モーパッサン短篇選 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2002年8月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784003255131

みんなの感想まとめ

人生や人間の厳しさを描いた短編が集められており、淡々とした語り口の中に潜む厭世的なテーマが印象的です。作品の多くは、悲劇的な結末や皮肉な状況を通じて、戦争の悲惨さや人間関係の脆さを浮き彫りにしています...

感想・レビュー・書評

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  • モーパッサンは、300を超える短篇を書きましたが、その中から15篇を訳者が厳選収録したもの。
    特に良かったものを以下に。

    『シモンのパパ』
    母と二人暮らしのシモンという子供が、父がいないことでイジメに遭っており、絶望して死を考えていたところ、鍛冶屋の職人に助けられ…心温まる、いい話でした。

    『田園秘話』
    隣り合う二軒の百姓家で、どちらも4人の子供がおり、貧しいながらも仲良くくらしていました。ある時、裕福ながら子供のいない夫妻がやってきて、遊んでいる子を気に入り、毎月多額のお金を終生贈るから、養子にもらえないかと持ちかけます。一軒の家は断り、もう一軒は承諾します。その顛末は…本当の幸せとは何かと考えさせられる、教訓めいた話でした。

    『二人の友』
    普仏戦争で包囲されているパリの道で、時計屋の店主がかつての釣り仲間と偶然再会します。昔話に花咲かせるうちに、久々に一緒に釣りに行くことにしましたが、川辺は敵との最前線。果たして二人は…気持ちはわかりますが、戦争中なんですよね。

    『ジュール伯父さん』
    『メゾン テリエ』での感想と同様。新訳で読みやすかったです。

    『首飾り』
    ある日、着飾るゆとりもない貧しい夫婦が、大臣宅の夜会に招待されます。なけなしのお金を夫に払ってもらい、ドレスを購入したものの、装飾品がないために知人からダイヤの首飾りを借りて参加します。ところが、その夜会から帰ってくると、ダイヤの首飾りがありません…教訓めいていて、ちょっとしたどんでん返しのお話。解説に、夏目漱石が「不愉快」と評していたことが書かれていて、なかなか興味深かったです。

    『帰郷』
    海辺の漁村で暮らす貧しい夫婦には、5人の子供たちがいました。上の二人は再婚の妻の連れ子で、夫との間の子供は3人です。そんな家庭に、ある日から一人の浮浪者が寄りつくようになります…悲惨な運命にもめげない強さを感じました。最後が爽やかで好きです。

    『マドモワゼル・ペルル』
    ある家庭でお手伝いをしていながら、家族同然に暮らしている老嬢。そんな彼女には、ある秘密が…ちょっと悲しい恋物語。

    『山の宿』
    道が閉ざされてしまう、冬季の山の宿で春まで留守を預かって過ごす、二人の男の物語。ある日、老ガイドが一人で猟に出かけたまま、その日に帰ってきませんでした。若いガイドは、探しに行けども見つけることができません。絶望と恐怖のうちに、時は刻々と過ぎてゆき…恐怖は狂気に変える。ちょっとしたホラーですね。

    他の短篇も良かったです。タイトルだけ列記。
    『水の上』『椅子直しの女』『メヌエット』『旅路』『初雪』『ソヴァージュばあさん』『小作人』

    追記:
    表紙はルノアールの『小舟』。『水の上』の元のタイトルは『小舟に乗って』です。解説に著者がボート漕ぎに熱中していたことが書かれています。
    表紙と合っていると書きたいところですが、その内容はちょっとしたホラーでした。

  • Marさんの本棚で拝見して、私も読んでみようと思いました。モーパッサンと言えば女の一生ですが、それすら読んだことは無く、まず短編から!と読み始めたら…解説文にもあるように「徹底した厭世思想と、非情な作風」で、冒頭からの10編で打ちのめされました(笑)人生なんて…人生なんて…!!オウオウ(号泣)だったところに、「帰郷」「マドモワゼル・ペルル」「小作人」という、悲しいけど少しだけ情の通うお話があり、何とか生還しました。
    最後の方に生き返れるお話があったお陰で、読後感は最初に思ったほど悪くなかった。
    こういうお話を淡々と読める素敵な大人になりたい。

