マノン・レスコー (岩波文庫 赤519-1)

  • 岩波書店 (1957年6月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (236ページ) / ISBN・EAN: 9784003251911

作品紹介・あらすじ

シュヴァリエ・デ・グリューがようやく十七歳になった時、マノンという美しい少女に会う。彼が犯した幾多の怖ろしい行為はただこの恋人の愛を捉えていたいがために他ならなかった。マノンがカナダに追放される日、彼もまたその後を追い、怖ろしい冒険の数々を経て、ついにアメリカの大草原の中に愛する女の屍を埋める。

みんなの感想まとめ

人間の愛と欲望の複雑さを描いた物語は、時代を超えて共感を呼ぶテーマを持っています。特に、femme fataleとして知られるヒロイン・マノンのキャラクターは、現代の読者にも新鮮な印象を与え、彼女の存...

感想・レビュー・書評

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  • 古本市で岩波文庫赤版をまとめ買い。その中からのレビュー第1弾。

    私は文学史を詳しく学んだわけではないが、マノン・レスコーが出版された18世紀より前は欧州の文学ではキリスト教の教義に沿った道徳的で禁欲的な人物像が目指されていたのではないか。また一方で日本の文学では、義理と人情との葛藤や、それらに対する人々の心の機微が文学で描かれるようになった時期だと思う。どちらも現代の視点から見れば、当時の文学の命題とは、いわゆる「正しい人間像」を目指していたように思われる。

    ところがそのような時代にプレヴォは「マノン・レスコー」を世に出した。現代に生きる私たちがこの本を読むにあたっては、まず時代背景を念頭に置かないとこの本のもつ真の面白さはつかめない。なぜかと言うと、この本で描かれるマノン・レスコーという女性も、シュヴァリエ・デ・グリューという男性も、当時の文学における登場人物の常識では捉えきれない人物像だからだ。つまり道徳的であると同時に欲望的という矛盾する人間性を併せ持ち、それこそが人間存在の真実の姿であるという、現在では当たり前の感のある人物描写を世界で最初に書き得た作家こそがプレヴォだと言えるのではないか。さらに言えば、プレヴォこそが初めて「正しくない人間像」の描写が人間真実の描写であり文学の本道であると明示し、フランス文学をはじめ文学の近代化への道筋を開いたということだ。

    だからマノンやシュヴァリエについて、現代的な道徳を当てはめ、2人の行状の“粗探し”をするのだけは避けねばならない。一般的に私たちが小説を読む大きな理由は、現実世界では表し切れない人間存在の真実を、仮想世界である小説の中から読み取れるからである。勘のいい読者ならば、2人に関する描写から、まるで読者である自分の過去の心情をトレースしたのではと思えるような描写に出会えて、驚きを生じるだろう。

    なお、世の男性読者はマノンに恋する感情が湧き上がらなくても別に問題はないし、このような女性はちょっと…と躊躇する男性のほうが実際は多いだろう。しかしあるとき“マノン的”な女性に出会ってしまう可能性はないと断言できるだろうか。想定外の恋に落ちたときにどう考えどう行動すればよいか。いくら現代社会が技術的に当時より発達したと言っても、マニュアルやネットをいくら探しても自分にぴったり合う解答なんてまず見つからないし、もし男性が恋に落ちたとして、いくらマニュアルがあってもそんなものなんか無視して猪突猛進し最悪の状況に陥るのはありふれた話だ。

    私も“失敗したことのない人間なんて存在しない”というのは身に染みてわかっている。でも私を含めて世の多くの人は具体的な困難に突き当たると我を失い失敗をより深くしてしまうもの。だが数世紀の歴史の流れに耐えて今も読み継がれる本作を読むことで、多くの男性にとって(もちろん女性にとっても)、人類が生きる上で避けえないそれらの失敗に関してのサジェスチョンとなる何かを得られる、と私は考える。

  • 1929年初版のため、翻訳がひどい。新しい翻訳で是非読み直したい。ところで、マノンはそんなに毒婦だろうか、って思った。貢ぐ君達は勝手に貢いでマノンの気持ちをひこうとみんな必死だった。自分勝手なのは貢ぐ君達ではなかったか。彼らも綺麗な見せびらかせるマノンが欲しかったわけだし。たった17歳のマノン。きらびやかな事、楽しいこと、派手なことが好きなのはひっじょーに理解できるし、なおかつ彼女はこのお馬鹿なデ・グリューがキチガイじみた入れ込み方をするぐらい美しかったんだもの、その利用の仕方本人にだってすぐに分かっちゃったでしょうね。アメリカに流され荒地で死ぬはめになったマノンがかわいそうだった。

