アドルフ (岩波文庫)

著者 : コンスタン
制作 : 大塚 幸男 
  • 岩波書店 (1965年1月発売)
3.93
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  • Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003252512

作品紹介

これをしも恋愛小説というべきであろうか。発端の1章を別とすれば続く2章だけが恋と誘惑にあてられ、残る7章はすべて男が恋を獲たあとの倦怠と、断とうとして断てぬ恋のくびきの下でのもがきを描いている。いわば恋愛という「人生の花」の花弁の一つ一つを引きむしり、精細に解剖しようというのだ。近代心理小説の先駆をなす作。

アドルフ (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 恋愛を単に希望、美しい、その目覚めにおいてのみ描写したものではなく、全閲歴を叙述している。-恋愛の成長、凋落、および死
    (解説より)

    恋愛小説に関しても、古典の作品は衝撃を受けます。

  • 悲劇。素晴らしい小説。

  • 「アドルフ」は人間の虚栄心と弱さがいかに他人だけでなく自分まで不幸にするかを描いた小説である。アドルフは愛情を持ち合わせていなかったにも関わらず「愛されたい」という観念だけでエレノールに近づき、同情と憐憫と彼が考えるものと優柔不断さゆえに数ある別れのチャンスを不意にした結果、エレノールが死ぬまで別れることができなかった。アドルフは自ら破滅の道へと踏み出し、その道から救い出そうとする手も自分の性格ゆえに跳ね除けたのである。

    翻訳が良かったので書き込まれた心理描写を苦なく読み通すことができた。それほど有名な作品ではないが、長くないし翻訳も良いからオススメできる一冊。

  • ヒトラーとは無関係。恋愛心理小説の古典。短いので挫折することなく読み通せる(たぶん)。
    フランスに対するイメージが変わるかも。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00841994&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • これは名作

  • 欲望や欲求は、自分の手を離れて変化することがある。
    永遠に続くように思われる、息の詰まるような倦怠感。

    2014/12/04 追記
    哲学の自由概念の区分でコンスタンが登場したため、関係ないとは思いつつ再読。アドルフは近代的自由の体現者であるとも言えるか。理想と内実の乖離状態については検討の余地有り。

  • 恋は、つい最近までほとんど他人だった人と、もう何年ものあいだずっと一緒に暮らして来たような感じを我々に抱かせる。恋は輝かしい一点にすぎない、にもかかわらず全時間を占領してしまうかに見える。

  • 僅か150頁ほどの短編なのに、なんて愛の不条理さに満ち溢れた小説なのだろう。誰からも祝福されない年の離れた二人の愛。思いはあっけなく結ばれるのに、その後も幸福に辿り着くことは決してない。これをアドルフの駄目さに原因を求めることは簡単だが、むしろそれほどまでに客観的な心理分析が成されていることが驚きなのだ。ここには恋愛感情とは自分の写し鏡を求めるものでしかない為に絶対に報われないのだという冷静な視点を持ちながらも、それでも感情の不確かさから逃れる事はできないのだという残酷な実存が剥き出しに表現されている。

  • 「遅かれ早かれ避けがたい苦痛に一瞬間だけ立ち向かう勇気がないからだ!だがその苦痛を,われわれは毎日なし崩しに,一滴ずつ嘗めているのではないか (Pour ne pas braver un instant une douleur qui, tôt ou tard, est inévitable! Ne l'éprouvons-nous pas chaque jour en détail et goutte à goutte, cette douleur?) 」― 第4章より

    青年アドルフ(21~24 歳)の物語.エレノールのためにいつまでも腐れ縁を断ち切れず,互いに傷つけ合う日々が3年ばかり続く.ついに別れを決意し,その旨 T*** 侯爵充てに手紙を出すも,惰性からいつまでもけじめをつけられないアドルフに業を煮やした侯爵から,直接エレノールに宛ててアドルフからの手紙を同封して送りつけられる.それがエレノールを絶望に突き落とし,結果的に彼女を殺すことととなった.ところが彼女の死はアドルフに渇望していたはずの自由をもたらさず,むしろ誰も愛してくれる者がないという喪失感と虚無感で彼を包み込む.

    アドルフは弱い男の典型である.しかし男は誰しも彼のような弱さを多少持ち合わせるのではないだろうか.彼に共感できるところは少なかったが,なるほど,少し踏み外せば彼と同じ道を歩みかねなかっただろうという危機感を抱いた.と同時に,その危機を回避しえたことへの安堵感を得た.恋愛以外に没頭できることがあったからである.アドルフは結局自由を求めて他に強く意志するものをもたなかった.彼にとって,意志の対象は自由そのものであった.

    若さとは無知である.周りが何も見えない.だがその盲目なる情熱も,正しい方向に導かれるならば,信じがたい威力を発揮するものである.青年の無限の可能性とはこういった危うさをいつも孕んでいる.アドルフの場合,全き大人のT***侯爵の先導はすでに遅きに失したものであった.

    訳文が素晴らしい.

  • 結果としての恋愛関係ではなく恋をする事を目的に関係を始め、相手の女性が本気になればそれが疎ましくなり、それなのに言い訳をして別れず、挙げ句、少しも自己反省のない自分大好きな若者が苦しむ物語。表面だけをさらうと、そうなるかもしれません。腹立たしい主人公ですが、相手を見ようとしない恋愛を経験した方であれば、克明に綴られる彼の心理に過去の自分との重なりを見つけ、投げ出したくなるかもしれません。ですが最後まで読むと、ああ、そういう狙いだったのか。と気付かされます。深読みすればするほど、強く心に残る作品でしょう。

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