モンテ・クリスト伯 3 (岩波文庫 赤 533-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253335

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  • もはやダンテスは居ない
    長年の投獄生活と人生を陥れられた復讐心からダンテスは死に、モンテ・クリスト伯へ変貌を遂げたのだ
    復讐の対象は3人の男たち
    彼らにどう近づき、何を仕掛けるのか…

    まずはそのうちの一人、ダンテスの婚約者であったメルセデスと結婚し、地位も金もある地位に成り上がったモルセール伯爵(元フェルナン)
    その息子アルベールに近づきさんざん恩を売るモンテ・クリスト伯
    単純なアルベールはモンテ・クリスト伯に感謝とさらには立ち振る舞いに魅せられ尊敬を以って自宅へ招待するのだ
    とうとうフェルナンとメルセデスとの再会を果たす
    メルセデスは顔色を変え病に侵されたかのような虚ろな状態に(気付いたのか?昔の想いに馳せ、ダンテスを想っただけなのかは不明)
    モンテ・クリスト伯の方はメルセデス肖像画を観た時点で肩と胸とをふるえがかすめる
    そしてアルベールは復讐対象男の一人ダングラールの娘が許嫁という出来過ぎな設定が発覚

    さてコルシカ出身のベルツッチオ
    こちらはモンテ・クリスト伯の下僕の一人である
    彼はモンテ・クリスタ伯復讐対象の一人である王党の検事代理ヴィルフォールに恨みをもち、過去にヴィルフォールを刺し(死んでなさそう)、ヴィルフォールが埋めたであろう子供を引き取る
    義理姉がその子を育てるのの、とてつもなく悪党のなり、最後は金欲しさに義理姉を火炙りにし、子供は消息を断つ(いつか出てきそうなので覚えておかなくては)
    ベルツッチオがヴィルフォールを刺したであろうこの別荘をモンテ・クリスト伯が購入
    ここはヴィルフォールの嫁であったサン・メラン侯爵の元邸
    ここでベルツッチオの過去が回想される
    ベルツッチオは過去にある殺人の濡れ衣で捕まった
    なんとダンテスの隣人であったカドルッスが犯した殺人だ(これもモンテ・クリスト伯はカドルッスを許したわけではなかったのか…チャンスは与えたが、彼の心次第では地獄になることを見越して試したのだろう…という出来事あり)
    モンテ・クリスト伯の復讐対象者らと何かと絡みが深いベルツッチオは、ここから救出され、モンテ・クリスト伯の下僕となるが、もちろんすべてモンテ・クリスト伯の企みによる
    このベルツッチオが掴んでいるヴィルフォールの秘密をモンテ・クリスト伯がどう復讐の道具に使うのか…

    さて次に再会する復讐対象者は船乗り仲間かつ会計士であったダングラールである
    強欲で人を蹴落としてものし上がるこの男は当然出世しており、今や成功した銀行家である
    ここではモンテ・クリスト伯は直接対決を試み、見事ダングラールの鼻をへし折る
    恐らく復讐の序の口に過ぎないだろう

    お次は最大の敵、王党の検事代理ヴィルフォール
    ヴィルフォールの現在の夫人と子供を助ける…という茶番をやってのけ、ヴィルフォールがモンテ・クリスト伯の元へやってくる
    この対決もモンテ・クリスト伯も痛快な話術を繰り広げるが、さすがに心の中で憤怒の叫びをあげる場面も…
    ようやくここでモンテ・クリスト伯のこころの動きが垣間見れる

    そう2巻の途中からモンテ・クリスト伯の心情描写が一切ないため、彼の真意がまったくわからない
    謎の空白期間に準備をしたのであろうが、読者には知らされていないため、一体何をどう仕掛けてくるのか…気を引き締めて読まなくてはいけない
    そうあちこちに仕掛けが満載なので、ぽけーっと読むとえらく勿体無いことになる

    どうやらダンテスが再会する順番は罪の軽い順みたいである
    再会の駒は出揃った
    伏線もたくさん張られた
    緊張感が増す一方である

  • 引き続きフランツとアルベール。観光客でいっぱいの謝肉祭で、彼らは移動のための馬車や見物場所のキープ等に四苦八苦していたが、そこに同じホテルの客であるモンテ・クリスト伯と名乗る紳士が救いの手を差し伸べてくる。この紳士こそフランツがモンテ・クリスト島で出会った「船乗りシンドバッド」であり、コリドーで山賊と密談していた男であり、オペラ座でギリシャ人の美女と観劇していた男だった。しかしモンテ・クリスト伯はフランツと初対面のふりをし、フランツもそれに合わせる。

