるのかと、ひとつひとつ辞書で調べて読み進めていくのも勉強になった。
    狂気なほど究極で、だけど至福の恋の旅に連れていかれる。苦しくて辛い恋をしているひとと、神秘的な恋に陶酔したいひとにオススメしたい本。

  • ヴェニスで出会った美少年に恋し、破滅する老いた作家の物語。文章の美しさに酔わされる。
    彼の美への憧れは古代ギリシャ的だ。しかし、そういう感情はやはり普遍的なんだなと思う。猛烈に好きになった人をただ遠くから見つめるときの気持ち。
    理想を追い求めるプラトン的な愛と、そのさなかにある人間の生々しい感情が描かれているという気がする。

  • 近くのミニシアターがちょうどヴィスコンティの映画『ベニスに死す』をやっているので、観に行きたいと思っている。その予習として読んだ。

    端的に言うと、美を求める物語。老人が少年に恋する話というよりは、芸術家が美を愛する話といえるのではないだろうか。
    アッシェンバッハがタッジオに話しかけられなかった場面が好き。タッジオは結局一度も口を聞かないんだもんな。アッシェンバッハとは話す言葉だって違うんだ。そこがいい。

    岩波文庫版の解説ではしきりに翻訳の素晴らしさが褒め称えられていたが、私はこの訳にはそこまですんなり馴染めなかった。でも表題『ヴェニスに死す』は名訳。Der Tod in Venedig.

    しかし、これを映画化しようと考えたのがそもそも凄い。一体全体誰がタッジオ役をやればいいのかって話。そう考えると、ビョルン・アンドレセンという少年の存在は奇跡的に思える。映画館に観に行くのが楽しみ。

    以下は余談。
    トーマス・マンの精緻な描写のそこここにギリシャの香りを感じた。『ギリシャ彫刻のような』美少年と言い、ソクラテスとファイドロスの対話のモチーフと言い。つい最近大学の授業で「ドイツ人がギリシャ文化に対して抱く憧憬」を扱ったせいだろうか。文化的な背景を考えてみるのも面白そう。

  • 映画を観てから読みました。
    ミューズの庇護を得ていたかのような文豪が、
    ちょっとした息抜きのつもりで旅に出て、
    死神に魅入られてしまう……。
    でも、アガペーに殉じた彼はきっと幸福だったのだろう。

  • ビョルンの全てを知りたくて、読んだ…

    映画『ベニスに死す』の内容をより深く楽しめたよ。

    …ってこれが原作だから当たり前だけど。

  • 随分前に読んだ。耽美系の話はよくわからんな、とその当時思った。

  • 正直に言うと前半はけっこう退屈に感じた。少しは面白いのだけれどやはり退屈。しかし、それをふまえて後半へ至ると一気に面白くなる。三島的感性を理解するのにいいかもしれない。又、そういう設定であることがこの作品の主題をクリアにすることに貢献している。異性間の恋愛では見えにくくなる部分をそういう視点で描くことで純化するような作用。女性やそっち系の人ならもっと共感できるのかもここでの不感は文化的な習慣からなのでどうしようもない(笑)わかるにはわかるんだけど。日本の私小説の原点みたいな感じを受けた。読み通したら面白い作品だった。

  • どういう魔がさしたのか、中1のとき、この作品(角川文庫版)で夏休みの読書感想文を書いてしまい、
    国語教諭が私にことわりなく優秀作か何かに選んだので、
    全校生徒の前で「少年愛」だか「少年への愛」だかという言葉を発音するハメになり、
    幽体離脱寸前まで追い詰められた、という私的黒歴史に残る1冊。
    次点の生徒の選んだ作品が『走れメロス』だったと聞き、
    なぜそちらにしてくれなかったのかと国語教諭を呪った。

    小説自体はとても好きなので、ときどき読み返します。

  • 旅先で偶然出会った美少年のストーカーになる中年男の話と考えるか、完璧な美を追い求める芸術家の話と考えるかで、感想は全く異なるだろうなあ。
    若さや破滅に対する憧れを美少年に重ねて表現しているのだろう。
    タイトルだけしか知らず読んでみたので、こんな話だったのかと驚いた。

  • やはり映画化されたヴィスコンティ監督の傑作の各場面を頭に浮かべながら読んでしまう。ちなみに主人公は映画では作曲家だが、原作では小説家。
    直訳に近いのか判明できないが、話が突然物語から観念的なものに暴走するので読み辛さも感じた。

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