モーパッサン短篇選 (岩波文庫)

制作 : 高山 鉄男 
  • 岩波書店
3.73
  • (15)
  • (28)
  • (36)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 221
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255131

作品紹介・あらすじ

鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。モーパッサン(一八五〇‐一八九三)は、十九世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 重くないという噂だったけど、いざ読んでみるとサラリとした文章一つ一つが鈍器のような破壊力を持って僕の心を揺さぶる。一気に読み切ることができない、良質な短編たち

  • モーパッサン 短編 ルノワール 表紙

    著者が省略した部分を 読み手の想像力により 埋める面白さ。物語の設定や背景がわかりやすいので想像しやすい。人間とお金、愛のテーマのほか、反戦や怪奇小説もある


    *水の上〜最後の一文だけで 老婆の人生を想像させる
    *シモンのパパ〜子供の幸せを 喜ぶ 母の姿を想像した
    *椅子直しの女〜深い愛だろうと何だろうと〜人間は自分に必要なものしか手にしない。自分の都合に合う解釈しかしない

    *田園秘話〜金持ちに養子に行き 愛のある家庭で 教育を受けたことを想像した〜教育の違いが品性の違い
    *メヌエット〜メヌエットは自分の若さの象徴→ストーリーテラーの孤独な老いへの哀しみを 想像させる

    *二人の友〜戦争が 人間の夢、希望、楽しみ、幸福を全て奪っている異常さ
    *旅路〜秘めた不倫愛と死の物語。打算的な夫婦関係と無償の不倫愛を対称的に描いている
    *ジュール伯父さん〜それまでの伯父の嘘つき人生が想像できる

    *初雪〜夫婦間のギャップに神経質になっている妻と 鈍感な夫の日常を想像できる
    *首飾り〜予想しやすい結末。虚栄心の醜さと怖さ
    *帰郷〜海の男2人の今までの厳しい日々と今後の友情が想像できる

  • 他人の人生をバッサリと切り取る鋭い観察眼。この歳になって読むからより味わい深いんだろう。社会問題。金欲。老いと死。夫婦。反戦。幻覚。

  • ◎水の上 / シモンのパパ / ◎椅子直しの女 / ◎田園秘話 / メヌエット / ◎二人の友 / 旅路 / ◎ジュール伯父さん / ◎初雪 / ◎首飾り / ◎ソバージュばあさん / 帰郷 / ◎マドモワゼル・ペルル / ◎山の宿 / 小作人


    以下引用。

     女は、ふたたび微笑み、
    「ああ、わたしはなんて幸せなのかしら」とつぶやくように言った。
     とはいうものの、女は自分がまもなく死ぬ身で、今度の春を見ることもあるまいと知っていた。今、女の前を通り過ぎて行く人は、一年後にも、同じ遊歩道にやって来て、この温暖な土地の暖かい空気を吸うだろう。少しだけ大きくなった子供たちを連れ、今と同じように、希望と情熱と幸福感で胸をふくらませていることだろう。しかし、今のところはまだ彼女のものであるあわれな肉体は、カシの木の棺のなかで腐り、かねて経帷子にと決めてある絹の衣のなかには、ただ自分の骨があるばかりだろうと、この女にはわかっていた。(「初雪」p.131)

     しがない月給とりの家庭などに、運命の神様が間違えたとしか思われないほど美しく、あだっぽい娘が生まれたりするものだ。彼女もそういう娘の一人だった。(「首飾り」pp.149-150)

    農民というものは、愛国心ゆえに敵国を憎んだりはしないものだ。こういう感情は、上流階級のものなんだね。貧しい人々は、貧しいがゆえにもっとも高い代価を払わせられ、新規の負担が発生すると必ずそれに苦しめられるのだ。人口の大部分を占めるのは、こういう貧しい人々であり、大量に殺戮されるのも彼らなら、肉弾となって戦場の露と消えるのも彼らなのだ。弱いもの、力なきものであるがゆえに、戦争の恐るべき悲惨にもっとも苦しまねばならないのは貧しい人々なのだ。彼ら貧しい人々には、好戦的な感情などほとんど理解できないし、苛烈な功名心とか、六ヶ月もしないうちに、敗戦国はもちろんのこと、戦勝国も消耗しつくしてしまう、いわゆる政治的策謀など、とんと理解できないのさ。(「ソヴァージュばあさん」p.175)


    一八八〇年に、中編小説「脂肪の塊」によって、文壇に登場、一八九一年に精神錯乱の兆候を示すまで、わずか十年ほどの文筆活動によって、六つの長編小説、三百あまりの短篇、さらにまた三篇の紀行文を遺し、一八九三年、パリで死んだ。(「解説」p.281)