    彼らは一緒に処刑見物した後、今度は仮装して謝肉祭に繰り出すが、アルベールは百姓娘の仮装をした美しい娘に夢中になり、逢引の約束を取り付ける。友人の逢瀬をフランツは快く送り出すが、なんとその晩、アルベールが誘拐され、山賊ルイジ・ヴァンパから身代金要求の手紙がフランツに届けられる。手持ちの金が足りず、助けを求めたフランツを伴いモンテ・クリスト伯は自ら山賊のアジトへ赴いて、あっさりアルベールを救出。アルベールよりもモンテ・クリスト伯との接触が多いフランツは、モンテ・クリスト伯を信用しすぎないようアルベールに忠告するが無邪気なアルベールは気にしない。

    やがてフランツはイタリアに残り、アルベールはモンテ・クリスト伯と再会の約束をしてフランスに帰国。そして約束の3か月後、パリのアルベールをモンテ・クリスト伯が訪れる。アルベールは彼を友人たち(その中にはマクリミリヤン・モレルもいる)と両親(フェルナンとメルセデス)に紹介。メルセデスだけが、モンテ・クリスト伯を見て顔色を変える。

    モンテ・クリスト伯はシャンゼリゼに家を準備していたが、オートゥイユで売り出されている別荘も購入、そこに忠実な家令のベルツッチオを伴うが、ベルツッチオはその場所を異常に恐れている。理由を問いただす伯爵に、ベルツッチオは恐ろしい過去を告白する。(※実は伯爵はすべて承知でベルツッチオを雇っていたのだが、あえて初耳のふりをする)

    ダンテスが投獄されたのと同じ1815年、ベルツッチオは親代わりに自分を養ってくれた軍人の兄が王党派に殺害され検事に訴えに出るが、そのとき応対したヴィルフォール検事(ダンテスを陥れた同じ男)に邪険にあしらわれたベルツッチオはヴィルフォールへの復讐を決意。機会を狙ってヴィルフォールを尾行するうちに、彼が別荘で愛人と密会していることを知る。その場所が外ならぬ、オートゥイユの別荘。

    ある晩、ベルツッチオはそこで恐ろしい呻き声を聞いた後、ヴィルフォールが庭に穴を掘り何か埋めるのを目撃、飛び出してヴィルフォールを殺害すると(※もちろんこれはベルツッチオの勘違いでヴィルフォールは死んでいない)、埋められた箱を掘り返して持ち帰る。しかしその箱の中身はなんと生まれたばかりの瀕死の赤ん坊。根っからの悪人ではないベルツッチオは赤ん坊を養護院に預けるが、数か月後、義姉(死んだ兄の妻)の計らいでその赤ん坊を引き取り育てることになる。ところが成長するにつれその子供ベネディットは性悪になり、ついには母代わりの義姉を殺害して金品を奪い逃走する。

    その14年後、密輸業者となっていたベルツッチオは偶然にもダンテスの元隣人カドルッスの宿屋で、カドルッスがダンテスの遺品として司祭からもらったダイヤを宝石商に売ろうとしている現場に居合わせる。欲深いカドルッスの妻が宝石商殺害計画をたて、結果その妻自身と宝石商が相撃ちで死亡、カドルッスはダイヤと現金を持って逃亡。現場にいたばかりに逮捕されたベルツッチオを、司祭が助け出し、モンテ・クリスト伯に紹介してくれて現在にいたる。(読者はこの司祭がモンテ・クリスト伯と同一人物であることを知っているがベルツッチオは知らない)

    モンテ・クリスト伯は、ダングラール男爵とその妻、さらに今は検事総長であるヴィルフォールにも、その妻を利用して巧みに接近し・・・。


    2巻のラストでようやく「モンテ・クリスト伯」の名前をダンテスが名乗り始めました。いよいよ復讐の下準備が着々と進み始めてドキドキ。とくにベルツッチオが知っていたヴィルフォールの秘密、この弱みをモンテ・クリスト伯がどう利用するのか考えるとゾクゾクしちゃう。

    処刑見物の場面は、いかにダンテスの心が憎悪に凍り付いていて、復讐の鬼となっているかがよくわかって印象的。謝肉祭は、現代日本の渋谷のハロウィンみたいな様相(笑)仮装してお祭り騒ぎ、アルベールはナンパ目的でうろうろしていたため、一種の美人局に引っかかったような感じ。

