短篇集 死神とのインタヴュー (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1987年2月16日発売)
3.69
  • (7)
  • (7)
  • (14)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 142
感想 : 7
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (388ページ) / ISBN・EAN: 9784003244814

みんなの感想まとめ

戦後の混乱と人間の内面を深く掘り下げた短篇集は、さまざまな文学的手法を駆使して幻想と現実の境界を曖昧にし、読者を引き込みます。物語は、SFや神話、コント、ドキュメンタリーなど多様なジャンルを横断し、戦...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第二次大戦後における過去の世界との断絶、精神的な分裂を、SFや幻想小説などさまざまな語り口で表した短篇集。


    「人間界についてのある生物の報告」の素朴なSFに始まり、神話や英雄譚の読み換え、コント、幻想怪奇、そしてハンブルク大空襲のルポルタージュ小説「滅亡」と、自在にジャンルを変えながらどれも戦争に翻弄される市井の人びとを描いた作品が収録され、一冊を通して現実と虚構の境界が失われた戦後の実感を伝えてくる。表題作「死神とのインタヴュー」や「クロンツ」にみえる暗いユーモアとサイコホラー的なモチーフは中井英夫や遠藤周作をも思わせ、ドイツと日本の戦後に共通する空気感が窺い知れるような気もする。
    特に印象深かったのは、オデュッセウスを帰還兵として捉え直すことで、神話の英雄が生々しい同時代の男として立ち現れてくる「カサンドラ」。月の捕虜という比喩から恋心を押し殺した青春時代が仄暗く浮かび上がる「アパッショナータ」。冥界から地上へ戻るオルフェウスの後ろをついて歩いたのは、実はペルセポネだったのだと嘯く「オルフェウスと…」。性別に基づいた役割意識などは保守的なのだが、だからこそ同じ苦しみを女ならばどう受け止めるのか、この状況において女であるがゆえに生まれてくる苦しみがあるとすればどのようなものか、ということには向き合おうとした痕跡が見られる。
    全体に簡素な語り口だが、それゆえに元々は無口な人の、それでも語らずにいられないという切迫感が伝わってきた。語りたいことと語ったこととのあいだに生じるズレにもたびたび言及され、その葛藤を表す言葉の素直さが心を打つ。

  •  作品解説(カバーより):廃墟と化した戦後の町で、現代の死神が作家の“私”に語ったのは……。ユニークな設定の表題作以下、第2次大戦下の言語に絶する体験を、作者は寓話・神話・SF・ドキュメントなど様々な文学的手法をかり、11篇の物語群としてここに作品化した。戦後西ドイツに興った新しい文学の旗手ノサックの出世作。

     翻訳本というのは読みづらいイメージがありますが、この作品は言葉では説明出来ない不思議な雰囲気で気づけば読み終えている感じなので、あまり気になりません。
     「死神とのインタヴュー」に登場する社長が、本当に死神なのか、それとも何かの比喩表現なのか、学がないのでわかりませんが、決して明るい作品ではないにも関わらず不思議な魅力があります。

  • 短編集。基本的には幻想的だったりシュールだったりするのだけれど、どれも作者自身が体験した戦争の記憶が生々しい影を落としていて、なんというか、手放しで幻想譚としては読めないリアリティがありました。表題作なんかもすごくシュールでカフカ的な印象なんだけれど、それ以上に、戦争後の寒々とした世相、庶民の暮らしぶりなんかの描写のほうが歴史的に意義があるのかも思ったり。とくに「滅亡」は、ほとんどノンフィクションと思しきハンブルク空襲後の作者の実体験手記のようなもので、幻想性は皆無ながらすごく深かった。今読むと、ちょっと311後の日本の姿とも重なります。オデュッセウスの息子テレマコスが父から聞いた話を語る「カサンドラ」は、唯一舞台が古代ギリシャということもあり異色でした。

  • 日本人とドイツ人は、

    戦前に列強であったこと
    それになれるだけの歴史と技術があること
    空襲を知っていること
    第二次世界大戦後のアイデンティティーは、反省と贖罪から始まったこと
    核爆弾の脅威を知っていること
    脅威の復興を遂げたこと

    と共通項がいっぱいあって、だから、ドイツ文学は読みやすいのかもしれない。

  • 情緒的なようでそうではない印象。好きな作品とそうでもない作品、半々くらい。

  • まだ読みかけ。でも面白そう。

全6件中 1 - 6件を表示

この本が好きな人におすすめの本

ハンス・エーリヒ・ノサックの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×