「絶対」の探求 (岩波文庫)

著者 : バルザック
制作 : Honor´e De Balzac  水野 亮 
  • 岩波書店 (1978年4月発売)
3.58
  • (6)
  • (9)
  • (14)
  • (1)
  • (1)
  • 本棚登録 :124
  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253069

「絶対」の探求 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • マンネリとは紙一重で違う、堂々たる堂々巡り。

    表紙に結末が書いてあるという岩波文庫の必殺技も作用して、読者はあらかじめ知らされた結末に向かって螺旋状に落ちていく物語を追うことになる。ここでマンネリに陥らずに、きわどく救われている理由を考えるのだが、定かには分からない。

    リアリズムには乏しく、秀逸な心理描写も見当たらない。小説全体を通しての箱庭感というのが、マンネリを回避できている理由に当たるのか。狂人のもたらす悲喜劇が、家族の運命の一連の流れとして読める。狂人を住まわす町の、それ自体が生きているような姿が俯瞰される。このあたりの描かれ方が読者に力強い「それある感」を持たせているのは疑いない。この本に描かれる典型がマンネリだとすれば、人の生きる世というものが、そもそもそうなのだろう。

    バルザックの作品は、そうしたマンネリを生きる、脇役たちが素晴らしい。ある出来事に際して脇役が発する言葉、行動というものの中に、その人物が背負っている状況や、経てきた歴史が想像できるように作られている。
    主筋を追うのはもちろんだが、読むべきはこういうところだよね、という気がする。

  • バルザック(1799-1850)の『人間喜劇』の中の一長編、1835年の作。

    19世紀フランスの長編小説というのは、スタンダールにせよフローベールにせよゾラにせよ、どうしてこう退屈なのだろう。物語は躍動せず、文体ばかりが重苦しい、冗長なんだ。「年に何万フランの利益を上げる不動産を抵当に入れる」だとか云う話でなければ、貴族だかブルジョアだかの女たちのカビの生えたような心理描写が大仰な言葉遣いで延々と続くだけ。

    この作品は、「絶対」の観念に憑かれた男の狂気の内面を描くことは殆どなく、この男に振り回される妻や娘など周囲の人間に起こる感情や事件をただダラダラと叙述していく。だから、バルタザールは飽くまでこの小説にとっては外的異物のように描かれている、戯画化されたただの変人だ、この小説にとっての他者でしかない。「絶対」の深淵に不可避的に身を堕とさずにはおれないバルタザールのような人間の内面を、時に人間性の内部にもたげて自らを破滅に導かずにはおかないあの暗い力を、この小説は決して摘出してこない。外からその表面を観察しているだけで、内在的にあの狂気を炙り出そうとはしない。それは、そもそも作者の意図ではなかったのだろう。これは「絶対」の探求に憑かれた狂人の物語ではない、終始それは「絶対」の探求に憑かれた狂人に翻弄された普通人のあれやこれやに過ぎない。暇潰しにしかならない。

  •  どうしてこんなに面白いんだ? 200年も前に書かれた小説なのに。まったくもって信じ難い話である。人間の心理ってやつは多分変わっていないのだろう。芝居っ気たっぷりなのはフランスのお家芸である。それが嫌味になっていない。軽やかなステップで踊っている。瀟洒(しょうしゃ)。しかも目を瞠(みは)るような名文、美文がそこここに散りばめられている。オノレ・ド・バルザック、恐るべし。

     <a href="http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100119/p3" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100119/p3</a>

  • 難解なのにバルザックにはものすごく惹かれてしまって、
    ついつい読んでしまうから不思議。

    難解ゆえか、自分ではたくさん読んだつもりでも
    ページ数が減らないので無限なんじゃないかと時々思わされました。
    ちなみに読了してません、1/3くらいまだ残ってる・・・

全6件中 1 - 6件を表示

「絶対」の探求 (岩波文庫)のその他の作品

バルザックの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ウラジーミル ナ...
ドストエフスキー
ドストエフスキー
ウィリアム シェ...
ドストエフスキー
フランツ・カフカ
ドストエフスキー
ヘミングウェイ
アゴタ クリスト...
ウィリアム・ゴー...
ドストエフスキー
有効な右矢印 無効な右矢印

「絶対」の探求 (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする