カフカ寓話集 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1998年1月16日発売)
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本 ・本 (244ページ) / ISBN・EAN: 9784003243848

感想・レビュー・書評

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  • <翻訳文学試食会>で『皇帝の使者』がテーマになったので。
    https://creators.spotify.com/pod/show/honyaku-shishoku/episodes/102-e2r39jp
    カフカの短編集で、5ページ程度のものが多く(数十ページ程度のものが3篇ほど)隙間時間にちょこちょこ読めます。カフカだし寓話なので理解不能ではあるんですが(^_^;)、なかなか面白かったです。

    『皇帝の使者』
    死の床の皇帝が、一介の市民で哀れな臣民で皇帝のシミのようなきみのところに使者を送ったそうではないか。だがいくら待ったって無駄だよ。使者は長い長い廊下、果てしのない怪談、広い広い中庭を抜けなければならないのだから。そしてそこを抜けることは永遠にないのだから。きみはなすすべもなく窓辺で使者の到来を夢に見るのだ。

    『ジャッカルとアラビア人』
    ヨーロッパの人間が野宿したらジャッカルがやってきて「アラビア人は酷いやつです!やっつけてください」と食いついてきて離れようとしない。

    『ある学会報告』
    学会の諸先生方!如何様にしてわたしがに猿から人間になったのかの報告をいたしましょう。自分の住処で生け捕られたわたしは、檻の中でわたしは、自由を選ぶことはできないののだとしたら生きるために人間の猿真似をすることしかないと思ったのでございます。

    『ロビンソン・クルーソー』
    ロビンソン・クルーソーは高い山で助けになる船を探してばっかりではなくて、自分の島を知って暮らそうとしたから結局助かったのだ。

    『サンチョ・パンサをめぐる真実』
    サンチョ・パンサだって悪党や騎士道小説を読んでいたんだ。でもドン・キホーテのように「悪魔」に身を任せなかったので、彼のお供で満足の人生を進んだのだ。

    『アレキサンドロス大王』
    アレキサンドロス大王が、有り余る才能ややる気があったって、途中で留まったかもしれない。(そんなように、大勢のアレキサンドロス王未満がいたんだろう)

    『新しい弁護士』
    アレキサンドロス大王の愛馬は引退して弁護士になった。
    …力の仕事を引退したらのんびり過ごすのも賢いよねえってこと?

    『ポセイドン』
    ポセイドンは三叉の鉾を持って海に立ちはだかっているイメージだけど、本当は海の底の事務室で海の管理をせざるを得ないんだよ。この世の終わりが来たなら海に出られるのに。でももう海には飽きたよ。

    『アブラハム』
    この世は単調だと思い込んでいるけれど、本当は多彩なこの世界に馴染まなかったことによる嘆きに過ぎない。

    『メシアの到来』
    メシアがやってくる時。
     進行に対する徹底した個人主義が実現した時。
     メシアを必要としなくなったいわばこの世の今際の際。

    『こうのとり』
    変な卵を孵してみたらコウノトリみたいなものが生まれたので、育ててやって恩返しをしてもらおうと目論んだ。そのためには餌を与えたり、飛び方を教えたりしなくちゃいけない。

    『貂(てん)』
    ユダヤ教会には大きな獣が住み着いている。人々は恐れたり気にしなくなったり。なぜ恐れるのだろう。ずっとそこにいるのに。予感がするのだろうか。

    『使者』
    王はおらず、王の使者ばかりでこの世は混乱した。しかし辞めることもできない。

    『小さな寓話』
    鼠「この世は縮んでいるぜ」
    猫「そうかい、パクリ」

    『獣』
    この獣は私を襲いたいのだろうか。誘うようでもあるし気がないよでもあるし。

    『だだっ子』
    だだっ子が古い小屋に居着いている。なぜ外へ出ようとしない。

    『柩』
    柩を作ったら、中から音がする。飛び出てこないように上に乗っかったけど、何かが飛び出てきた。

    『掟の問題』
    自分たちが辛抱している掟を管理してるのは貴族で、そこから奪いとりたがっているのがこの世。

    『一枚の古文書』
    王宮の中の人々が敵を呼び寄せたのに、王宮の塀から見てため息を付くだけ。矢面に立ち敵をなんとかしなければいけないのは我々市民だ。

    『走り過ぎる者たち』
    一人の男が走り、すぐ後にもう一人が走っていて、何をしているのかとも思うが、でも自分たちは彼らを見過ごして安心している。

    『よくある事故』
    AとBのすれ違いコント?相手に会うために、会っても急いで通り過ぎるとか??

    『十一人の息子』
    良いところもあるがいけ好かない「十一人の息子」に、人類のタイプを例えてる?

