ジャン・クリストフ 1 (岩波文庫 赤 555-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255513

作品紹介・あらすじ

人間として、芸術家として、生涯不屈の気魄をもって真実を追求しつづける音楽家ジャン・クリストフ。傷つきつつも闘いをやめない彼の姿は、時代と国境をこえ、人びとに勇気と指針を与えてきた。偉大なヒューマニスト作家ロマン・ローランの不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 「神様のカルテ3」で、東西さんと、しんちゃんの所で出てきた、フランス文学?「ジャン・クリストフ」1巻目を読んでみました。

     原作は、1903年から1912年に書かれたもの。著者であるロマン・ラマンは、この「ジャン・クリストフ」でノーベル文学賞を受賞しているそうです。

     私が読んだ岩波文庫版は、1986年に出されたものですが、なかなか言葉が難しい。まぁ、原作が100年以上も前のものなのでしかたないですね。現代語訳では、物語の重さが表現できないでしょう。

     ストーリーは、貧しい音楽家に生まれた少年が、作曲家として大成する物語。第1巻は生まれてから青年期までを描いています。
    一字一句を舐めるように読んだわけではありませんが、一読にて理解できるものではないですね。でも、魅力がある。単純に「面白い!」と言い切れない部分がある。
     恐らくは彼の苦悩に満ちた生き方に、誰もが相通ずるものがあるでしょう。正義や宗教、恋や愛。道徳や哲学。生きて行く上で、人間であるが故の葛藤が息苦しく苦しく描かれています。

     特筆して、叔父のゴットーフリートの言葉は、クリストフと同じように読者の心にも突き刺さる。
    こんな本を傍らに持ち、100年以上前の著書から発せられるエネルギーを真摯に受け止め、生きて行く上でのエネルギーにしたい。

    久しぶりに、妙薬にような本に出会い、苦々しい気持ちです。でも嫌いでは無い。

  • 望む通りに事ができるものではない。望むと生きるは別である。肝心なことは、望み生きることに飽きないことだ。▼誤ることがないのは何もなさない者である。生きた真理への誤謬は、死んだ真理よりも豊穣である。▼すべてを所有している時に社会を否定するのは、最上の贅沢である。ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』1904

    英雄は自分のできることをする。凡人はできることをしないで、できもしないことを望んでばかりいる。ロマン・ロラン『魅せられたる魂』1922

    発見の旅とは新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことだ。▼精神を鍛えるのは、幸福ではなく心の痛みである。▼安定は恋を殺し、不安は恋をかきたてる。プルースト『失われた時を求めて』1919

    苦悩を徹底的に経験することによってのみ、苦悩は癒される。プルースト

    ********************

    ある人間を憎むとき、私たちは自分自身の中に巣くっている何かをその人間の像の中で憎んでいる。自分自身の中にないものは、私たちを興奮させはしない。▼鳥は卵から無理に出ようとする。卵は世界だ。生まれようとする者は、ひとつの世界を破壊しなければならない。ヘルマン・ヘッセ『デミアン』1919

    死・病気への興味は、生への興味の一形態にほかならない。▼馬鹿にも様々な種類があって、利口は馬鹿のうちのあまり感心しない一種である。トマス・マン『魔の山』1924

    他人の感情生活に想像力を働かせる。察知する。トマス・マン『若いヨゼフ』

    人を不安にするのは、事柄そのものではなく、それに関する人の考えである。▼苦しみは人間を強くするか、打ち砕くかである。その人の素質によってどちらかになる。▼過度に謙遜する人を真に受けてはいけない。とくに自分で自分を皮肉るような態度を信用してはいけない。その背後には強烈な虚栄心と名誉心が潜んでいる。▼高慢は常に破滅の一歩手前で現れる。高慢になる人は、もう勝負に負けている。カール・ヒルティ『幸福論』1891

    苦難はたいてい未来の幸福を意味し、それを準備してくれるものであるから、私はそうした経験を通じて、苦難のときには希望を抱くようになり、逆にあまり大きな幸福に対しては疑念を抱くようになった。カール・ヒルティ『眠られぬ夜のために』1901

    歓びは多くの苦しみを耐え忍んできた人々のみが知る。その他の人々は単なる快楽を知っているにすぎない。カール・ヒルティ『新書簡』

    大文字ばかりで印刷された書物は読みづらい。日曜日ばかりの人生もそれと同じである。▼人生は一冊の書物に似ている。愚者はそれをペラペラとめくっていくが、賢者はそれを丹念に読む。ジャン・パウル『角笛と横笛』

    称賛されたときではなく、叱られたときに謙虚さを失わない人は、真に謙虚である。ジャン・パウル(1763-1825) ※ドイツ人

    純粋な信念の人、宗教に夢中になる人、世界を変革・改善しようとする人。高い志にもかかわらず、自分でも嫌っている殺戮と惨禍を引き起こすのはこういう人たちである。シュテファン・ツワイク『ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像』

    愛されるとは亡びることであり、愛するとは亡びないことである。ライナー・リルケ『マルテの手記』1910 ※デンマーク

    人間は、すべての生命を尊び、守る責任を負っている。シュヴァイツァー『文化と倫理』

    ********************

    初恋を語る詩人は多いが、その後の恋を語る詩人が少ないのはなぜだろう。ジョージ・エリオット『アダム・ビード』1859 ※女性

    悪いことが起こると強く信じれば、それは起こらずにすむという、誰にでも染み付いている迷信。ジョージ・エリオット『サイラス・マーナー』1861

    結婚を尻込みする人間は戦場から逃亡する兵士である。▼最上の男は独身者の中にいる。最上の女は既婚者の中にいる。ロバート・ルイス・スティーヴンソン『若い人々のために』1883

    それは穏やかで平安に満ちた夏の風景だった。夢のように美しく、日曜日のようにもの寂しくひっそりとしていた。マーク・トウェイン『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』1889

    失敗をゆるすのは成功をゆるすよりもはるかにたやすい。チャールズ・ウォーナー『小さな旅』

    ユーモアの利点は嘲(あざけ)りの笑で運命を平然と無視できることだ。ジョージ・ギッシング『三文文士』1891

    絶望には独特の静けさがある。ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』1897

    狂人とは理性を失った者ではない。理性以外のあらゆるものを失った者である。正統とは正気であり、荒れ狂って疾走する馬を巧みに操る人の平衡である。▼見知らぬ国へ行く魅惑に満ちた恐れ。故国に帰る懐かしい安堵。▼人々はローマが偉大であるからローマを愛したのではない。ローマは人々が愛したからこそ偉大になったのだ。ギルバート・チェスタトン『正統とは何か』1908

    自殺が罪悪であるのは、あとに残されるものの感情を顧みないからである。フォースター『ハワーズ・エンド』1910

    若さの唯一の欠点はあまりに早く歳をとってしまうことだ。アガサ・クリスティ『秘密機関』1922

  • 音楽家の生涯を描く物語という心構えで読み始めた。
    ところが。思いがけず、男女の心模様をドロドロに描き込んでいたりして、意外の感しきり。
    男と女の真理のやりとり、機微のようなものを描いて巧みである。
    特に、本巻第1分冊の後半、アーダの女の情念の世界と、
    それに微妙にかみ合わないクリストフとの関係を描いていて秀逸。

    ドイツのライン川沿いの小さな町で生まれたジャン・クリストフの半生を描くらしい大河小説。
    偉大な音楽家への歩みを描くようで、ベートーヴェンをモデルにしたとも言われているそうだ。
    岩波文庫の第1巻では、少年期から青年期を描く。
    第1巻(第1章)は6歳くらいの幼年時代から語り起こす。「曙」と題されている通り、自我が固まっていなくて、自分がどういう人間なのか輪郭がぼやけていて、「曙」というか冥い世界に生きている如し、である。
    飲んだくれで生活力の無いダメ親父の一家で、生活は困窮。それでも、祖父も父も音楽家の家。クリストフの才能を見出した父は、幼い彼に無理矢理ピアノを教えはじめ、嫌がる彼に毎日長時間、演奏を教え込む。
    音楽が苦痛で仕方ないクリストフだったが、それでも、いつしか音楽によって世界の見え方が開けてくる。まさに冥から曙へ、という様相である。自然の輝き、雨音や鳥のさえずりを、豊饒な音のきらめきとして描いてゆく。この表現の部分は、他であまり読んだことがない。音楽小説の趣があり、新鮮な印象を受けた。

