- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003251225
感想・レビュー・書評
-
今回のモリエールのテーマは「偽善者」です。
他のモリエールの戯曲と同様に、頑固で極端で家族を困らせる間の抜けた父親が、物語全体を引き締めて、笑わせてくれます。(笑)
そして今回は、その母親と息子もちょっと間が抜けている設定になっていまして、この親子ともどもは・・・と観客を呆れさせる趣向になっているのも楽しい限りです。
物語は、父親オルゴンが「偽善者」タルチュフを優遇することから発生するドタバタ劇ですが、最初はそのタルチュフがなかなか出てこず、オルゴンもしばらくしてからの登場で、徐々に周辺から盛り上げて、どんな人物なのかと観客にイメージを膨らませるという、心憎いばかりの展開になっていますね。
「偽善者」タルチュフの人物設計もなかなか面白くて、これは割と当時の宗教者をブラックユーモアで風刺した部分もあるのではと思われるほど現実味があって、事実、解説によると、そうした風刺のためかしばらくの間、上演禁止命令が出ていたとのことでした。宗教者といえども人間であり、こうした人間行動の真実を巧みに極端に描き出して笑い飛ばすというのは、本当にモリエールの真骨頂だといえますね。
物語展開も舞台として楽しさ溢れるものとなっていて、それぞれの登場人物の役回りも個性的な人ばかりなので、これも他の作品と同様に是非とも観劇して大笑いしてみたいところです。(笑)
ずっと上演禁止状態だったためか、ラストは一見すると時の権力者の国王に媚びを売りまくったものとなっていますが、これはこれで今となってはくすっときます。(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでいると頭痛がしてくるほど退屈な戯曲。舞台で役者が演じているのを見る分にはマシなのか?
ボーマルシェの『セビーリャの理髪師』を読んで、続きの『フィガロの結婚』を読みたくて図書館へ行ったけれど、その時は書架に見当たらなかったので、『セビーリャの理髪師』の解説で触れられていたモリエールを試してみようと借りてみた。
でも、まったく面白くない……こんどは『人間嫌い』を試してみよう。 -
副題の「ぺてん師l'imposteur」が示しているように、信心家を装って財産、果てはオルゴンの妻エルミールを手に入れようとするタルチュフがメインの喜劇。劇の筋立て自体は勧善懲悪と要約することもできようが、タルチュフによる信心深さの演出、彼を信頼する家長(とその母)の頑迷さ、そして裏切りが発覚した後に激怒する極端さとそれを嗜め中庸をすすめる他の登場人物たち、舞台の合間合間に人を喰ったような発言をするドリーヌなど、色々と楽しめる要素が多い。その中で、「あの乱」と言われるフロンドで功績をあげたオルゴンのことを忘れない、「思いがけないときに善行を嘉することを忘れたまわ」ない国王が劇を大団円に導くという『タルチュフ』の筋書きは、ルイ14世の治世を飾るに相応しいものでもある。劇それ自体の面白さだけではなく、国王という存在がどうイメージされていたかを知るための史料という意味でも、非常に興味深い作品。
-
テンポよく進んで楽しめる。いつの時代もこんなのいるんだね。
-
この作品、1714年にフランス国王ルイ15世の公妾だったポンパドゥール夫人がヴェルサイユ宮殿に設えた小劇場で自ら国王の前で演じたもののひとつだという記録が残っています。当時、幅を利かせていた聖職者を批判するような箇所も多いので、これを宮廷で演じるのはなかなか思い切った事をするな。と思っていましたが、ラストで納得。少しご都合主義なところがありますが、結局は「国王陛下万歳!」な部分があるんですね。国王を喜ばせようとする夫人の思いが感じられました。作品そのものに対してではありませんが、私としてはそんな感想です。
-
当時は上演禁止になったり色々と問題作だったようだけど、これが相当面白い。
-
モリエールは「古典は難しくて苦手」って意識のある人にぜひ読んでもらいたいな。
だって面白くて、下手すればコントみたいな場面まであって、とても古典とは思えないから!
この「タルチュフ」は偽宗教家。古典作品だけど、こんなの今の世の中にも結構あるお話。人間って昔から同じ事ばっかり繰り返してるのかしら。
単純に楽しめる喜劇でありながらも、奥底には人間のシリアスなテーマを抱え込んだ作品。 -
欺瞞の象徴たるタルチュフは、信心に漬け込んで主人を欺き、一家のあらゆるものを手に入れんとする。