    • Marさん
      こんばんは〜。大量のタイムラインに埋もれてしまい、今頃気付いているという(T . T)。

      短篇の⭐︎評価は難しいですね。自分は、よくできた...
      こんばんは〜。大量のタイムラインに埋もれてしまい、今頃気付いているという(T . T)。

      短篇の⭐︎評価は難しいですね。自分は、よくできた話が多かったので⭐︎5付けました。でも人生で一番好きな短篇である、ドーデ『月曜物語』は⭐︎4です。理由は『月曜物語』以外は好みではなかったからなんですけどね。
      あと、自分は他の人より評価高めなので、⭐︎一つ引いて参考にしてもらうと丁度いいかもね(^_-)。
      2024/11/16
  • ぶ厚い雨雲の空からたまにチラッとのぞく青空の様な、
    ダウナーでいつつ、それほどしつこくなく透明度が高い。
    お互いに相反する属性が共存してるような、そんな印象でした。

    モーパッサンの生きた頃のフランスでは、作中にも描かれる普仏戦争、
    それより前はというと何年かおきに王政と共和政が入れ替わり立ち替わりで
    定まらない時代が続いていた様です。そのあたりの歴史考証は
    専門家に任せとくとして、この、どよ〜んとした空気から、
    そこら辺りの雰囲気を感じ取ることはできました。

    この短編集のちょっとした傾向として、15話あるうちの
    実に8話が、多い少ないはあれど話の中で登場人物が
    過去に自分が経験ないし聞いた話の語り部となってる点です。
    つまり、これはその時点での『現在』ではなく、
    あくまでも『追想』として記されるもので、ベースとしては
    人間どうしの会話の域を出ないうえに過去のものである、
    そんな目線で見ることを求められているのかなと。

    モーパッサンは真実そのものをズバッと描きたいタイプの
    作家ではなく、人々の、目に見えないことをフワフワ語る素振りから、
    単純な言葉で形容できない世俗の感情を浮き彫りにしたかったのかなと。
    そこらあたりを考えると、とても人間的な作風だと思います。

    自分が特に印象に残った1話は『ジュール伯父さん』です。
    金銭が原因で家族の縁が切れたりつながったりするのは、
    過去も今も同じリアルなもので、その感情の動きが二転三転する波を
    横線としての語りで描き、それを過去と今の時間軸の縦糸で
    この時点での語り手の『現在』がどういう地位にいるのかを
    想像に任せるに留める作りが、上手いな、と思います。

    伯父ひいては人の支えになりたいと思うピュアな少年の気持ち、
    打算で行動する大人の邪な心との対比も、ここには表れていると思います。


    あとは余談ですが、この本の表紙がルノワールの絵なのは、
    毎回見てて馴染んでたから特に深い意味があるのかは
    考えることもなかったんですが、少し調べてみたら、
    この短編の開幕第一話の『水の上』が発表された時代は1870年台で、
    ちょうどこの頃のルノワールは印象派に傾倒してて
    モネやセザンヌ達と特に親交が深かった時代です。

    この表紙の絵(小舟)は印象派ど真ん中で、同じ国で同じ時代の
    空気を吸った創作者としての繋がりを狙っていることが明らかです。
    『水の上の小舟』を強いイメージとして伝えたい、
    そんな編集者の意思の力を感じずにはいられないですね。

  • 穏やかな静かな語り口で紡がれる物語は、その語り口とは裏腹に必ずしも心地よいものばかりではない。

    バッドエンドというか皮肉な結果に終わる作品も多い。特に「山の音」の世界は完全にキングの「シャイニング」。20ページ足らずの分量に、文庫本2冊の「シャイニング」の世界が凝縮されている。

