脂肪のかたまり (岩波文庫 赤550-1)

  • 岩波書店 (2004年3月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (120ページ) / ISBN・EAN: 9784003255018

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人間のエゴやヒエラルキー社会の醜さが描かれた物語は、19世紀フランスを舞台にし、プロシア軍に占領された町を逃げる人々の姿を通じて、上流階級の偽善性や利己性を鋭く暴きます。特に、ぽっちゃりした娼婦ブール...

感想・レビュー・書評

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  • 外道どもの唄ですな。
    その一言に尽きます。人間の持つエゴとヒエラルキー社会の醜さが書かれてます。スケープゴートとされた、ふくよかな娼婦ブールドシェイフだけが優しくまともであった。そしてタイトルが脂肪のかたまりって。

  • 「きゃあー!」

    このフレーズに接して立ち昇る淑女諸姉の密かな悲鳴が聞こえてきそうだ。
    えっ!男性も?(笑)

    しかし、安心(?)召されたい。ここでいう「脂肪のかたまり」とはむしろ好意的な愛称であり、決して何かを指摘するものではない。なので胸(いや、腹?)に手を当てなくても大丈夫・・・。(笑)

    ・・・どんな好意じゃ!(笑)



    19世紀フランスの作家ギー・ド・モーパッサンの短編小説。
    普仏戦争を舞台に、プロシア軍に占領された町を逃げ出すのにたまたま大型乗合馬車に乗り合わせた面々を通して、上流階層(?)といわれる人間たちの醜い利己性、偽善性、欺瞞性を見事に曝したモーパッサンの佳作。アイロニーに満ちた物語構造だが、短編ならではの簡潔でわかりやすく小気味のよい展開が十分に活かされている。
    ここで描かれる「いけにえ」を供出する構図は、人間社会における集団心理と利己精神そのものだが、馬車に乗り合わせたのが、修道女2人組、伯爵夫妻、工場主夫妻、ぶどう酒販売店夫妻、共和主義者の男性、そして美人だがかなり豊満な娼婦ブール・ド・シェイフ(脂肪のかたまり)という面々で、一番の社会的弱者のブール・ド・シェイフが最も純真として描かれる反面、下の階層から順番に偽善性が高くなっていくという皮肉な描写がなかなか巧みである。自らを犠牲にして公共性に尽くせ!とは、必ず「上流階級」の人間から「下流階級」の人間に発せられる一方通行の言葉であるが、権力や宗教や社会性の仮面を身にまとい、自らを安全な位置としつつ、臆面もなく繰り出されるこのような醜い人間性を、モーパッサンは見事に描き切ったといえよう。
    愛嬌たっぷりなはずのブール・ド・シェイフが、共和主義者の歌う「ラ・マルセイエーズ」とともに涙に暮れるラストは、対比を大いに強調し読者に本編の皮肉を一層印象付ける情感溢れた名場面だ。
    おそらくオリジナル作品にもあったと思われる挿絵も見ていてなかなか面白い。

    • nejidonさん
      「きゃあー!」と叫びたいひとりです。
      脂肪がどうのこうのではなく(笑)懐かしさで。
      この本を読んだのは高校生の頃なのですが、
      レビュー...
      「きゃあー!」と叫びたいひとりです。
      脂肪がどうのこうのではなく(笑)懐かしさで。
      この本を読んだのは高校生の頃なのですが、
      レビューを読んで、
      たぶん何一つ理解していなかっただろうことを、理解しました。
      この人、可愛いなぁという程度でしたからね。
      もう一度読んでみたい気持ちが満々です。
      2014/07/14
    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!

      「脂肪」以外で叫びたかった方もおられましたか!(笑)

      ...
      nejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!

      「脂肪」以外で叫びたかった方もおられましたか!(笑)

      全体の雰囲気がそれほど重くないのと、肝心の娼婦であるブール・ド・シェイフの人物設計に今ひとつ腑に落ちない部分も感じられるため、若い頃に読むとそのような読後感だったのかもしれませんね。
      本書に限らず本は読み直すとまた新たな感想が湧いてくるのが良いですね!
      2014/07/14
  • ぽっちゃり太った娼婦と一緒の馬車に乗り合わせたブルジョアな人々。
    はじめは娼婦にも差別せず真摯に接するのだけど。
    自分に不都合なものに対しては案外無神経に切り捨てたり、知らないふりをしたりするものですよね。
    それはいつの時代も変わらない。
    モーパッサンは昔母親の本棚にあったのを目にしていたので古めかしいイメージがついていたのですが、訳がいいのか軽妙でユーモアもあってあまり古さを感じなかった。

