- Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003251157
感想・レビュー・書評
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母后への愛憎と皇子ブリタニキュスへの嫉妬が引き起こす、怪物ネロン(皇帝ネロ)の誕生。世界を統べる皇帝ゆえに女王ベレニスと引き裂かれるティチュス。権力とエロス、政治と情念の破滅的な絡み合いを、人間の深層と歴史の深部をえぐる詩句で描いたローマ物悲劇の頂点。
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原書名:Britannicus / Berenice
ブリタニキュス
ベレニス
著者:ジャン・ラシーヌ(Racine, Jean, 1639-1699、フランス、劇作家)
訳者:渡辺守章(1933-、東京、演出家) -
ラシーヌの17世紀フランスといえば、いよいよ「近代」へと突き進むその矢先の、「古典主義」の時代だろう。人間主義的な世界観が嵩じてバロックへと突入する直前の頃だと思う。
「ブリタニキュス」はネロンすなわち、悪名高いネロが、皇帝となって間もない頃の物語である。残虐を極めるにはまだ至らないが、既に邪悪な気配を漂わせ、物語の中心に居座って怪しげな炎をたちのぼらせている。強大で残忍な暴力としての権力を手中にし、ネロは初めての殺害(邪魔者の排除)へと突進するが、そこに何の迷いもない。邪魔者は排除する、欲しいものは手に入れるという、わがままな欲望の純朴さが、有無を言わさぬ<権力>の強靱さで宮廷を引き裂く。
これは<権力=悪>を中心に据えた、なかなかに優れた作品である。
ラシーヌの描写は人物の心理をリアルに浮き彫りにしており、その才能はシェイクスピアにも近い。
一方の「ベレニス」は、社会的制約に従うため愛を捨てるという、近代以降は世間でもありきたりとなった状況の古典的ドラマである。ここでも、心理描写は堅実である。
しかし<悪>を中心に据えて不気味な「ブリタニキュス」の方が、私には魅力的だった。
渡辺守章氏の和訳はちょっと読みにくい。 -
芸術というものは解釈者が現れるとなんとも気持ち悪い。
さらっと読めば普通の話なのに、解釈を読むと途端につまらない。
教養と思って耐えるのか、趣味として流すのか。
楽しい方に傾きたいものだ。 -
権力者の色恋、特に感ずるところはなかった。