- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003251515
感想・レビュー・書評
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日本でいうと江戸時代に書かれた小説なのだけれど、なんとなく源氏物語の現代語訳を読んでいるような気分になったので不思議だった。浮気や不倫というとなんとなく不道徳・不真面目のような気がするけれど、真剣で真摯な内面的なところが非常に繊細に記述されていて面白い。まあそれで死んでしまうということはないだろうなと思うけれど、ここまでマジだったらこの当時なら恋わずらいで死ぬこともあっていい。
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本当に美しい恋愛小説。夫のいるクレーヴ夫人はハンサムな貴公子ヌムール公の求愛を受けて心が揺れ動く。彼女の心の動きが精緻に描かれる。物語としても面白く、主人公の行く末が気になって、ページを捲ってしまう。きりりと引き締まった古典的な文体で、甘ったるい形容詞などは使われていない。訳者はこの物語を訳す時に、源氏物語の文体を意識したそうだ。そのためにこの訳書には雅やかな雰囲気が漂っている。クレーヴ夫人はヌムール公を愛しながらも、身を任せることなく自立した人間として生きることを決意する。この決断に深く感動した。
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1678年の本です。
日本だと、江戸時代です。
だから、いまの小説だと、禁じ手である、
「美男・美女」のお話になっています。
そういう、枠組みやお約束事を了解した上で読むと、
なかなか、ハラハラさせる展開が心地いいです。
時代も国も遠く隔たったお話なので、
作者が意図していることの何分の1かしか、
伝わってこないのだとは思いますが、
それでも、読んでみてソンはない小説です。
この本には、表題作のほかに、
「モンパンシエ公爵夫人」
「タンド伯爵夫人」
という短い物語も掲載されています。
先にこの2つを読んで、枠組みを理解しておくと、
表題作が、より親しみやすくなると思います。 -
以前からいつか読んでみようと思っていた作品。フランスの恋愛心理小説の祖といわれている作品らしい。
アンリ2世の治める宮廷を舞台に、年若く貞淑なクレーヴの奥方とクレーヴ殿、そして奥方に切ない恋心を抱くヌムール公の三人の物語を描く。
クレーヴの奥方とヌムール公の苦しみも相当なものだったろうが、読み進めながら私が常に考えていたのはクレーヴ殿の苦しみだった。結婚後も自分の妻に恋しているのに応えてもらえない彼が、三人の中で一番痛ましく映った。互いに恋しているのに結ばれない辛さよりも、同じ想いを返してもらえない片恋の辛さの方がよく理解できるからだろう。
最後に奥方がヌムール公に伝えた言葉は当時の貴族女性の結婚観が窺えて面白い。