    あとはミーハーに、ヴィルフォールの後妻エロイーズが登場すると、山口紗弥加だ!とか、ダングラールの妻エルミーヌが出てくると稲森いずみがやっと出た!とか、日本版ドラマキャストで当てはめて喜んでいます(おかげでキャラ関係図を覚えやすい)

    余談ですが、モンテ・クリスト伯の容貌は度々登場人物たちによって「バイロンの吸血鬼」のようだと評されており、有名な「ディオダディ荘の怪奇談義」が小説冒頭と同時代の1816年、本当はポリドリが書いた「吸血鬼」はバイロンの名前で発表されたので、作中当時はあれがまだバイロン作と思われてたんですね。

  • モンテ・クリスト伯出現!の第三巻。
    誘拐されたアルベールを助けたことで、
    パリ進出の足掛かりを得たモンテ・クリスト伯。
    物語はローマからパリへと移る。
    復讐対象の三人は、いまや地位も財産も絶頂に。
    だが、モンテ・クリスト伯=ダンテスは、
    彼らに復讐の糸を絡めていく。
    熱病に浮かされるようなローマの謝肉祭とカタコンブの
    情景から、場面はパリの上流社会へ。
    モルセール伯=フェルナン、ダングラール男爵、
    ヴィルフォール検事総長の登場!
    嫌な奴はやっぱり嫌な人格のまま出世していますね~。
    その描写の執拗なことw
    彼らの家での家族関係、アルベールの友人たち、
    再登場のマクシミリアン等、脇役のようで実は
    これからの物語の進行に絡んでくる人物が
    多数登場しています。フラグもいっぱい♪
    そしてベルツッチオの過去の話から、
    ヴィルフォールの罪、私生児の生い立ち、
    カドルッスの犯罪等、驚愕の判明!
    時は、ルイ18世~シャルル10世~7月革命後の、
    ルイ・フィリップ1世の頃。産業革命の時代です。
    そんな時代背景にも注目しながら読むと、
    面白いですよ。

  • 青年二人のイタリー旅後編から家令ベルツッチオの過去編、そしてモンテ・クリスト伯の復讐序章、と続く第三巻。
    上手い……話の流れが抜群に上手いんだ……とにかく面白い……デュマ天才じゃね?(語彙力喪失

  • ローマでモンテ・クリスト伯が出会ったふたりの青年、フランツとアルベール。
    どちらも良家の青年らしく好奇心のままに行動することに躊躇せず、汗して得た金ではないのに(ないから?)無造作に金を使い、社交の場に顔を出す。
    比較的慎重で常識的なフランツは、ローマ以前にも一度モンテ・クリスト伯と会っているので、彼の狙いはてっきりフランツだと思ったのだけど、今巻でモンテ・クリスト伯のターゲットはアルベールだったことがわかる。

    アルベールを通してフェルナンとメルセデスの夫婦と知り合うモンテ・クリスト伯。
    その後ダングラールとヴィルフォールとも出会うが、彼がエドモン・ダンテスであることに気づいたのはメルセデスだけだった。
    いや、もう一人、冤罪を知っていて知らん顔をしたカドルッスもブゾーニ司祭となっていたダンテスには気づかなかった。
    獄中の14年+脱獄後の9年はそれほどに彼の容姿を変えたのか。

    ブゾーニ司祭(ダンテス)から5万フランの価値のあるダイヤモンドを贈られたカドルッスは、ダイヤモンドを売り払うが、欲に駆られてその宝石商とついでに自分の妻を殺害する。
    ダンテスはカドルッスを許したのではなく、復讐したってことなのだろうか。
    それともカドルッスの行動にその判定を委ねたのか。

    仇と狙うフェルナン、ダングラール、ヴィルフォールたちの家族に取り入るモンテ・クリスト伯。
    今のところモンテ・クリスト伯が圧倒的に大物感を出しているのだけど、このままいけるのか?
    モレル商会の長男も絡んできそうで、先を読むのが楽しみこの上なし。

  • 復讐の手始めは、こう来たか。山賊のくだりも、パリに行ってからも、ベルツッチオの話も、息も継がせぬ展開。ぬ?ここでつながり始めたか?とかね。どうなるどうなると、やめられません。

