モーパッサン短篇選 (岩波文庫 赤 551-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255131

作品紹介・あらすじ

鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。モーパッサン(一八五〇‐一八九三)は、十九世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。

感想・レビュー・書評

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  • モーパッサンは、300を超える短篇を書きましたが、その中から15篇を訳者が厳選収録したもの。
    特に良かったものを以下に。

    『シモンのパパ』
    母と二人暮らしのシモンという子供が、父がいないことでイジメに遭っており、絶望して死を考えていたところ、鍛冶屋の職人に助けられ…心温まる、いい話でした。

    『田園秘話』
    隣り合う二軒の百姓家で、どちらも4人の子供がおり、貧しいながらも仲良くくらしていました。ある時、裕福ながら子供のいない夫妻がやってきて、遊んでいる子を気に入り、毎月多額のお金を終生贈るから、養子にもらえないかと持ちかけます。一軒の家は断り、もう一軒は承諾します。その顛末は…本当の幸せとは何かと考えさせられる、教訓めいた話でした。

    『二人の友』
    普仏戦争で包囲されているパリの道で、時計屋の店主がかつての釣り仲間と偶然再会します。昔話に花咲かせるうちに、久々に一緒に釣りに行くことにしましたが、川辺は敵との最前線。果たして二人は…気持ちはわかりますが、戦争中なんですよね。

    『ジュール伯父さん』
    『メゾン テリエ』での感想と同様。新訳で読みやすかったです。

    『首飾り』
    ある日、着飾るゆとりもない貧しい夫婦が、大臣宅の夜会に招待されます。なけなしのお金を夫に払ってもらい、ドレスを購入したものの、装飾品がないために知人からダイヤの首飾りを借りて参加します。ところが、その夜会から帰ってくると、ダイヤの首飾りがありません…教訓めいていて、ちょっとしたどんでん返しのお話。解説に、夏目漱石が「不愉快」と評していたことが書かれていて、なかなか興味深かったです。

    『帰郷』
    海辺の漁村で暮らす貧しい夫婦には、5人の子供たちがいました。上の二人は再婚の妻の連れ子で、夫との間の子供は3人です。そんな家庭に、ある日から一人の浮浪者が寄りつくようになります…悲惨な運命にもめげない強さを感じました。最後が爽やかで好きです。

    『マドモワゼル・ペルル』
    ある家庭でお手伝いをしていながら、家族同然に暮らしている老嬢。そんな彼女には、ある秘密が…ちょっと悲しい恋物語。

    『山の宿』
    道が閉ざされてしまう、冬季の山の宿で春まで留守を預かって過ごす、二人の男の物語。ある日、老ガイドが一人で猟に出かけたまま、その日に帰ってきませんでした。若いガイドは、探しに行けども見つけることができません。絶望と恐怖のうちに、時は刻々と過ぎてゆき…恐怖は狂気に変える。ちょっとしたホラーですね。

    他の短篇も良かったです。タイトルだけ列記。
    『水の上』『椅子直しの女』『メヌエット』『旅路』『初雪』『ソヴァージュばあさん』『小作人』

    追記:
    表紙はルノアールの『小舟』。『水の上』の元のタイトルは『小舟に乗って』です。解説に著者がボート漕ぎに熱中していたことが書かれています。
    表紙と合っていると書きたいところですが、その内容はちょっとしたホラーでした。

  • 穏やかな静かな語り口で紡がれる物語は、その語り口とは裏腹に必ずしも心地よいものばかりではない。

    バッドエンドというか皮肉な結果に終わる作品も多い。特に「山の音」の世界は完全にキングの「シャイニング」。20ページ足らずの分量に、文庫本2冊の「シャイニング」の世界が凝縮されている。

    その他にも、戦争の悲惨さ無常さを説いた作品や、当時の世相を反映したと思われる私生児をモチーフにしたものなど、なかなか考えさせられる作品が多い。

    訳がいいのだと思うが、当時のフランスの田舎の情景が良く目に浮かびます。

  • 読んだのは二度目。情景が目の前に広がる。
    二人の友、ソヴァージュ婆さん、2つの反戦の話は今読むと本当にやりきれない。淡々と戦争が人の情けも優しさも吹き飛ばして無感覚にしてしまう様子を書いている。
    旅路とマドモワゼル・ペルル、純愛の話が好き。
    その他も胸がゾワッとする、印象深い話ばかり。

  • モーパッサン(1850-1893)は、19世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に300篇以上にも及ぶ短篇を書いたそうです。本書はその中から厳選された15篇が収録されていますが、どれも面白く読めました。
    語り口の上手さももちろん良かったのですが、個人的にはストーリーの巧みさを堪能できました。同一作家の短編集だとどうしても結末の雰囲気が読めてしまうところがあったりするんですけど、本作はバッドエンド、サプライズあり、シュールに締めたものなど実にさまざまで、オチが予想できないものばかりでした。
    全体としては戦争に絡んだ悲しいお話がやや多かったように思いますが、一番楽しめたのはやっぱり「首飾り」かな。悲劇と喜劇は紙一重っていう意味で。現代ではありふれた手法ではありますが、発表当時は画期的だったんじゃないかなあと想像します。
    一篇一篇が短いので、あまり時間がない時でもとっかかりやすいところもいいですね。

  • 優美でたおやかな文体と、やさしさ溢れる丁寧な人物描写が読んでいて心地よい。19世期フランスにおける人々の暮らしや社会通念に触れた心地すら味わえる、そんな肉感のある作品ばかりで面白かった。

  • 重くないという噂だったけど、いざ読んでみるとサラリとした文章一つ一つが鈍器のような破壊力を持って僕の心を揺さぶる。一気に読み切ることができない、良質な短編たち

  • 記録

  • 割と怖い話だった、ってのが正直なところ。

  • 椅子直しの女、ソヴァージュばあさん、マドモワゼル・ペルルがお気に入り。しかし山の宿の犬が死んだのには心が傷んだ。

  • 2021年10月17日読了。

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