感情教育〈下〉 (岩波文庫)

制作 : Gustave Flaubert  生島 遼一 
  • 岩波書店
3.77
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本棚登録 : 125
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253847

作品紹介・あらすじ

アルヌー夫人への満たされぬ思慕をますますつのらせつつも、フレデリックは官能的なロザネットとの交渉を深めてゆく。そして2月革命。歴史は大きく揺れ動き、政治の渦は彼らをも巻きこむ。フローベール(1821‐80)の円熟した手腕の冴えが見事に発揮されたこの長篇は、写実主義が生んだ最も完璧な作品と称えられている。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の3分の2過ぎたあたりから劇的に面白くなる。若く、熱っぽく、傲慢で、不安定で、愚かで、狡くて、心弱い、ばかなフレデリック。アルヌー夫人がでてくると、革命も友人も一気に色褪せ遠景に追いやられてしまう。これは青春小説として読んだ。
    一つの時代があったとして、それがどんな時代であったのかは史実を並べても語りえず、世界は生きられた時間のなかにこそ現前する。
    文章が素晴らしくて、翻訳でこれなら原文はどんなかと思う。接続詞の展開の仕方がものすごく気持ちよくて、思わず読み返してしまうところが何箇所もあった。それから、時間処理の仕方。普通ならくどくど書きそうなところを、ばっさり3行で終わらせてさっさと次に行ってしまう、映画か演劇みたいな場面転換がかっこいいし気持ちいい。
    下巻は特にフレデリックの気持ちと合間って、閉じるのが惜しくて、徹夜で一気読み。読後感を色に例えるなら金色。
    星5つじゃ足りないな。

  • 『感情教育』後半部。二月革命の最中もアルヌー夫人とロザネットとの恋愛関係に思い悩むフレデリックの生活が描かれる。もちろんフレデリックも、議員になろうとしてクラブに出入りしたり、上流階級の宴会に顔を出したりと、野心に突き動かされた行動をとる。しかし結局は、今までの己の行動の風聞に自尊心を傷つけられ、政界入りに踏み出すことはない。また暴動が起こった日にアルヌー夫人と会えなかったことで、ロザネットに入れ込むようになる。だが彼女が妊娠しフレデリックに執着しだすと、それをうるさがってダンブルーズ夫人に手をだす。最終的にフレデリックはアルヌー夫人への思いを貫くことになるが、それはいわゆる一途な恋愛とは程遠いものである。そして最後に、老境にさしかかったフレデリックとデローリエの会話で物語は閉じられる。「二人とも失敗だった。恋愛を夢みた男も、政権を夢みた男も」。最後に、冒頭で触れられた二人の幼なじみの微笑ましい冒険譚が語られ、「あの頃がいちばんよかった」と二人で言い合う姿は、もはや未来に何ら期待していないことを明かしているように見えて、滑稽ですらある。

  • アルヌー夫人の白髪を見て幻滅し、それを隠すために想いを述べることで自己暗示をかける。しかし、結局自らの意思で手を引く。物語中、最もフレデリックの主体性が強く表れた箇所である。
    野心を持ち動乱の時代を生き抜いた友人同士が、半生を語り合う最後。アルヌーが亡くなったと語られたことで、フレデリックとアルヌー家の繋がりは完全に過去のものであると感じさせられた。

  • 三部冒頭の二月革命の場面は緻密な描写と相まって、一介のパリ市民の気分で追体験できたのでとても満足しています。純粋に物語だけを考えると、R-35小説だな。という思いです。もちろん若い方が読んでも問題ないですけど、たぶん「うわあ、なんだよこのフレデリックって。ただのクズじゃん」で終わってしまうでしょう。もしそうなったら、20年くらい経ってからもう一度、読んでみて下さい。きっと、少しも共感できなかったフレデリックとの距離がぐっと縮まります。それまでにいい加減な人生を送った人ほど、この作品は効いてくるでしょう。

  • カーニヴァルについての本で、二月革命についても言及があったけど、たとえばあの言及を描写したら、こんなイメージになる気がする。

    結末まで読んで、あれこれ何年の作品だ?と思ったら、1869年か。
    そうかぁ……そりゃ、あの頃は、的な終わりにもなるわな。
    来年再来年の事なんてまだわからんしね。

    それにしても19世紀のフランスは何処を切っても題材が山ほどあるわねー。

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