  • 娼婦・ブール・ド・シュイフ(=脂肪のかたまり)はその職業故に不当な扱いを受け、馬車に乗りあった伯爵や資産家たちに都合よく利用され見放される。
    戦時中(普仏戦争)だから、人心がすさんでいたのか?娼婦は戦争のある意味犠牲者だったのか?いやそうじゃなさそう。人間は職業や社会的地位の違いで人を差別する。戦地ではない日本でも同様。社会情勢ではなく人間の本源的な欠点ではなかろうか。

  • ダイエット中なので思わず手に取ったんですけども、そういうお話ではないです。

    普仏戦争後のフランスを舞台にして人間の醜さや勝手ぶり、戦争の虚しさなどを描いている小説。

    文章のうまさとかそういったものは、翻訳だということもあり、よくわからなかったですが、決して古くはないテーマで、短い中に起承転結がしっかり入っていて読みやすいです。

    すっきりしない、考えさせられる作品でした。

  • たかだか90ページにも満たない作品だが、最初は読みにくかったけど後半になると慣れてきて、話が頭に入った。これは訳が古いからなのかな。水野亮氏の訳だった。思い出したのが、満州で開拓団の人たちがソ連兵に女性を差し出した話で、それに比べればまだまだ穏やかな範疇やなと思った。

  • どこか滑稽な部分もあるが、ラストには救いがない。それがリアルという事なのか。

    戦火のなかでは自分も登場人物の様に、醜いエゴに取り憑かれてしまうかもしれない。本書は寓話の様で不思議な迫力を持っている。

    構成も見事で読みやすく、短編小説として非常に完成度の高い作品。

  • 敵が占領したルアンを脱出しディエップに向かう6日間の馬車の旅。1人の娼婦と、世渡り上手な9人の同行者は様々なアクシデントに見舞われる。
    9人は上品さで自己中心的な行動を隠しているつもりだけれど、冷静な目で場面を見守る読者には通じない。虚しさが残る。

  • フランス語は語彙の少なく言語なので、フランスの小説にはやたら回りくどい修飾語が長々とまとわりついてる様なものが多い。
    本書は原作がいいのか翻訳がいいのかわからないが、簡潔な文章ですっきりとまとまっている。ストーリーにも無駄がない。
    人物描写も心の動きも秀逸。

  • まるで密室劇のような濃密な空間の中で、驚くほど心理の変転を描き、人間の善意や悪意、差別意識を露わにしている。設定のやり方も秀逸。敗戦後の占領下という大状況を創出して、なおその中に馬車に乗り会う人間たちという小状況を創る。さらに乗客は当時の社会階層のそれぞれを代表した性格造詣を付会して、社会の箱庭を見事に創りだしている。
    まるでダムの水位が徐々に下がり見えなかったものが現れてくるように、人間の身勝手さや傲慢さを明らかにしている。
    傑作。

  • 80ページくらいの短編。今で言う「胸糞モノ」なのですが、人間のエゴイズムがこれでもかと描き出されており、それが名著として評価されている一冊。救いがないのが辛い内容?

  • 1880年に発表されたモーパッサンの出世作。100年以上前の作品ながら、今読んでも強度は薄れていない傑作。

    「娼婦なのだから体を売るのは簡単なはずだ」
    ブール・ド・シェイフが浴びる酷い言葉は、今の日本でも夜の仕事をしている女性たちに浴びせられる言葉だろう。
    その上で自己責任へと向かわせる富豪たちの印象操作には既視感を感じた。
    だからこそ最後に、その乗車する客たちに当てつけのように響かせるフランス国家ラ・マルセイエーズは、その歌詞の内容も含めて強く響いた。

  • 普仏戦争の中では、当たり前であるが「フランス人は仲間であり、敵はプロイセン人」であるはずだ。作中でも「脂肪の塊」はプロイセン嫌いの描写が多いため、まさか同士であるはずのフランス人からこのような屈辱を受けるとは思ってもいなかっただろう。

    この分量で過不足ない情報量、表現が詰め込まれ、心を動かされる作品はなかなか見ない。例えば、星新一のショートショートは彼特有の新ジャンルであり、彼にしか使いこなせないSFという飛び道具(褒めています)をつかっているのに対し、この作品は歴史小説という王道ジャンルをこの短さで成立させている凄さがあるように思える。

  • 「えげつないタイトルだな…。」と最初手に取ったとき思いました。人間って怖いなと思う反面、もしああするしかなかったと考えるとなんとも言えません。上流階級の夫妻や、尼僧、革命家はこの後一体何を思って生きるのでしょうか。それから挿絵から見ると個人的にはブール・ド・シュイフさんはかわいいと思います(どうでもいいかもしれませんが)。

