わたしたちの心 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2019年9月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784003255148

作品紹介・あらすじ

「彼女に恋していたから、彼は苦痛だった」――裕福な趣味人マリオルは、心ならずもパリ社交界の女王ビュルヌ夫人に魅惑される。マリオルの繊細な愛情を喜びながらも、夫人がなにより愛するのは自らとその自由……。独立心旺盛な女と、女に振り回される男のずるさ、すれ違う心の機微を、死期の迫った文豪が陰影豊かに描く。

みんなの感想まとめ

恋愛の複雑さと人間関係の微妙な機微を描いた作品で、裕福な趣味人がパリ社交界の女王に魅了されながらも、その独立した女性に翻弄される様子が描かれています。男は女の虚栄心に気づき、自らの愚かさを悟る過程が印...

感想・レビュー・書評

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  • 裕福な階級のマリオルが年下のビュルヌ夫人に美しいわたくしのための文化人・教養人サークルに入れられた上に魅了され恋焦がれる話。
    つまりビュルヌ夫人は今で言う◯◯サーの姫でございました。本当に。

    マリオルも最初はみんな骨抜きだけど俺は騙されない…な感じでいたのに結局ビュルヌ夫人に魅了されちゃって、なんならなんで俺の思い通りにならないんだ!こんなにも俺は思っているのに…!!!となる。
    ビュルヌ夫人が最悪な女だと思っているならさっさと見切りをつけて離れればいいのになかなかできずにうだうだしているのはちょっとリアルかも。
    あと、おまいらを足して二で割った女がいたらいいのに〜な思考も面白かった。

    でもわかるよ〜。夫人も実際厄介な性格だと思ったし、そういう人を好きになると苦労しますわよね。
    ただ自分がしてやられたからと言って他の人を酷く扱うのは本当に良くないと思った!!
    結局ビュルヌ夫人もマリオルも心が美しくないのかもしれないね〜。
    でもまさに題名わたしたちの心に違わぬ作品だったな〜。

    マリオルの別荘にヘリオトロープが植えられていて、ギリシャ神話にはアポロンに恋焦がれたクリュティエがヘリオトロープになる話があるのでおお〜!?と思ったりしました。もし違ってたら教えていただけるとhappiness。

  • 恋愛をゲームのように捉える女に失望、敗北し、街を去る一人の男。。。体裁はそうだが、作者の意図としては、残酷で愚かで不感症で不幸で哀れな女、というディスり。紙ヤスリのようにザリザリくるのよ。ある日の逢引で女は言う。寒いし体調が心配なので今日はもう帰らせて。男は悟る。いーや、こいつは見せびらかしたいもの、ドレスや虚栄などのためなら、どんな寒空でも天気でもしゃしゃってくる奴だ、俺の価値など最初からないんだ、と自分の愚かさに気づく。愚かさに気づく賢さ。この人は助かったのだ。

  • 長編。社交界の夫人に翻弄される男の話。
    衝撃的などんでん返しこそないが、最後のシーンの男を見て、いやお前もそうなるんかいと突っ込みたくなる。
    日本文学でもとりわけて自然主義文学が好きなのはきっとモーパッサンのおかげ。

  •  1890年作。モーパッサンの遺作だという。
     吉田精一が戦後の永井荷風の短編について、「全くモーパッサンの骨法を以て終戦後の世相を描いたもの」と評したことを知り、モーパッサンなんて三十数年前、高校時代に新潮文庫のを(古本含めて)数冊読んだきりで、どんな感じだったかな? と思い、近年邦訳の出たこの長編を買ってみたのである。しかし吉田精一の言っていたのはきっとモーパッサンの短編のことなので、素直に新潮文庫の短編集を読み返せばよかったのだろう。
     しかし、本書はとても面白かった。パリの社交界における若い男女の恋愛ゲームを描いて、なかなかに深みのある心理描写が充実しており、心理小説として優れている。
     読んでみて、モーパッサンにはこんなに風景描写があったっけ? と思うくらい、情景描写が丁寧に展開されている。短編ではそんなに風景について長々とは書かないだろうから、これは長編での特徴かもしれない。
     恋愛ストーリーとしては、この矛盾状態はこのあとどうなるの? と気になるような終わり方で、幸せなハッピーエンドではない。いかにもよじれてしまった男性の恋愛心理を浮き彫りにしているあたりが、モーパッサンっぽいのかもしれない。
     モーパッサンの短編集なども読み返してみたい。

  • 笠間直穂子(翻訳):國學院大學外国語文化学科准教授。

    ※國學院大學図書館
     https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/BB01673953

  • 好き!
    これを読む前に読んだラディゲの『ドルジェル伯の舞踏会』と比べてしまうが、ラディゲの小説に比べて三人称の語りが受け入れやすい。
    三人称ではあるが、ビュルヌ夫人やマリオル自身が思っていることを、語ってくれている三人称であり三人称の語りが強すぎない、ドルジェル伯では三人称が人の心をわかったように説明するうるさい人という感じがする。
    私の好みは置いておいて、ドルジェル伯では、マオとフランソワが自身の思いを表現したようなところがあまりないので読者は登場人物に引き込まれにくいのではないか?こういう三人称を用いた結果。

    人が人を好きになって、互いの関係と各々について描かれる小説を続けて読んで疲れた。
    それ以外のものとして『むらぎも』中野重治を思い浮かべる。
    もっともっと独特な言葉の連なりで表現された小説を読みたい。
    古井由吉『杳子』、中野重治『むらぎも』のような文体、石原吉郎『望郷と海』のような想像を超える体験、アニーエルノー『戸外の日記』のような固有名詞の出てくる冷たい文、chim↑pomエリイ『oh my god』新潮 のエリイの既成概念を覆すような考え感覚、そういった未だ知らぬ表現を感じたい知りたい。
    そういう表現は、現代にあるのですか?、近代以前にあるのですか? 私は求めています。
    If you know , please tell me

    マリオルが自分とビュルヌ夫人に正直に向き合うと先の暗い苦悩が続く。
    どうしようもないのなら、諦めて、違う道を探した方が明るく脳が活発になるのではないか?
    しかし諦めるのは、自分の本当の欲望を偽ること?
    マリオルのように苦悩してしまったら、人生や生活がもうお終いのようじゃないか。
    苦悩とともに生きていくとしても、他の人を求める気にもなれないような、それほどに好きな人なら。

    もっと明るい小説にできないのかな?
    明るさとは、エネルギー。

    音楽のようにエネルギーが伝わってくるような小説があればいいな。

  • 原書名:NOTRE CŒUR

    著者:ギ・ド・モーパッサン(Maupassant, Guy de, 1850-1893、フランス、小説家)
    訳者:笠間直穂子(フランス文学)

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著者プロフィール

1972年、宮崎県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。現在、国学院大学文学部教授。フランス語近現代文学研究、仏日文芸翻訳。
著書に、『鳥たちのフランス文学』(共著、幻戯書房、2024)ほか、訳書に、ジャン・フランソワ・ビレテール『北京での出会い もうひとりのオーレリア』(みすず書房、2022)、C・F・ラミュ『詩人の訪れ 他三篇』(幻戯書房、2022)、マリー・ンディアイ『心ふさがれて』(インスクリプト、第15回日仏翻訳文学賞、2008)など多数がある。

「2024年 『第三風景宣言(アンカット版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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