車輪の下 (岩波文庫 赤 435-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243527

作品紹介・あらすじ

誇りと喜びにあふれて首都の神学校に入学したハンスがそこで見出したものは、詰めこみ主義の教育と規則ずくめの寄宿舎生活であり、多感で反抗的な友人の放校であった。疲れ果てて父の家に戻った彼は機械工として再び人生を始めようとするが…。重い「車輪の下」にあえなく傷つく少年の魂を描くヘッセ(1877‐1962)の永遠の青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 親のエゴを押し付けられた子供が、落ちていく姿を見るのが辛かった、大好きな作品
    自然の描写や主人公の繊細な感情表現が細かく読みやすかった。

  •  3回読んだ

  • 自然や風景の描写や心情表現がとても美しくて、魅力的だった。車輪はギリシア神話(?)の、運命を象徴するもののことで、心身ともに健康で美しい思い出に溢れた時代と、知識。おとなからの押し付けでからだも心も壊していく神学校時代のことを車輪の下にしているのかなと思ったが違った。
    何度か読み返したくなる本。

  • 少年時代に読むもの

  • 海外の有名な作品を読んでみよう!という安易な動機で選んだ作品です。今でも学生に推奨されている古典文学な気がしますが、今の若者とは価値観や感性が違い過ぎて面白さが理解されないのでは、と思いました。いらぬ心配ですが。
    若い時代って濃い分生きるのしんどいと感じることが多かったな。多感だったな。とか思いました。

  • 小学4年頃のお気に入り

  • 主人公の感情変化や自然の描写が印象的。
    最後まで展開が読めず、楽しめた。

  • 風景の描写がとても綺麗。森の中の様子がイメージしやすかった。ヘッセの自伝的小説。ハンスとハイルナーそれぞれが自伝。教育ママなんかは耳が痛くなるような内容もあったんじゃないかと。繊細な心理描写もとにかくどこをとっても綺麗だった。

  • ノルウェイの森にてワタナベが緑の家の書店で見つけて読んでいたので自分も読んでみることにした。
    内容はヘッセの自伝的な面持ちがあり、作者の少年時代の苦悩がしみじみと伝わってくる感じ。
    勉学の詰め込みはいかがなものか、勉強を人と競わせ評価するのは正しいことなのか、規則に沿ったような模範的な人間を育てるだけが正解のレールなのか、といったようなことをハンスがノイローゼになったり、ハイルナーの天性というか個性が尊重されずに除け者扱いされていたことから、暗黙の了解的になっている世の中のルールについていろいろ考えさせられた。
    人の精神が壊れていくのは意外と積もり積もっていく中で自然に生じてしまうことを感じたし、どんな人の中にもそういった影なる点が存在しているから恐ろしいなと思う。

  • 中学・高校時代の読書感想の対象本だったのを読み直してみました。

    古いせいか、訳はちょっと違和感ありますが。内容は色んな意味で良いです。巻末の解説にもありますが、暗記型の押しつけ教育を「大人の無理解・利己主義」と否定するもの。これがこの本の最大のテーマです。これを読書感想の対象本に選んだ先生のセンスもGoodでした。私立の進学校でしたけど(笑)

    それにしても、最近は暗記型押しつけ教育の復権って感じがしますが、いかがでしょ? 日経なんか見てると、「国際的に日本の若者の点数が低下した」「ゆとり教育のせいだ」と煽ってる印象がしますが?

    ま、テーマをちょっと横に置いて。原文を読んだわけではないのですが、訳文でもヘルマンヘッセのセンスは良いと感じさせられました。

  • 少年の青春時代の心の悩み、移り変わりが書かれた作品。それにしてもなんと可愛そうな。主人公はあまりにもまじめで、純粋だったためにこんな悲劇的なことになってしまったのか。周りの大人たちはなぜ何もしてやれなかったのか。悲しい悲しい結末です。