    その他にも、戦争の悲惨さ無常さを説いた作品や、当時の世相を反映したと思われる私生児をモチーフにしたものなど、なかなか考えさせられる作品が多い。

    訳がいいのだと思うが、当時のフランスの田舎の情景が良く目に浮かびます。

  • 読んだのは二度目。情景が目の前に広がる。
    二人の友、ソヴァージュ婆さん、2つの反戦の話は今読むと本当にやりきれない。淡々と戦争が人の情けも優しさも吹き飛ばして無感覚にしてしまう様子を書いている。
    旅路とマドモワゼル・ペルル、純愛の話が好き。
    その他も胸がゾワッとする、印象深い話ばかり。

  • モーパッサン(1850-1893)は、19世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に300篇以上にも及ぶ短篇を書いたそうです。本書はその中から厳選された15篇が収録されていますが、どれも面白く読めました。
    語り口の上手さももちろん良かったのですが、個人的にはストーリーの巧みさを堪能できました。同一作家の短編集だとどうしても結末の雰囲気が読めてしまうところがあったりするんですけど、本作はバッドエンド、サプライズあり、シュールに締めたものなど実にさまざまで、オチが予想できないものばかりでした。
    全体としては戦争に絡んだ悲しいお話がやや多かったように思いますが、一番楽しめたのはやっぱり「首飾り」かな。悲劇と喜劇は紙一重っていう意味で。現代ではありふれた手法ではありますが、発表当時は画期的だったんじゃないかなあと想像します。
    一篇一篇が短いので、あまり時間がない時でもとっかかりやすいところもいいですね。

  • 優美でたおやかな文体と、やさしさ溢れる丁寧な人物描写が読んでいて心地よい。19世期フランスにおける人々の暮らしや社会通念に触れた心地すら味わえる、そんな肉感のある作品ばかりで面白かった。

  • 「首飾り」には、「虚栄の代償」という教訓が見つかったが、それ以外の短篇は、「えー、こうなっちゃうの?」「それからどうなるの?」という結末が多かったように思う。
    その結末が余韻を残し、怖い話の怖さが増し、悲しい話の悲しさが増し、純粋な話の純粋さが増すのかもしれない。

  • 『モーパッサン短編集』岩波文庫、15篇の短編が入っている。モーパッサンは着実という感じで、ミステリーもゴーストもないが、人間の心理を描いて、とても読ませるものがある。読後もチェーホフのようなドンヨリした感じもなく、サキのようにイジワルな感じもない。人間くさいなという感じである。純愛ものや精神錯乱、男女のすれちがいなどの話が入っている。印象に残ったものは、「イス直しの女」、「初雪」、「マドモアゼル・ペルル」、「首飾り」、「ジュール叔父さん」などだ。ノルマンディー地方や雪の描写がこの短編集では多い。南仏の田園作家、ドーデーともちがう。厳しい感じがする。

  • 重くないという噂だったけど、いざ読んでみるとサラリとした文章一つ一つが鈍器のような破壊力を持って僕の心を揺さぶる。一気に読み切ることができない、良質な短編たち

  • モーパッサンといえば【脂肪の塊】しか読んでいなかった。
    かなり皮肉の効いた、とても現代的な視点を持っている作家だなァ~という記憶が残っている。

    短編の名手ということを初めて知った。300以上の短編を書き残したとのこと。

    作家活動は10年と短く、最後は精神に異常をきたしたらしい。

    いろいろな作家の短編集を読んだが、この作家のはどれも印象に強く残る。
    短編集というと、大部分の物語が忘れ去られるものなのだが、なぜなんだろう?

    人間への洞察力が鋭いからだろうか?
    プロットが上手く出来ているからだろうか?