  • 実は初読ですが、話の筋は、こう言っちゃ何だが読む前から知ってるわけで、その点はどうでもいい。言うまでもなく、いわゆるfemme fataleというヤツですが、これが世界初だと言われていることは、教養として知っておいてもいいでしょう。つまり、現代の我々は、こんなキャラにとっても慣れ親しんでいるけど、その最初がマノンです、と。

    さて、それはともかく。
    この本のポイントは、訳と解説です。昭和一桁の感性、言葉遣い、さらに道徳観や価値観といったものが、よく言われるような戦前/戦後といったくくりで示されるような断絶感をもってとらえられるようなものではなく、とても瑞々しくも現代的であることを感じられると思います。というより、ボクの感覚からすれば、ようやくボクらは、こうしたところまで戻ってこれたのじゃないか、とすら思うほどです。
    (ただなぁ、終盤付近「化学者」って訳してる場所は、現代だったら絶対「錬金術師」って訳しただろうな。あれ、恐らくは、ぼくらがゲームなどを通して本来の意味での錬金術師のイメージを構築した現代では問題ないんだけど、当時にあっては、迂闊に使うと守銭奴だと表現しようとしていると誤解される恐れがあって、そうしなかったんじゃないかなあ、なんて想像してます。)

  • 娼婦という現実的な市民生活と、由緒のある家をでた聖職者を目指すものが、いわゆる“愛”という心の鎖でつながれる。
    第三身分と第二身分という明確な差もあっただろう当時、この物語はどうなるのか読まれただろうか。

    淫らな女性に振り回される不幸な男の物語としてか、それとも神の愛にも匹敵する清らかな男女の愛(心)を見出したか(またしても神は無口で残酷だが)。
    それはわからない。
    ただ、現実的な世界の中で、心の自由を求めようとする物語は、時代は変われどこれから先も紡がれていくんだろうと思う。


  • あまりにもどうしようもない主人公なので、その思い込みの激しさや見通しの甘さに不安をおぼえるのですが、繊細に揺れ動く心情や、若さから来る激情とも取れる言動のおかげか、共感はできないけれども放ってはおけない気持ちになりました。作品が世に出た当時は、ヒロインのマノンが斬新なキャラクターとして衝撃を与えたそうですが、ちょっと思慮に欠けていたけれど、実に人間的でした。悪気はなかったと思うので、悪女と呼ぶのは可哀想。多少の古さはありますが、そこに18世紀フランスの空気を感じたので、この作品を読めてとても有意義でした。

  • 課題のために読んだ。
    正直、どうしてチベルジュがそこまでしてくれるのかわからない。見捨ててしまえばいいのに。
    デ・グリューがマノンに囚われているように、チベルジュもまたデ・グリューに囚われている気がした。
    後者は恋愛ではないのだろうから、一緒にするのは乱暴かもしれないけれど。

  • 17歳のシュバリエはマノンと突然運命的な出会いを果たし、たちまち恋に落ちた二人は人生の道にも堕ちていく事になる。

    マノンもシュバリエの事はちゃんと愛してたんでしょうけど、何分にも欲深くて、「お金あげるから愛人になって」と言われればホイホイついていっちゃうんですよね。まぁ、受け取るものだけ受け取って逃げちゃうんですけど。

    でも、アメリカに追放になったマノンを追って同じ船に乗り、マノンと最後の時を過ごした所には彼の愛を感じます。

    彼は後年マノンの事をどう思い出すのかな。

  • は、腹立つ…!
    今作と著名な恋愛小説として並ぶ「椿姫」の読後感に似ている…だめだ…私はこの系列はだめなんだ…よくわかった…。
    「椿姫」と異なるのは、椿姫はまだマリーの心理を描こうとしていたのに対し、今作はそれもまるでないこと。
    けれど、そのためにマノンの象徴性が高まり、今作を特別なものにしているのかも知れない。
    私は受け入れられないけどね!
    これが理想の女性だなんていう輩は、女性の外側、器しか求めてないんじゃないですか!
    後ろから蹴っ飛ばしたい!
    でもキャラクター、特に主人公への苛立ちを置いて遠くから全体を眺めれば、物語自体は面白いので悔しい…。