  • 2巻、3巻読了。

    人は変わる。
    運命で変わる。経験で変わる。環境で変わる。
    出逢いで変わる。学びで変わる……。

    若き頃、純朴であった“ダンテス”は変わった。
    それにしても、変わりすぎだ。
    もはや“ダンテス”ではない。
    ”モンテクリスト伯爵“なのだ。

  • 第3巻。

    100万フラン程度の金なら容易に融通させるモンテ・クリスト伯。現代ならいかほどの金額資産なのだろう。

    さて、モンテ・クリスト伯爵として生まれ変わったダンテスは、復讐の対象である男たちに、じわじわと近づいてゆくのであった。
    「伯爵」は相手を殺害するような直截な復讐など考えていない模様。真綿で首を絞めるごとく、相手が煉獄のなかで苦しみ果てることを目論んでいるようだ。
    そのため、復讐相手たる目標に遠回りに近づいてゆく。
    偶然を装いつつ知己になる。そういう状況構築を描いてゆくので紙幅も要する。

    〈 以下ネタばれ含む 〉
    ・まずは謝肉祭を迎えて沸騰喧噪のローマが舞台。フェルナンの息子アルベール・モルセールは、地元の山賊に捕らえられ身代金を要求される。それをモンテ・クリスト伯は(山賊の知己なので)すぐに解放救助。アルベールの命と恩人となり、絶大な信頼を得つつパリのモンセール家に迎えられる。
    そう、モンテ・クリスト伯は、パリに居を構える。

    ・そして、代議士且つ銀行家となったダングラールとの面会(再会)を果たす。ダングラールは、「無制限貸出」の条件を付されたモンテ・クリスト伯なる人物の信用調査のために面会に訪れた模様。この場面、伯爵は結局彼から600万フランという巨額の融資を引き出す。これはきっと、ダングラールを破滅させるための仕込みに違いない。

    ・さらに、検事ヴィルフォールに接近。従者ベルッチオからかつてヴィルフォールが愛人の幼子を地に埋める場面を目撃したと告白される(これはきっと脅迫ネタにすることまちがい無しである)。
    ・さらにさらに、ヴィルフォール夫人の馬車暴走事件を仕込み、その危難を奴隷アリに救助させて恩を売る。ヴィルフォールは、自らモンテ・クリスト伯の邸を来訪し謝意を述べる。ここに、ダンテスは仇敵中の仇敵、ヴィルフォールとの再会を果たす。この場面を描いた章は「観念論」と題されている。このシーン見所である。モンテ・クリスト伯は(論点は明確でないが)ヴィルフォールに対して、そんな生き方でいいのか?と議論をふっかける。
    この場面、読者として
    "ダンテス、再会してすぐに狡猾な仇敵にそんなに大胆に斬り結んで大丈夫か?"
    とひやひやさせられる。なにしろ、いまや検事総長となり法曹界の頂点で権力を欲しいままにするヴィルフォールなのである。

  • 『もうあんな毒素はたくさんだ。あれを胸いっぱいに吸い込まされては、解毒剤でも飲まなければ。』ヴィルフォールと直接対決した時のモンテ・クリスト伯のフラストレーションは最大級になった。このストレスは彼の復讐劇をお膳立てして、一気にドミノ倒しを引き起こすだろう。3巻は過去の伏線を1つづつ回収するのではなく、更に慇懃に緻密に仕込んでゆく過程である。アルベール、メルセデス、ヴィルフォール、エロイーズ etcの今後の崩れ方が気になってきた。2巻での私の死刑執行仮説は大きな間違いだったが、ドミノ倒しの伏線か!

  • この巻の見どころは何といってもローマの謝肉祭!仮装をして仮面をつけてのお祭り騒ぎ。ああ生で見てみたい!ざわめきが聞こえてくるような生き生きとした描写で読んでいて楽しくなった。中には撲殺刑を見ながら死刑について語るという怖いシーンもあるのだが…。夜にコロッセオを訪れたり、カタコンベに誘拐された人間を迎えに行ったりと、ローマの史跡も描かれていて、デュマがイタリアを気に入っていたことがうかがえる。
    後半舞台はいよいよパリへ。家令ベルツッチオの過去の話から様々なことが明らかに。ベルツッチオは殺したと思い込んでいるが、ヴィルフォールは今もパリで検事総長を務めている。そしてベルツッチオが命を救ったヴィルフォールの庶子も生きている。今後これらの人物たちがどう絡んでくるのか楽しみ。もう出てこないと思っていたカドルッスがとんでもないことをしでかしていた事もわかり、やはりこいつも報いを受けなければならなそうだ。これからいよいよ復讐のターンか?

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著者プロフィール

1802-70。フランスを代表する小説家・劇作家。生涯に長短合わせて250篇あまりの作品を書いたとされる。主な作品に『コルシカの兄弟』『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』『三銃士』『ブラジュロンヌ子爵(鉄仮面)』『ダルタニャン物語』『王妃マルゴ』『王妃の首飾り』など。

「2016年 『ボルジア家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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