  • 受験戦争に勝ち抜いて神学校へ入学した主人公の少年が、アウトローな友人の感化でどんどん孤立、落ちこぼれ、鬱になって退学させられ故郷へ帰るもニート生活、やっと就職したのは肉体労働で、仲間たちと飲みに行って深酒するにつれて自分の人生に対して悲観的になり、うっかり自殺(事故死?)してしまうという、なんというか、普遍的な名作というのは、現代に置き換えてもありそうな要素を含んでるんだなあというお手本のようなお話。ラスト以外はほぼヘッセの自伝的な感じらしいです。あまり救いのない話ですが、神学校時代の描写は、さながら萩尾望都の世界で楽しかった(笑)。

  • ヘルマンヘッセは初です。車輪が社会でそれに押し潰されるという意味か。

  •  セリフシーンは少ないが、風景描写や感情表現が緻密で、主人公ハンス・ギーベンラートの心情や風景が想像しやすかったです。ただ、近代特有の言葉も使われるため、理解を深めるのであれば調べる必要もありますが、普通に読むだけなら問題になりませんでした。
     ハンスへの車輪の轍をなぞるように仕向けられた教育への批判、ハンスに足りなかったもの、結末でのハンスの思いなど、現代にも通ずるような問題提起や考察の余地もあるため、読んだ後も記憶に残りやすい作品でした。
     ただ、作者の人生を擬えた作品のためか、個人的には物語の起伏が少なく、平坦に進む印象があったため、星4とさせていただきました。読んで損はない作品だと思いますので是非お試しください。

  • 教育とは敷かれたレールの上を歩かせるだけのものなのか。一人の貴重な人間の将来が奪われてしまったことに悲しみを覚えた。
    最後の酔っぱらった中での溺死は事故なのか、故意なのか描かれていなかったが私は自ら川に入ったのだと思う。
    救われない少年の話

  • 最初はよくわからず言われるがまま勉強するハンスの様子が淡々と語られるが、入学後関わる友人の登場から一気に面白くなった
    共感できる部分もあって、最後は誰にでもありえそうな悲しい最後
    期待に潰される鬱小説

  • 高校生の頃、読書感想文か何かのために読まされた作品を再読。
    当時「救いがない」という主旨の感想文を書いたのだが、いま読んでも評価は変わらない。
    優秀な主人公が詰め込み教育に辟易し、ドロップアウトして機械工の仕事に就く。
    敗北感からヤケになり、酒を呑んで酔っ払って川に落ちて死ぬ。
    ただのバカじゃん。
    というか、「教育の在り方として、これで良いのか?」という問題提起を生徒に読ませてどうする。

  • 高校入学前、春休みの課題図書だったので読んだ
    この本の救いのない展開と、入学後に始まった詰め込み学習で、失望しながら高三の秋まで遊んで過ごした
    主人公に自分を重ねずにはいられなかった
    当時の高校教師の意図が未だにわからない
    今読めば違った感想が持てるのかもしれないけど、ハンスがどんどん落ちぶれていく様がトラウマになってるのでもう読めないかも

  • 教育とは何なのかを考えさせられる
    良いとされる人生のレールに子供を乗せる親や教師、そして自分の周りの狭い世界の中では成功しそのレールに乗ることを望んでいる子供は自分の運命がわかっていない
    何も考えずにレールを進む子供もいれば、多感な時期を過ごす中でそのレールから外れてしまう子供もいる
    そして死んでしまったハンス。その死因は語られない。
    そのことがむしろ、読み終わった後に、彼の周囲の彼への期待や強制を自分と照らし合わせて内省に向かわせる。