  • マノンという美しい少女と出会ってしまったがために、約束されていた輝かしい名誉も未来も捨てる道を選び、ただ只管に彼女への献身的な愛に生きる事を選んだ主人公、デ・グリューの物語。
    自分のすべてを犠牲にしてでも貫きたい程の強い想いを経験した事のある方であれば、デ・グリューのこの駄目っぷりにもある種の共感を感じる事ができるかと思います。かくいう私も物語を読み進めながら、客観的であるにも関わらず、デ・グリューの情けなさやマノンに翻弄され自らを見失う姿にはどこか苦い気持ちにされられました。しかしそれでもデ・グリューがそうせざるを得ない気持ちが分かってしまうのだから、その不甲斐なさを責める気持ちにもなれず。だからと言って彼が決して許されない過ちを犯している事までもを咎めない訳ではありません。理性を失う程のこの恋の物語に於いては、それが悲劇を助長している事に間違いはないのだけれど。
    一方で、自由奔放で欲望に忠実とも言えるマノン。彼女はデ・グリューからの献身的な愛に包まれながらも、贅沢で満ち足りた生活を諦める事が出来ません。愛と生活は彼女の中ではきっちりと線引きされているのです。彼女の口から語られるかの有名な台詞がそれを的確に物語っていますね。「パンに不自由しながら人は恋を語れるのでしょうか」これ程までに秀逸な台詞にはなかなか出会えるものではありません。フランス文学のこの恐ろしさよ。しかしこの辺り、デ・グリューの気持ちが分かるだけに切ないものがありますが、マノンの言い分にも大いに納得されられてしまうのだから、やはり恋愛なんてものはそう簡単にはいかないものです。
    元祖ファム・ファタールと言われるマノンですが、私からしてみれば彼女には悪意なんてものは全く感じられず、純粋で素直でただ無知な少女であったに過ぎません。寧ろ自らもその美しさに翻弄された男たちと同様にそれから逃れられなかっただけの可哀想な少女とも思えます。
    しかしデ・グリューの心にはチベルジュというどこか普遍的な存在がいて、そこに完全なる甘えがあるのは明確です。あの荒野で屍と化したのが彼女でなくデ・グリューであったならば、また全く違った物語になっていた事でしょう。どんなにマノンに対して愛を叫び身を窶したところで、結局デ・グリューの未来には輝かしさが透けて見えてしまうのだから、全く身勝手な男だと幾許かながら思わずにはいられないのでした。

  • 恋するという脳の働きについて考えさせられる本で、昔からたまに読みたくなります。さすが現代まで残る名作、お気に入り。

  • 最悪。
    椿姫の解説で、似たような作品だと紹介されていたので読みましたが、腹が立ちました。

    働きもしないで美人局を繰り返して生活する男女。
    遂に逮捕されるが、男のほうは父親が有力者だったので釈放。
    遠くの流刑地まで連れていかれる女についていく男。
    女は病死。
    男は悲しむが、その後何もなかったかのように、普通に生活。

    ・・・どこに同情の余地があるのか?
    椿姫とはえらい違いだ。

  • 微妙なゾーンの人とアホな人が恋愛してしでかしやっちゃった物語。ものを知らないお子様たちだからほんの少しだけかわいそうかな。
    ーーーーー
    シュヴァリエ・デ・グリューがようやく17歳になったとき、マノンという美しい少女に会う。彼が犯した幾多の怖ろしい行為はただこの恋人の愛を捉えていたいがためであった。マノンがカナダに追放される日、彼もまたその後を追い、怖ろしい冒険の数々を経て、ついにアメリカの大草原の中に愛する女の屍を埋める。この小説はプレヴォ(1697‐1763)の自叙伝ともいわれ、18世紀を代表するフランス文学の一つ。

  • 悪意なくして罪を犯す女
    軽はずみで向こう見ずだか正直で真剣な女

    ”恋よ、恋よ、お前は永久に智慧とは融和しないのだろうか”

  • マノン・レスコーって悪女悪女と言われるけれど、それほどでもないなという印象だった。まあ書かれた時代にもよると思うけれど、現代ではあり得ないこの関係性はある意味で貴重な記録なのではなかろうか。

  • 01.11.2014 読了

  • ファム・ファタールの原点ともいえる作品。オペラでは知っていたけど(第3幕の間奏曲が美しい)、原作は初めて。
    この主人公がてんでだらしないわけだけど、これは男は皆んな似たようなもので、昔っから馬鹿な生き物だったということ。
    18世紀のアメリカは、ヨーロッパからすれば囚人が送られる地でしかなかったというのは、言われてみればその通りだけど、ちょっと驚いたな。

  • 駄目男和駄目女。。。だメンズ&だメンヌ

  • いわゆる男を惑わせる悪女の話。あんまり共感は出来なかったな。

  • マノンが結構ろくでもない女なんだけども、そういう駄目な人に惚れてしまうとか、別れようと思いつつ引きずられてしまうとかってわりとリアルな恋愛に通じてる感じ。駄目ながらも憎めないマノンってすごい。

  • 騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語
     「椿姫」を読んで、「マノンレスコー」に戻ってしまう。自然な成り行きだと思います。20歳の頃に心理学の本(たしか「愛の心理学」って本だったかな…)を読み、その本に掲載されていたたくさんの本を読みあさっていました。
     あの若かりし日々を思うと、「人生は流れる!」を実感しますね。何度読んでも、エンディングは何か悲しいです。

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