- Amazon.co.jp ・本 (613ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003255537
作品紹介・あらすじ
「俺には一人の友がある!苦しいとき身を寄せられる一つの魂が!」孤独の闘いをつづけるクリストフの前に現われたのがオリヴィエだった。彼との友情を通し、クリストフは虚飾の奥に隠されたフランスの真摯な知性、敬虔な魂の存在に眼を開かれてゆく。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
フランス中西部の小都市、銀行家ジャナン家の描写から始まる。二人の恵まれた子供、美しく健康的なアントワネットと6歳年下の消極的なオリヴィエ姉弟の話、父の破産による自殺・母とパリへの夜逃げ・頼った親戚からの冷遇・母の頓死‥苦境に次ぐ苦境、アントワネットが母に代わりオリヴィエを守り育てる、弟を将来保証の官費師範学校に入れるが過労と疾病で早逝する。姉の献身は濃密な描写で深い感動と涙を誘う。彼女はクリストフにも遭遇しておりその思いを唯一メモに残し後にオリヴィエが読むことになる。
オリヴィエはクリストフと深く強い友情を育む。この小説はクリストフの物語でありながらも、オリヴィエの生い立ちをこれ程詳しく150ページにもわたって諄々と書き連ね、別の小説を読んでいるかと錯覚する程である。しかし違和感は無くこの作家らしさを痛感するだけである。
やがてオリヴィエにジャクリーヌという恋人ができ結婚し子供ができるが彼女は二人を置いて家を出る。
その間クリストフはジャーナルにも取り上げられ名を上げる。ユダヤ人のこと、ドイツ出身による差別の問題等を抱えながらも音楽の探究や芸術論に勤しむ。「貴族や一部の専門家のものではなく一般の人々と交渉する音楽」「他人に結びつく芸術」「人間の苦しみの神聖な果実としての芸術」‥これは今でも通用する。かつてクリストフからピアノを習い愛情を持ったグラチアが外交官の妻になり、彼の評判向上に寄与するが、アメリカに転居することになる。
クリストフが音楽家として生きるうえで、友情・恋愛・国籍問題・芸術論‥、時々の課題への対応が克明に描写されている。臨場感に溢れ倫理と情熱の結晶として作者の思いが見事に体現している。圧倒的な傑作としか言いようがない。四に続く。 -
この本はすごい本だ。
十年前に手にした時も、そして今も、苦しい時、悩んだ時、
「負けるな!」
と、喝を与えてくれる私の友達だ。クリストフと、オリヴィエと、そして、胸中の自分自身との対話の時間。「この一冊に、ありがとう」と言いたい私の「座右の書」。
俺には一人の友がある! 自分の遠くに、自分の近くに、常に自分のうちに、友がある。 -
文学
-
青空文庫で読んだ
-
同じアパート内の方々との思想のやり取り辺りは
どうしても読書ペースが落ちてしまいますが、
序盤のアントアネットの所や、女友達の部分は凄く面白くて、
夢中になってペエジを捲りました。
あれほどフラグが立っているムードだったので、
アントアネットと結婚とかするのかしらと思ったら、
まさかの再開すら果たせず病死…。
でもオリヴィエと出会う事で、息を吹き返す事が出来て、
本当に良かったなと思います。
最後の方のジャックリーヌが情夫と駆け落ちしてしまった際の、
クリストフとアルノー夫人のやり取りが凄く印象的です。
本当に女性って中々不幸せな生き物ですよ。
そしてついにクリストフを窮地から救った人の
正体が明らかになりましたが、
グラチアと聞いて最初誰だか思い出せませんでした(笑)。
そう云えば居ましたね。
元より思慮深い、
他の女性の様な愚かな果敢さの無い女性という印象でしたが、
更に素敵な女性に成長していて嬉しい驚きでした。 -
オリヴィエとジャンクリストフの友情は、昔ならば美しい 純粋な愛情の模範となったのかもしれない。
が、21世紀の今日から見れば あまり羨ましくない ようなものに思われる。
なので、第六章『アントアネット』の勢いに比べ、第七章『家の中』は読むのが非常に億劫であった。
が、それも320ページ目前後から、各住人がクリストフに影響を受けるあたりから、面白くなり始めた。
この小説を読んでいると、闘争心がわいてくる。自分もジャンに感化されている。