     モーパッサンの短篇は、おおむね日刊新聞に発表された。(中略)モーパッサンは、これらの新聞にほとんど毎週のように短篇小説や、いわゆる時評を発表した。当時の新聞は、現在と異なり、第一面に有名な文学者の短篇や時評を載せたもので、どの新聞も、魅力的な短文の書ける文学者を何人もかかえていた。モーパッサンもそういう有能なジャーナリストの一人だったのである。(pp.281-282)

     新聞に発表されたことから、モーパッサンの短篇の最大の特色ともいうべき簡潔さが生まれた。(p.282)
     
     モーパッサンの短篇のもう一つの特色は、しばしば語り手がいて、この語り手の存在や、物語がなされた場所が、小説の雰囲気づくりに役だっていることである。(中略)いずれの場合にも、物語の舞台となったその場所で、語り手は事件の顛末を語って聞かせている。それが、作品になまなましい現実感を与えていることは言うまでもない。(pp.282-283)

     語り手のいる短篇は「マドモワゼル・ペルル」のように、「私」が語り手になっている場合も含めると、約百五十を数える。すなわちモーパッサンの短篇の半分は、語り手がいる短篇であり、残りの半分は、「シモンのパパ」や「山の宿」のように、はじめから三人称で書かれた話である。(p.283)

    (引用者注:短篇「首飾り」は)しかし、技法上成功しているだけに、かえって人工的な感じを受けることもたしかで、夏目漱石は、この短篇の結末について次のように述べている(「文芸の哲学的基礎」)。
     「最後の一句は大に振ったもので、定めてモーパッサン氏の大得意な所と思われます。軽薄な巴里の社会の真相はさもこうあるだろう穿ち得て妙だと手を拍ち度(たく)なるかも知れません。そこが此作の理想のある所で、そこが此作の不愉快な所であります」
     なぜ不愉快かといえば、苦労して借金を返したけなげな女の人生を、「妙に穿った軽薄な落ち」で否定し、善の理想を害しているからだ、と漱石は論じている。(pp.289-290)

  • 『モーパッサン短編集』岩波文庫、15篇の短編が入っている。モーパッサンは着実という感じで、ミステリーもゴーストもないが、人間の心理を描いて、とても読ませるものがある。読後もチェーホフのようなドンヨリした感じもなく、サキのようにイジワルな感じもない。人間くさいなという感じである。純愛ものや精神錯乱、男女のすれちがいなどの話が入っている。印象に残ったものは、「イス直しの女」、「初雪」、「マドモアゼル・ペルル」、「首飾り」、「ジュール叔父さん」などだ。ノルマンディー地方や雪の描写がこの短編集では多い。南仏の田園作家、ドーデーともちがう。厳しい感じがする。

  • 贅肉をこれでもかというほど削ぎ落とした短編集。新聞のベタ記事を読んでいるのと似た感覚。何も考えずに読み流すこともできるし、いつまでもストーリーを反芻することもできる。

  • 「首飾り」が好き。

  • 行き詰ると読む一冊。難しくなく、でも道徳的でなく、とても人間くさいストーリー。昨今の小説は複雑だったり難しかったりするけれど、シンプルで面白いものは力強いなと思う。

  • 「女の一生」書いたひとって習ってその雰囲気からどんだけ暗いんだろうと思ってたけど,この本では意外にそうでもなかった。

    暗いけど救いようのない暗さとはまた違う感じ。リアリズム,っていうのかな。暗くないものもあったし。
    『シモンのパパ』はああよかったなって思えるお話。
    短編ひとつひとつも短いから結構さらりと読める。
    でも重く読もうと思えば読めるものもある。人間の性質とかについて考えさせられたり。
    バリエーション豊富。で,文章も上手だったと思う。

    『首飾り』はラジオの英語講座できいたことあったのを読んでる途中に思い出してちょっとショック。

    個人的には結構おすすめ。
    モオパッサンは短編300とか書いてるらしくて,もっと読みたいと思った。

  • 13/08/25 期待したほどではなかった。

全27件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フランス人。1850〜93年。母の友人フローベールにすすめられ文筆に転向。最初の成功作『脂肪の塊』(1880)で一躍新聞小説の寵児となる。短編約三○○、長編数作を書く。長編に『女の一生』(1883)『ベラミ』(1885)。短編小説『幻覚』や『恐怖』は戦慄させるほどの正確さで狂気や恐怖を描写し、この狂気の兆候が1892年発病となり、精神病院でなくなる。

「2004年 『モーパッサン残酷短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

モーパッサンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フランツ・カフカ
ヘミングウェイ
ツルゲーネフ
モーパッサン
ドストエフスキー
J.L. ボルヘ...
遠藤 周作
ボードレール
梶井 基次郎
谷崎 潤一郎
有効な右矢印 無効な右矢印

モーパッサン短篇選 (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする