守銭奴 (岩波文庫 赤 512-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003251270

感想・レビュー・書評

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  • 17世紀フランスの劇作家モリエールの喜劇です。モリエールの作品の中では最も上演回数が多いとのことです。
    主人公といっていいのかわかりませんが(笑)、60歳のジジイで、息子と娘の父であるアルパゴンの「ごうつくばり」ぶりが物凄いです。それに、年若い女性との再婚を画策し、息子と娘の方は体よく結婚させて片づけてしまおうとするなど、その自己中心ぶりも半端ないです。しかも、お金をかけずに・・・。(笑)
    今回、モリエールが提示した「けち」で「強欲」なジジイという人物設計は大変に際立ったもので、その圧倒的なキャラは今日でも色褪せることはありません。われわれ観客はその妥協のない「けち」で「強欲」ぶりに面白さを感じ笑うわけですが、人間誰しも「けち」や「欲張り」な面に多少なりとも身に覚えがあるはずで、その増幅された「ごうつくばり」なアルパゴンの姿を笑うと同時に、自らの周囲や自分自身を振り返ることにもなります。そして、それがまた面白い。観客はいつまでも強烈なアルパゴンを忘れないのと同時に、自らや自らの周囲に「アルパゴン」を重ね合わせて笑い続けることで、モリエールは笑いの持続性と横展開をも観客に提供しているわけです。モリエールの人間観察眼の鋭さと、それをネタにいつまでも笑いを記憶させようとする作家魂に迫力を感じさせられます。さらにアルパゴンの周囲を彩るジャック親方やフロジーヌばばあの素っ頓狂ぶりも楽しく、モリエールの人物設計の面白さが存分に味わえる作品になっています。
    上演当初は客入りが悪かったとのことですが、こうした自分に常にはね返ってくるような強い風刺を笑い飛ばすには、まだまだ観客の精神が追い付いていなかったのかもしれないですね。
    舞台劇の作品として、舞台らしい会話と仕草の妙が随所にあらわれ、それがまた楽しいので、これはやはり是非とも観劇したいところです!(^o^)

  • 他人の評価よりも、家族よりも、とにかく金!
    金がすべて!という、実にわかりやすいオジサン。最後は上手いことまとまってハッピーエンドに終わる。アルゴパンも多少痛い目にあったけど、全然反省の色がなく、ただただ自分の財産が減らなかっただけで満足してしまう。ここまで徹底した拝金主義は、逆に微笑ましくさえ思えてしまう。

    シェークスピアの戯曲が人気があるのはわかる。彼の戯曲にはドラマがあって、人が死んだり殺されたり狂ったり…喜劇でも変装したり…といろいろ手が混んでいる。文学的な意義もあるのだろうけど、とりあえずドラマがあるので一般人にも面白く読める。

    対してモリエールはこれといったドラマ、ストーリーの盛り上がりに欠ける。日常をデフォルメして面白おかしく描いてるだけ。だから若い頃はモリエールが全然面白く思えなかった。でも今読むと、こういう単調なものも楽しめる。年をとるのも、悪いことばかりじゃない。

  • 単純で面白いので、寝る前に読む読書に最適。
    戯曲を読んでいると劇場で劇を見ている気分になれる。
    モリエール全集、買おうかな。

  • 大阪丸善ジュンク堂にて購入。たまにこの時代のわかりやすい戯曲を読むとほっとする。

  • もとが劇の台本なためか、本で読むとあっさりした物語。アルパゴンという60過ぎの守銭奴が何でもかんでもケチをつけ、年頃の娘と息子が結婚したいと言っても大反対。周りはアルパゴンに意見を聞いてもらおうと従順に接するも、アルパゴンは傲慢さに拍車をかけ、話し合いは頓着状態に陥っていく。

  • ・「病は気から」を思い出させる喜劇。
    ・アルパインが登場してからの終わり方がやや唐突。

  • 「このわしはあのかわいい箱を見に行くとしよう」で幕を閉じる。最後まで気になるのは、戻ってきた自分の”お金”ということですね。

    箱の中には、金貨。現在(令和4年)の価値にして約数億~十億円程度。アルパゴンって、子どもも大きくなっているから、そろそろ「老」の部類に入ると想定される。この金塊をどうするのでしょう。墓場に持っていけるわけでもなし。
    喜劇の扱う、人間の狂気っていうのは、きっとそんなものかもしれない。家族よりも、恋しい人よりも、目の前の金が。しかも、使う訳でもなく増やすわけでもなく、貯めて眺めるだけ。

    本書は、守銭奴の喜劇だから、敢えてそのような設定になっているかと思うけど、息子たちは毎日何をしているんでしょうか。親の遺産を待っているのか? そもそも、は、どうやってお金を貯めたの? まさか相続ではないでしょうね。高利貸しかな? いつまで働いて、いつ息子たちに引き継がせないのか? 分をわきまえた生活ができず、金利も考えず借金をするクレアント。慕う人以外には横暴なヴァレーヌなど、なんか”ちょっと”の性格の人が多い。遊んでいる2つの家族に、それぞれ大金。子どもはそれを当てにするだけ。親はお金を見せびらかせて若い娘に結婚を迫る。当時のよくある設定なのかもしれないけど、設定自体が少し納得できない。400年近く前の西欧、時代背景ごと受け止めるには少し勉強不足でした。

  • モリエールの作品を読むのは「人間ぎらい」以来。
    この作品も風刺というか、皮肉っぽさが感じられた。
    子どもたちに人並みの身だしなみもさせないけちん坊なアルパゴンが、年甲斐もなく、息子が想いを寄せる女性に恋をする。が、恋愛すれば金がかかることが何よりも辛いアルパゴンがどういう行動に出るか....というところが、根っからのけちさがあらわれているなと思った。周りの登場人物も、ものすごく人間らしい描かれ方をしていた印象。
    2人の言い分を直接ではなく間に立って介す「とりもちばばあ」の言葉の翻訳ぶりが、人間の通じなさの所以よなぁとしみじみ思った。

  • めちゃくちゃ笑いました。まずフランスの喜劇役者ルイ・ド・フュネスが演じる劇場版『守銭奴』を観て笑い、原作読んで笑い、大変ほがらかな気持ちになりました。

  • 守銭奴。モリエール先生の著書。守銭奴は古い戯曲だけれど、時代を超えて読む価値があるのが守銭奴がいまだに名作として高く評価されているゆえん。こんな守銭奴が身近にいたら気が狂ってしまいそう。でも気が狂ってしまいそうと思わされるほどの守銭奴の存在を文章で表現できるのがモリエール先生の凄さ。

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