- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003246917
作品紹介・あらすじ
ドイツの自然科学者・劇作家ビューヒナーは、23歳と4カ月の短い生涯を彗星のごとく全力で駆け抜けた。残された作品はわずかだが、いずれもずば抜けた先駆性を持っている。その一切の規定を拒む"規格外"の作品は、不死鳥のように永遠の若さを保ち、新たな輝きを放ち続けるだろう。戯曲2篇、短篇小説1篇。
感想・レビュー・書評
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ツェランの評論を読んでいて気になったので読みました。「レンツ」だけ。
統合失調症の男の話だった。終始わけのわからない苦しみに悩んでいるようだった
最後は精魂疲れはてた感じで心がからっぽに。主人公の親は毒親ぽい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ビューヒナー生誕200年
ヴォイツェクの演劇と舞踏を観て元が気になり読了
訳注って普段まったく読まないのだけど 今回ばかりは未完であるということと200年前に実際にあった話を元にしているということで隈無く読んだ
古さは感じず近未来の話といっても大丈夫なのではないだろうか これが普遍ということか
ヴォイツェクは映画化もされているようでなんとかDVDを見つけたいと思う -
ヴォイツェク:初めて戯曲を読んだのだけれどやはり慣れない感じがあってなかなか進まず内容も入ってこなかった。これにはこの作品が未完でしかも場の順番などが編者によって違うというのもあるのかもしれないけど。でもこの本には事細かに訳者の註釈があって親切ではあると思う。
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散逸を免れた奇跡の珠玉の作品群。言うまでもなく『レンツ』は金字塔だ。『ヴォイツェク』『ダントンの死』は戯曲なので抵抗があったが、辛抱強く読むとセリフが食い込んできはじめる。亡命の時のための資金集めとして、『ダントンの死』はわずか5週間で書かれた(年譜p3)。23歳の若さでで逝去。ヴェルナー・ヘルツォークなどによって『ヴォイツェク』が映画化されるなど再評価された現在、ドイツでは日本の〈芥川賞〉や〈直木賞〉にあたる〈ビューヒナー賞〉がある。詩人のパウル・ツェランなどが受賞。
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「お前は罪そのものみたいに美しいな」
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ヴォイツェックの衝撃は大きかった。
それ以上に、作品内に挿入されたアンチ・メルヒェンな童話に魅入らせられました。
童話とストーリを照らして考えると楽しい! -
ヴォイツェクって、松本零士の「おいどん」系のキャラだと思います。
実際はもうちょっとしょぼくれてる系のキャラになるかもしれませんが、
いずれにせよ松本零士テイストを感じるのです。
つまり「おいどん」は実際にはああいうことはやりませんが、
「おいどん」が出てくるような話の、ゲストキャラにはよく「ああいうこと」をやらかすキャラがいるのです。
無学者は言葉で世界をわりきれない、という問題提起の仕方も共通しています。
ヘルツォークの映画版もそういえばああいう系の顔でした。 -
多くの「先駆的」といわれる表現形式を培ったビューヒナー。彼の代表作を集めたあまりにおいしい文庫版。
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アルバン・ベルクによる傑作オペラ(「ヴォツェック」)の原作「ヴォイツェク」(ジョージ・スタイナーは、オペラ版には原作の自閉的な苦悩が消えている点を指摘しつつ、他方でオペラ版における女主人公マリーの描き方は評価しています)、めまぐるしく展開する政治群像劇「ダントンの死」(歴史的に有名な人物と名もなき市民の声が交錯する様子は個性的)もすばらしいのですが、それ以上におすすめしたいのが「レンツ」という中篇小説です。
23歳で亡くなったビューヒナーの作品のほぼ全てにいえることなのですが、この小説も完成していません。しかし、物語の完成など関係ない感覚や表現の斬新さがあります。翻訳を通じても、単語一つ一つに充満する異様な緊張感は、普通の小説では味わえません。
レンツというのは、実在したドイツの劇作家です。狂気の発作に苦しむ彼の生活を、骨太で、心の闇を切り裂くような強靭な文体で抉り出します。
冒頭、ひとりで山を越えるレンツの姿は、まるで魂の戦場で負傷したジークフリートの帰還を描いているかのようです。ビューヒナーにとって、大胆不敵な作品を発表した挙句に精神を病んだレンツは、魂の英雄に他ならなかったのでしょう。
ただし、この作品は英雄をあがめるものではまったくなく、むしろレンツが抱える苦悩を心優しい人間ゆえの苦しみとして、私たちが共感を持てるように描いているのも特徴です。
ともあれ、まずは冒頭の自然描写を読んでみて下さい。その視点の切り替えは、明らかに常軌を逸していながらも、圧倒的な読ませる力を放っています。
これだけの力を日本語に移し変えた訳はすばらしいし、ビューヒナーの生涯や作品の受容史を説明した解説も渾身の作で、文庫本にはもったいないくらいですが、ちょっと訳注が多すぎるのが玉に瑕。歴史背景の説明は必要です(「ダントンの死」については人物列伝までついており、実に参考になります)が、訳出上の工夫を語ったり、本文の解釈を披露したりするのは、別の場で行ってもよかったのではないでしょうか。