日月両世界旅行記 (岩波文庫)

制作 : Cyrano de Bergerac  赤木 昭三 
  • 岩波書店 (2005年1月18日発売)
2.92
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  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003250617

日月両世界旅行記 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 17世紀前半のフランスの剣豪であり、作家、哲学者でもあった
    シラノ・ド・ベルジュラックの空想科学諷刺小説、
    「月の諸国諸帝国」と「太陽の諸国諸帝国」二編を収録。
    滑稽な冒険譚だが、
    往時のキリスト教会のあり方や宗教者の姿勢を批判し、
    自由を愛し権力に反抗した当人の生きざまが反映された作品。
    前者は語り手ディルコナ(Dircona=シラノ de Cyrano のアナグラム)が
    火薬を使って浮揚する装置で月へ行き、
    出会った人々と問答した後、地球に戻るまで。
    後者は月世界旅行記を執筆して毀誉褒貶を招いたディルコナが、
    幽閉された塔で飛行具を製作して飛び立ち、
    太陽の周りを回る小さな陸地に辿り着き、紆余曲折を経て
    死者の魂が安らぐ場所へ向かう物語(但し未完説あり)。

    種村季弘『吸血鬼幻想』に引用された部分が
    長年気になっていたので、確認のために購読。
    「月の諸国諸帝国」でのエピソードで、
    月の社交界における飲血と人肉嗜食の奇妙な習慣について。

    【引用】p.157-158
     「しかしこれでもまだわれわれのもっとも立派な葬式方法ではないのですな。
     わが世界の哲学者の一人が精神の衰えを感じ、
     寄る年波の氷のためにその魂の働きが鈍くなるのを感じるようになると、
     彼は豪勢な宴会を開いて友人たちを集めます。
     そして自分が自然にたいして暇乞いをするよう
     決心するにいたった動機を開陳し、
     もうこれ以上生き永らえても、自分の立派な行ないに
     何ものかを付け加える希望も乏しいことを申し述べると、
     みんなは彼を赦す、つまりは彼に死を命ずるか、
     あるいはなお生き続けるようにと厳しく命じます。
     そこで多数決によって自分の生死がみずからの手に委ねられると、
     彼はもっとも親しい人びとにその日と場所を知らせます。
     呼ばれた人は身を清め、二四時間、食を断ち、
     ついでに太陽に犠牲を捧げてからその賢者の家にやってくると、
     その高潔の士が装飾を施した寝台の上に身を横たえて待ち受ける部屋に入り、
     つぎつぎと順番に彼を抱くのですが、
     彼がもっとも愛する人の番になると、
     彼はその愛人に優しく口づけしてから、その人を胸に抱き、
     口と口とを合わせつつ空いている右の手で短刀を握り、
     自分の心臓をひと突きにするのです。
     愛人は彼の息が途絶えたと感じるまでは唇を離しません。
     そして息を引き取ったと分かると彼の胸から刀を抜き取り、
     自分の口で傷口をふさいでその血を呑み込み、
     もうそれ以上は飲めなくなるまでその血を啜り続けます。
     それが済むと別の一人がつづき、〔最初の人を〕寝台に運びます。
     この第二の人が満腹になると、
     彼はそこから連れて行かれて寝かされ、第三の人に場所を譲ります。
     こうして全員が満腹すると、
     四、五時間後に各人それぞれ一六、七歳の少女が当てがわれ、
     彼らが恋の喜びに浸っている三、四日のあいだは
     生のままの死者の肉を喰うだけで身を養いますが、
     それというのも、もしこの抱擁から何ものかが生まれ出れば、
     彼らの友が生き返ったと確信をもてるからです」。

  • 購入は一年以上前。岩波の旧訳に倣い『~旅行記』という題名を採用しているが、月世界や太陽世界での習俗解明よりも哲学談義や世界構造・原理の披瀝にウェイトが置かれている(特に月のほう)ので、異世界冒険譚みたいな内容を期待していると少々肩透かしを喰うかもしれない。キリスト教社会や精神に対する痛烈な皮肉は随所に見受けられるものの、スウィフト風の超攻撃的諷刺というほどでもなく、なかなかにユーモラスで笑いの要素も強い。

  • ロスタンのシラノでロクサーヌに会おうとするド・ギッシュ伯爵を足止めするために空を飛ぶ方法をあれこれ語るシーン以来、気になっていた本。

    皮肉と理屈が多くて想像していた内容とは違っておりました…。

  • 物語としてはあんまりよく意味がわからない。
    しかしこの時代(17世紀)によくもこんな破天荒なことを考えたものだと思った。
    シラノおそるべし。

  • いわゆる空想ユートピア小説。
    けったいな装置を編み出してそれで宙を舞ううちいつのまにやら月の帝国に着いていて……とかいう話だった、ような気がする(記憶が確かならば)。

    著者はエドモン・ロスタンの戯曲で有名な大鼻のシラノ。

  • 腰に空のガラス瓶を巻きつけ、そこに太陽の光を取り入れた男は、月へと飛び立って行った。

  • 挿絵がシュールでナイス。

  • SFの曙。いや、私の持っているのは【月と太陽諸国の滑稽譚】なんですが、古すぎてISBNコードがないもんで。ロスタン作のシラノを読んだ者にはちょっとびっくりなほど、本物のシラノは反体制的で皮肉屋で、だからこそ面白い話です。でも、こんなんが肉親だったら「ちょっとあっち行ってて」って言うと思う。絶対。

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