モーパッサン短篇選 (岩波文庫)

制作 : 高山 鉄男 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255131

作品紹介・あらすじ

鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。モーパッサン(一八五〇‐一八九三)は、十九世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 重くないという噂だったけど、いざ読んでみるとサラリとした文章一つ一つが鈍器のような破壊力を持って僕の心を揺さぶる。一気に読み切ることができない、良質な短編たち

  • 他人の人生をバッサリと切り取る鋭い観察眼。この歳になって読むからより味わい深いんだろう。社会問題。金欲。老いと死。夫婦。反戦。幻覚。

  • ◎水の上 / シモンのパパ / ◎椅子直しの女 / ◎田園秘話 / メヌエット / ◎二人の友 / 旅路 / ◎ジュール伯父さん / ◎初雪 / ◎首飾り / ◎ソバージュばあさん / 帰郷 / ◎マドモワゼル・ペルル / ◎山の宿 / 小作人


    以下引用。

     女は、ふたたび微笑み、
    「ああ、わたしはなんて幸せなのかしら」とつぶやくように言った。
     とはいうものの、女は自分がまもなく死ぬ身で、今度の春を見ることもあるまいと知っていた。今、女の前を通り過ぎて行く人は、一年後にも、同じ遊歩道にやって来て、この温暖な土地の暖かい空気を吸うだろう。少しだけ大きくなった子供たちを連れ、今と同じように、希望と情熱と幸福感で胸をふくらませていることだろう。しかし、今のところはまだ彼女のものであるあわれな肉体は、カシの木の棺のなかで腐り、かねて経帷子にと決めてある絹の衣のなかには、ただ自分の骨があるばかりだろうと、この女にはわかっていた。(「初雪」p.131)

     しがない月給とりの家庭などに、運命の神様が間違えたとしか思われないほど美しく、あだっぽい娘が生まれたりするものだ。彼女もそういう娘の一人だった。(「首飾り」pp.149-150)

    農民というものは、愛国心ゆえに敵国を憎んだりはしないものだ。こういう感情は、上流階級のものなんだね。貧しい人々は、貧しいがゆえにもっとも高い代価を払わせられ、新規の負担が発生すると必ずそれに苦しめられるのだ。人口の大部分を占めるのは、こういう貧しい人々であり、大量に殺戮されるのも彼らなら、肉弾となって戦場の露と消えるのも彼らなのだ。弱いもの、力なきものであるがゆえに、戦争の恐るべき悲惨にもっとも苦しまねばならないのは貧しい人々なのだ。彼ら貧しい人々には、好戦的な感情などほとんど理解できないし、苛烈な功名心とか、六ヶ月もしないうちに、敗戦国はもちろんのこと、戦勝国も消耗しつくしてしまう、いわゆる政治的策謀など、とんと理解できないのさ。(「ソヴァージュばあさん」p.175)


    一八八〇年に、中編小説「脂肪の塊」によって、文壇に登場、一八九一年に精神錯乱の兆候を示すまで、わずか十年ほどの文筆活動によって、六つの長編小説、三百あまりの短篇、さらにまた三篇の紀行文を遺し、一八九三年、パリで死んだ。(「解説」p.281)

     モーパッサンの短篇は、おおむね日刊新聞に発表された。(中略)モーパッサンは、これらの新聞にほとんど毎週のように短篇小説や、いわゆる時評を発表した。当時の新聞は、現在と異なり、第一面に有名な文学者の短篇や時評を載せたもので、どの新聞も、魅力的な短文の書ける文学者を何人もかかえていた。モーパッサンもそういう有能なジャーナリストの一人だったのである。(pp.281-282)

     新聞に発表されたことから、モーパッサンの短篇の最大の特色ともいうべき簡潔さが生まれた。(p.282)
     
     モーパッサンの短篇のもう一つの特色は、しばしば語り手がいて、この語り手の存在や、物語がなされた場所が、小説の雰囲気づくりに役だっていることである。(中略)いずれの場合にも、物語の舞台となったその場所で、語り手は事件の顛末を語って聞かせている。それが、作品になまなましい現実感を与えていることは言うまでもない。(pp.282-283)

     語り手のいる短篇は「マドモワゼル・ペルル」のように、「私」が語り手になっている場合も含めると、約百五十を数える。すなわちモーパッサンの短篇の半分は、語り手がいる短篇であり、残りの半分は、「シモンのパパ」や「山の宿」のように、はじめから三人称で書かれた話である。(p.283)

    (引用者注:短篇「首飾り」は)しかし、技法上成功しているだけに、かえって人工的な感じを受けることもたしかで、夏目漱石は、この短篇の結末について次のように述べている(「文芸の哲学的基礎」)。
     「最後の一句は大に振ったもので、定めてモーパッサン氏の大得意な所と思われます。軽薄な巴里の社会の真相はさもこうあるだろう穿ち得て妙だと手を拍ち度(たく)なるかも知れません。そこが此作の理想のある所で、そこが此作の不愉快な所であります」
     なぜ不愉快かといえば、苦労して借金を返したけなげな女の人生を、「妙に穿った軽薄な落ち」で否定し、善の理想を害しているからだ、と漱石は論じている。(pp.289-290)

  • 『モーパッサン短編集』岩波文庫、15篇の短編が入っている。モーパッサンは着実という感じで、ミステリーもゴーストもないが、人間の心理を描いて、とても読ませるものがある。読後もチェーホフのようなドンヨリした感じもなく、サキのようにイジワルな感じもない。人間くさいなという感じである。純愛ものや精神錯乱、男女のすれちがいなどの話が入っている。印象に残ったものは、「イス直しの女」、「初雪」、「マドモアゼル・ペルル」、「首飾り」、「ジュール叔父さん」などだ。ノルマンディー地方や雪の描写がこの短編集では多い。南仏の田園作家、ドーデーともちがう。厳しい感じがする。

  • 贅肉をこれでもかというほど削ぎ落とした短編集。新聞のベタ記事を読んでいるのと似た感覚。何も考えずに読み流すこともできるし、いつまでもストーリーを反芻することもできる。

  • 「首飾り」が好き。

  • 行き詰ると読む一冊。難しくなく、でも道徳的でなく、とても人間くさいストーリー。昨今の小説は複雑だったり難しかったりするけれど、シンプルで面白いものは力強いなと思う。

  • 「女の一生」書いたひとって習ってその雰囲気からどんだけ暗いんだろうと思ってたけど,この本では意外にそうでもなかった。

    暗いけど救いようのない暗さとはまた違う感じ。リアリズム,っていうのかな。暗くないものもあったし。
    『シモンのパパ』はああよかったなって思えるお話。
    短編ひとつひとつも短いから結構さらりと読める。
    でも重く読もうと思えば読めるものもある。人間の性質とかについて考えさせられたり。
    バリエーション豊富。で,文章も上手だったと思う。

    『首飾り』はラジオの英語講座できいたことあったのを読んでる途中に思い出してちょっとショック。

    個人的には結構おすすめ。
    モオパッサンは短編300とか書いてるらしくて,もっと読みたいと思った。

  • 13/08/25 期待したほどではなかった。

  • 短篇集なので読みやすいかと思い手に取ったが
    あっさり軽く読めるという類のものではなかった。
    けして重々しくはないものの、切なく苦しく
    透明感のある物語ばかりで
    当時の社会情勢なども鑑みると色々と思うところのある話ばかり。
    興味深く読み終えた。

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