    クリストフは、ほどなく、地方の宮廷で演奏する宮廷音楽家の職を得、一方で、ピアノ教授の仕事も生業とする。だが、この「第1分冊」540頁の後半は、そうした音楽家としての歩みはそこそこに、女性との出会いがこってりと描かれていく。隣の邸宅に越してきた貴族の娘ミンナ(交際を知った母から、身分違いだと仲を引き裂かれてお別れとなる)。父の死後、母とふたりで転居した下宿先で出会った若き寡婦ザビーネ(クリストフが演奏旅行で遠征中に熱病で急死)。そして或る日、畑で出会った町娘アーダ(情熱的で不埒な感じの女)。
    クリストフはちょっと惚れっぽいようで、出会ってほどなくこうした女性たちに夢中になってしまうのだった。(とくにミンナと出会ったころは、クリストフもまだ15歳くらいなのだが、結婚しようとまで思い詰める。10代の恋にありがちな盲目的な熱情であることよ…)
    この岩波文庫第1分冊の最終盤、クリストフはアーダとも別れる。ざっくり言えばその「失恋の痛手」のため、クリストフは昏い世界に陥る。だが、この暗転転落の後ほどなく、クリストフの世界の見え方が刷新される。彼は音楽創作の大きな活力を得るのだった。

    ちなみに、クリストフは、 決して立派な人格を備えた若者というわけではなく、価値観は偏狭で、思い込みが激しく身勝手で、怒りっぽい。かくも不完全な人柄の主人公、これまで出会った記憶がない。

  • やっとこの本に辿り着いたという感じ。
    世界文学全集で誰もが薦める人類の必読書としてこの小説の存在があった、読んでいないことに対するコンプレックスを常に持っていた。読み出して、その意味がよくわかる。着実な構想と文章で一人の稀有な音楽家の人生を擬似体験させてくれる。生きるエネルギーに満ちたドラマで表現がとにかく丁寧で緻密である。クリストフの生い立ちや少年・青年期の心理描写と内省の世界は今でもまったく古びない。それどころか時代や環境が変わっても人間の本質は変わらないということを強く教えられる。作者の思想・発想・視点が極めてオーソドックスで気を衒わず物語は進行する。ロマン・ローランという文学者の人間性と能力、そして彼が生きた時代のヨーロッパ・社会環境を如何なく見せてくれる。解説が微に入り細にわたり丁寧なので読んでいて次の展開を期待すること頻りなのだが、とにかく安心できる心地よい読み物だ。長い旅になりそうなので気を抜かず楽しもう。

  • 人間を描くことが小説の一つのありかたなら、これは読むべきだろう。

  • 3.95/440
    『ライン河畔の貧しい音楽一家に生れた主人公ジャン・クリストフは,人間として,芸術家として,不屈の気魄をもって,生涯,真実を追求しつづける.この,傷つきつつも闘うことを決してやめない人間像は,時代と国境をこえて,人びとに勇気と指針を与えてきた.偉大なヒューマニスト作家ロマン・ローランの不朽の名作.』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b248045.html

    原書名:『Jean-Christophe』
    著者:ロマン・ロラン (Romain Rolland)
    訳者:豊島 与志雄
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎540ページ(第一巻) 全四巻

  • 100年近く前にフランス人によって書かれた作品であるにも関わらず、現代を生きる自分に響く言葉が多く残されていた。生きることは、その昔から楽しいものでも幸福なものでもなく、苦しみを伴うものである。ゴットフリート叔父さんの言葉は私によく響く。「一年後のことを、十年後のことを、考えてはいけない。今日のことを考えるんだよ。」「なぜできもしないことあくせくするんだい?できることをしなければいけない…我が成し得る程度を」

  • 音楽好きの私の為にと母が買ってきてくれた。
    高校生のころだったと思う。読み切ったはずだが殆ど記憶が薄れている。

  • 幼少期の感受性をこんな風に描写できるなんて。
    自分の当時の感情をちょっとだけ思い出した。

  • 1巻だけしか読めなかった。

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著者プロフィール

1866年、フランスの中部クラムシーに生まれ、1944年に没する。作家、音楽史家。第一次世界大戦中は反戦論を唱え、第二次世界大戦中も反ファシズムをアピールした。文学や芸術の領域で活動するだけでなく、現代社会の不正と戦い、人権擁護と自由を獲得するために政治的・社会的論争を起こし行動した。1915年、ノーベル文学賞受賞。主な作品に、大河小説『ジャン・クリストフ』、『魅せられたる魂』をはじめ、『ベートーヴェンの生涯』や『戦いを超えて』、『インド研究』などがあり、そのほか、小説、戯曲、伝記、自伝、評論、日記、書簡などの膨大な著作がある。

「2023年 『ジャン・クリストフ物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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