    『兄弟殺し』
    一人の男が、もう一人の男を待ち伏せて刺殺したって話なんだけど…。だからなんなんだ(-_-;)

    『中庭の門』
    兄妹で散歩していたら、どこかの家の中庭の門を叩いたってことで捕まってしまった。叩いてないといっても聞いちゃくれない。ここかから出られるんだろうか。

    『隣人』
    同じ仕事をしている隣人が気になる、自分のことは筒抜けな気がする。

    『巣穴』
    地上の敵から逃げるために巣穴を掘った。でも地下にも敵がいるらしい。最近は別のヤツが穴を掘っているような音もする。
    この短編集の中では比較的長いんだけど、巣穴の構造とか建築とか敵のこととか、ライバルっぽいやつが出てきたみたいなこととか。

    『最初の悩み』
    曲芸師と興行主それぞれの悩みとか、居間までの当たり前が急に悩みになったとか。

    『ちいさな女』
    小さな女に憎まれてるんだけど!心当たりないんだけど!不愉快だけど気にする必要ないけどね。

    『断食芸人』
    頑なに断食を続ける芸人がいて、だんだん忘れられ、ついには死んだ。その後と生き生きとした獣を採用したら見物客が増えた。やっぱり生きてるものが見たいんだよね。

    『歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族』
    自分たち鼠は、歌姫ヨゼフィーネを守ってるんだ。でも彼女は自分こそ鼠一族の名誉だって思ってる。自分は選ばれた側だと思っても、時間が建てば過去の英雄になるだけ。
    チュウチュウ、チュウチュウという歌声鳴き声が入っていてなんか面白い。

  • 今日6月3日はカフカの命日ですね。
    カフカ寓話集の題名に成っていますが、他に短編集の題名の作品が有るのであえてこの題名にされたとの事でした。
    小品を中心に30話収録されています。
    カフカは妹さんの下宿に転がり込んで創作に明け暮れたそうですが、書いては捨てるの繰り返しで、しっかり物の妹さんがカフカの捨てたものを拾っては隠し持っていたそうです。そのお陰で後世の我々がカフカの作品に浸れるからありがたい事ですね。
    この本にカフカの絵が紹介されています。カフカは友人にも自分の作品を焼却するように依頼したそうですが、しっかり物の友人にも感謝ですね。
    カフカの作品が後世の作家さんにもかなりの影響を与えた事を知るよしも無く世を去ったことは残念ですが、カフカの作品に目を通す機会になれば幸いです。

    • 111108さん
      ひだまりトマトさん、こんばんは。

      6月3日がカフカの命日とは知りませんでした。昔カフカが大好きで『城』や『審判』などにハマってましたが、こ...
      ひだまりトマトさん、こんばんは。

      6月3日がカフカの命日とは知りませんでした。昔カフカが大好きで『城』や『審判』などにハマってましたが、このレビュー読んでまた再読したくなりました。
      ありがとうございます♪
      2022/06/03
  • 2024/2/1読了
    収載作品の中でも特に長い『巣穴』は、人間とも動物ともつかない主人公が、安全な巣穴を作っても、食料はまとめておこうか分散させようか、侵入者が来たらどうしようかetc. ウダウダ迷い続けているお話。常に何かしらの不安に晒されている現代人の心象を表わしているのか、妙に共感してしまった。

  • 1番最初の『皇帝の使者』がよかったので読み進めたが、途中離脱。
    『皇帝の使者』はすごくよかったが、他はどのお話も正直よくわからなかった。

  • 全体にシニカルさを感じる短編集。
    「走り過ぎる者たち」や「ある学会報告」にとても共感した。
    様々な解釈が可能なので読み返せば別の感想を抱く気がする。買って良かった。

  • 世界一好きな短編、「皇帝の使者」が収録されているという一点で迷わず購入。他のものもカフカらしさ満載で満足です。

  • フランツカフカの短編集。

    長編はちょっとまだ荷が重いのかいつも途中で断念してしまうのでこちらを読んでみたら無事読破。

    摩訶不思議なカフカワールドに浸れました。

    「巣穴」、「アレクサンドロス大王」、「断食芸人」が好み。

  • 「巣穴」の自意識の書き方は、
    実際に人がものを考えるときの感覚に、すごく近いと思った。

    最後のお話に、やたらとチュウチュウって書いてあるのに思わず微笑ましくなった。笑

  • 「断食芸人」と「歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族」、「最初の悩み」、そして未完のままに終わっている「巣穴」がよかった。

    「巣穴」の主人公は未知なる外敵に怯え、完璧に作り上げた彼の巣穴をめちゃくちゃに掘り返しはじめる。
    しかし読者には、静謐な巣穴をこの上なく愛するこの「私」が誰なのか、いったいどのような獣なのか、まるでわからない。
    取るに足らないことに思える妄想に振り回され、ひたすら穴を掘り続ける「私」に、つい自分を重ねてしまったりする。

  • カフカもともと意味不明なんだけど短い話でさらに了解困難な話が多い。オチもあったりなかったりない方が多いし教訓とか箴言とか言えなくもない話もあるようなないような。一言でいうと、謎。理解を超えているからだけれど、なんか読む甲斐がない。でも池内紀氏の解説はよかった。

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランツ・カフカの作品

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