  • 集団心理とステレオタイプの恐ろしさを仮借のない筆致で描いた名作。人物描写が恐ろしく的確。やっぱり古典は読むべき。

  • 「この本屋で1番薄い小説を買おう!」というコンセプトで買った本。それが名作だった。
    人間の「醜いエゴイズム」が表現されているものの、それは誰もが当たり前に持っている「普通」の部分でもある。
    読み終わったときにモヤモヤする良い作品です。自己完結せずに他の人と話をすることで、この作品の世界が広がっていくような気がします。

  • そもそも、ブール・ド・シュイフ嬢を自分になぞらえるタイプの人しか、この本を手に取ったりはしないんじゃないかしら?
    そしてあの夫人は彼女、あの修道女はあの人、あの伯爵はあいつ、と思いだすのですよ。思いだしたあの人たちはきっとこの本を手に取ったりはしないまま生きていき、よしんば読んだとしても面白いと思うことなく、もっとすれば自身が卑劣であることをすっかり棚に上げて、「ブール・ド・シュイフ嬢はまるで私だわ」などと記したり涙を浮かべたりするのですよ。

  • この短さで、ストーリーの組み立てから掘り下げ、人物設定、など、構成がきちんと完成しているのがすごい。

    人間のエゴイズムとは?と改めて考えさせられる。
    倫理的・社会的制約がないと、人はどこまでエゴイストになれるのか。
    自分達が助かりたいために、一人の人間に自己犠牲を賛美しつつ行為を促し、自分は無作為でいる。
    そして、その行為をした後に、その人間を、道徳観の欠けた人非人扱いをする。
    あからさまかもしれない。
    フィクションではある。
    だが、人間の本質をついているのかもしれないと思うに充分な、深い小説たと思う。

  • 脂肪の塊なる娼婦を追い込む、決定打を放ったのは、尼僧の言葉。尼僧の言葉に追い詰められるその前に、娼婦が教会へ祈りをささげに出かけている、その皮肉が哀切。

  •  普仏戦争のさなか、さまざまな理由からルアンからトートを経由してル・アーヴルへ行く馬車。乗り合わせたのは、伯爵の夫妻、商人の夫妻、いかさま師の夫妻、共和主義者、修道女、そして娼婦の「ブール・ド・シュイフ(脂肪のかたまり)」。

     この物語に登場する人たちはブール・ド・シュイフを除いてみな偽善に満ちていて、自分勝手で、自分本位。まさに人間の気持ち悪い一面が描かれている。

     はじめは娼婦を卑しいものとしてみていたものの、空腹の危機を彼女に救われた途端に彼女に優しくなり、彼女の愛国心ある勇敢な発言を称賛したりする。トートに到着し、ドイツ人士官が彼女の身体を要求したときも、はじめは一致団結して士官を罵る。けれど、そこから徐々に一行(ブール・ド・シュイフを除いた一行、以下この意味)は彼女のせいで旅が進まないことに不満を募らせ、ふたたび彼女を侮蔑しはじめる。しまいには、「娼婦のくせに、なんだってドイツ人士官だけかたくなに拒むんだ」というようなことを言い出して、彼女が自分を犠牲にするように仕向けることを楽しむありさま。人ってほんとうに嫌なものだと思ってしまうところ。
     そして、一行のために自分を犠牲にした彼女(そして旅のはじめに一行を助けた彼女)が空腹で困っているというのに誰一人として助けようとさえしない。彼女はこの悪党どもを恨みながら泣くことしかできなかった。

     娼婦という身分をもつ彼女は、社会から疎外された存在。けれど、彼女は社会たる彼らの都合によって仲間に認められ、使い捨てられ、再び排除されたりする。そこには伯爵夫妻が最上位に位置する階層があって、最下層である娼婦には誰も手助けをしない。この話にあらわれる馬車が社会の縮図だとしたら、社会全体は排除される人にとって絶望に満ちた世界そのもの。

     彼女に好意があったであろう共和主義者も、一行の陰謀を「諸君のやったことは、卑劣千万なことですぞ!」といったり、ラストでは彼女に同情してか、ラ・マルセイエーズを歌い続けるけれども、実際の行動はなにもしていない。それに、修道女が彼女に手助けをしなかったのはなぜだろう。それが自らの「目的」ではなかったからかもしれない(修道女は”目的は手段を正当化する”と考えているらしいから・・・目的のためには娼婦を見捨てることも神は許すと思っているのでしょう!)。

    お喋りがすぎました。人の醜さ、考えさせられることもたくさんあって面白いです。もちろん、腹を抱えるような面白さではありませんが。

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