    ぼくは、やはり人間への愛が強いからだと思う。
    愛というのが曖昧なら、人間への慈しみと言い換えたほうがいいかも。

    O・ヘンリーも短編の名手として知られているが、彼も人間への愛がベースにあると思う。

  • モーパッサンには、幻覚と、貧しい人々・女性の悲哀を描いた作品が多いです。この短編集の中では『椅子直しの女』が好き。もうものすごく情け容赦のないひどい話でしか、純愛は描けないってこと。

  • シモンのパパ
    子供の残忍さを感じ、悲しくなったし、
    フィリップの同僚がブランショットの女のことを庇うシーン「…どれほど泣いたか、神様だけがご存じだ」が心が揺れた。

    椅子直しの女
    胸が揺さぶられた。
    人を見なりで判断する人になれないと思った。人の心を見る人でありたい。心がいっぱいになった。悲しい。

    二人の友
    最初の戦争前の街のゆったりした様子が、読んでいて和む。
    その後銃殺されてしまう描写が苦しい分、ギャップを感じる。

    旅路
    最後汽車の女性が「そのお方は、そのお方は…」がグッときた。そのお方が何なのか分からぬまま終わったのが、良いような気がする。

    首飾り
    最後偽物だったのよ…と、聞いたとき、温かい気持ちになった。

    帰郷
    温かい気持ちにさせられた。帰ってきたマルタンが、静かに自分の子供を認めている様子が心を打つ。
    また、今の夫のレヴェックも、帰ってきたマルタンのことを認め、最高の酒をもてなす様子が心温まる。
    現代の自分の権利ばかり主張するものと一線を画した素晴らしいお話しだ。

    小作人
    自分のことを言われているようだ。こんなに苦しく愛したのは初めてだった。でも諦めなきゃならない。忘れなきゃいけない。わたしは見た目は元気だが、心は苦しい。この寂しくて死んでいった女の気持ちが苦しい。

  • 「水の上」と「首飾り」を読んだが、最後のオチが秀逸すぎて驚きを隠せない。途中までとても引き込まれる、そして短編なのであっという間に読み終わるので、子育て中にも最高だとても上質な短編でした。訳もとても美しく入り込めます。

  • 記録

  • 割と怖い話だった、ってのが正直なところ。

  • 椅子直しの女、ソヴァージュばあさん、マドモワゼル・ペルルがお気に入り。しかし山の宿の犬が死んだのには心が傷んだ。

  • 2021年10月17日読了。

  • モーパッサン 短編 ルノワール 表紙

    著者が省略した部分を 読み手の想像力により 埋める面白さ。物語の設定や背景がわかりやすいので想像しやすい。人間とお金、愛のテーマのほか、反戦や怪奇小説もある


    *水の上〜最後の一文だけで 老婆の人生を想像させる
    *シモンのパパ〜子供の幸せを 喜ぶ 母の姿を想像した
    *椅子直しの女〜深い愛だろうと何だろうと〜人間は自分に必要なものしか手にしない。自分の都合に合う解釈しかしない

    *田園秘話〜金持ちに養子に行き 愛のある家庭で 教育を受けたことを想像した〜教育の違いが品性の違い
    *メヌエット〜メヌエットは自分の若さの象徴→ストーリーテラーの孤独な老いへの哀しみを 想像させる

    *二人の友〜戦争が 人間の夢、希望、楽しみ、幸福を全て奪っている異常さ
    *旅路〜秘めた不倫愛と死の物語。打算的な夫婦関係と無償の不倫愛を対称的に描いている
    *ジュール伯父さん〜それまでの伯父の嘘つき人生が想像できる

    *初雪〜夫婦間のギャップに神経質になっている妻と 鈍感な夫の日常を想像できる
    *首飾り〜予想しやすい結末。虚栄心の醜さと怖さ
    *帰郷〜海の男2人の今までの厳しい日々と今後の友情が想像できる

  • 他人の人生をバッサリと切り取る鋭い観察眼。この歳になって読むからより味わい深いんだろう。社会問題。金欲。老いと死。夫婦。反戦。幻覚。

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