    以下、あるサイトからのコピペ

    +++

    主人公ハンスは、他の子供たちと同様に自然や動物を愛する素朴な少年。

    唯一違うのは、彼は学問に優れた天才であること。

    ハンスは父親や学校の先生など周囲の大きな期待を背負い、一心不乱に受験勉強をする。

    そして見事、エリート神学校への合格を果たすのだ。



    しかし、神学校での規則や価値観に縛られた日々は、ハンスの神経を弱らせる。

    彼は神学校を中退して、「脱落者」という不名誉な称号と共に帰省。

    かつてエリートだったハンスは、同郷の仲間たちよりも遅れて肉体労働の見習いとなる。

    それは肉体的にも精神的にも苦痛なことだった。

    物語のラストで、ハンスは死体となって川で見つかるのである。



    ハッピーエンドの小説が多い中、今作は主人公が死んで物語は終わりを告げる。

    死因は分からない。

    死ぬ直前に、ハンスは酩酊していたから、事故で川に落ちたのかもしれないし、もしかすると自殺したのかもしれない。

    とにかく主人公の少年が死んで物語は終る。



    「車輪の下」は救いのない小説と言われる。

    確かに、小説を読み終わった後、陰鬱な気分になるだろう。

    しかし、この救いのない作品は、現代人を救ってくれる一冊でもある。



    僕達は成功体験からだけ学ぼうとしている。

    でも、成功者から学んだとしても、誰もが彼らと同じように成功できるとは限らない。

    一方、僕達は失敗体験からも学ぶことができる。

    誰もが先人達の失敗を教訓に、人生を正しい方向へと導くことができるのだ。



    100年以上前の作品ながらも、「車輪の下」は現代人の必読書である。

    だって、誰もがハンスになる可能性があるのだから。

    良い学校、良い仕事に就くことだけが、幸せなのだろうか。

    周囲の視線や期待、価値観に捉われすぎて、自分らしさを失ってはいないだろうか。



    僕達はハンスであり、だからこそハンスのような結末を迎えるのを避けなくてはいけない。

  •  読書力読書、3冊目。

     学生のころ、どの先生だったか忘れましたが、この本の内容を「受験の話」だとおっしゃっていました。しかしとくに興味を惹かれることなく数十年経過、人生半ばまできてようやく読みました。

     シュワルツワルト地方の小さな町で唯一の秀才、ハンス・ギイベンラアトは、ほかの〈天分にめぐまれた少年たち〉と同様、州試験を通って神学校へ行き国のために働くというエリートコースを歩むべく、父親や町の人びとの期待を背負って州試験を受け、無事合格、マウルブロン神学校に入学します。友人もでき、勉学に励みますが、少年から青年へと成長するとともに、心身の調子を崩してゆきます。

     主人公ハンスの苦悩は受験のときから続いているので、たしかに受験の話と言えなくもないのですが、物語全体を通して考えると、受験は通過点のひとつです。読後はもういろいろな思いが渦巻いて、この物語のテーマの深さに言葉を失い、しばらく動けませんでした。もし学生時代に読んでいたら、たぶんここまで複雑な気持ちにはならなかったと思います。

     なんと重い車輪なのか。周囲からのプレッシャー、プライド、そして本心との闘い。ハイルナアとの友情、エンマとの恋、突如おそわれる不安、おそれ、頭痛。がんじがらめになった心の唯一の解放は、一人で流す涙でした。ただ一人、靴屋のフライク親方だけは、真実を見抜いていたようですが。

     これは著者の自伝的小説です。本書の訳者解説が書かれたとき、ヘッセは80歳、ご存命だったそうです。

     私が本書を買ったのは数十年前でした。名作だからとりあえず買っておいたのでしょうね。なのでカバーに書いてある定価は200円です。訳文にもやはり古臭さを感じるので、今ではさすがに新訳になっているかしらと、書店で現在(2021年5月)売っているものを見てみたら、なんと文字が大きくなってその分本の厚みが増しているだけで、訳文はまったく同じでした。これから買って読むなら、光文社古典新訳文庫の『車輪の下で』のほうが読みやすいかもしれません。が、私としては、これまで多くの人たちが読んできた文章で本作を味わえたことをうれしく思っています。

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著者プロフィール

ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。南ドイツの風物のなかで、穏やかな人間の生き方を描いた作品が多い。また、風景や蝶々などの水彩画もよくしたため、自身の絵を添えた詩文集も刊行している。1946年に『ガラス玉演戯』などの作品が評価され、ノーベル文学賞を受賞した。

「2022年 『無伴奏男声合唱組曲 蒼穹の星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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