ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫 赤556-2)

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  • 岩波書店 (1965年4月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784003255629

作品紹介・あらすじ

少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(一八六六―一九四四)によるベートーヴェン賛歌。二十世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の中で、自らの理想精神が抑圧されているのを感じていた世代にとってもまた、彼の音楽は解放のことばであった。

みんなの感想まとめ

音楽の巨匠の生涯を描いたこの作品は、ベートーヴェンの苦悩と歓喜を深く掘り下げています。彼が直面した数々の試練、特に耳の病に苦しみながらも、数々の名曲を生み出した姿に感動を覚えます。感想からは、彼の人間...

感想・レビュー・書評

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  • 今、課題としているベートーヴェンのソナタを弾いていて、どうしてもその曲に宿る英気のようなものに馴染めず、私の中にはそのような活力がなく表現できない。その上、疲れ切った心身に鞭を打たれているような気までしてきて、嫌いになってしまいそう。それならば、ベートーヴェンについてもっと知るところからやってみようとこの本を手にした。もう、自分の中にないものは表現できないから憑依させてみようみたいな感覚で、、

    ベートーヴェンを崇拝しているロマン・ロランが書いたもの。最近、『ベートーヴェン捏造』という映画の話題を聞くが、この本も作者がベートーヴェンのことが好きすぎてかなり偏った描き方をしていそうだなとまず感じる。訳が古くてかなり読みづらい。表現が古すぎるせいか、どの作品のことを指しているのかわからないものがあった。調べてみたがよくわからず気になって気持ち悪い。そろそろ新訳を出してもいいのではないかと思う。

    今まで読んだことのあるベートーヴェンについての本、聴いた曲からなどで勝手に抱いていた像とかなり違った。ベートーヴェンは「徳」の人だという。
    この本のベートーヴェン像を信じて良いのなら、また新たな曲の感じ方ができそうだ。
    ベートーヴェンの(苦悩に立ち向かい、人々の苦悩をも慰めて音楽で救おう)という信念の強さは、どこから生まれるのだろう?とても不思議で立派な方だ。
    そして、改めて気づいた。芸術をするには気力体力がとても必要で、そこがないといくらイメージが湧いても表現できないということを、、あーあ。

    以下心に残ったところを抜粋。

    ◯私は善以外には卓越の証拠を認めない。人格が偉大でないところに偉人は無い。19

    ◯彼自身、その苦しみの只中にあって希念した事は、彼自身の実例が、他の多くの不幸な人々を支える力となるようにということであり、「また、人は、自分と同じく、不幸な1人の人間が、自然のあらゆる障害にもかかわらず、人間という名に値する1個の人間となるために全力を尽くしたことを識って慰めを感じるがいい」ということであった。21

    ◯能う限り善を行ない
    何にも優りて不羈(ふき)を重んじ
    たとえ王座の側にてもあれ
    絶えて真理を裏切らざれ  22
    不羈〜束縛されず自由気ままであること、才能などが並はずれていて枠からはみ出すこと


    ◯勇気を出そう。肉体は、どんなに弱くとも、この精神で勝って見せよう。いよいよ25歳だ。1個の男の力の全部が示されるべき年齢に達したのだ。

    1789年作品第10番のピアノのための第三のソナタの緩徐楽章33(耳の調子が悪い悲しみが溢れてある)

    ◯お前たちの子供に徳を奨めよ。徳だけが人間を幸福にする。金ではない。私は自分の経験からこれを言う。私の不幸な状態の中で私を支えてきたのは徳の力だ。私が自殺によって自分の生活を終わらさずに来たのは、芸術のおかげであるとともに、また徳のおかげなのだ。80

    ◯人間がまだ善行する可能性を持っている限りは自ら欲して人生から去ってはならぬ、という言葉を、僕がどこかで読んでいなかったとしたら、僕はもうとっくにこの世にいなかったろう。81

    ◯悩みをつき抜けて歓喜に到れ!75

    ◯『田園交響楽』は絵画的な描写ではない。田園での喜びが人の心に惹き起こすいろいろな感じの表現であり、それに付随して田園生活のいくつかの感情が描かれている。183

    ◯ヘンデルとバッハとグルックとモーツァルトとハイドンの肖像を私は自分が部屋に置いている。それらは私の忍耐力を強めてくれる184

    • まいけるさん
      おはようございます!まいけるです。
      真似して読みました。
      改めて発見がありました。
      ありがとうございます。
      おはようございます!まいけるです。
      真似して読みました。
      改めて発見がありました。
      ありがとうございます。
      2026/01/05
    • avec totoさん
      まいけるさん、コメントありがとうございます♪
      ベートーヴェンの生涯は、結局テレーゼと両想いで幸せな時があって、苦労人のベートーヴェンにも極上...
      まいけるさん、コメントありがとうございます♪
      ベートーヴェンの生涯は、結局テレーゼと両想いで幸せな時があって、苦労人のベートーヴェンにも極上の幸せな時があって良かったなと嬉しかったのと、それなのに結婚できなくて可哀想という気持ちが今も強く残っています。
      そして、善の人だったと新たに知ることができて良かったです。
      2026/01/06
  • これは、久々に感動の良書であった。しばらく書棚に積んだままだったが、もっとさっさと着手しておくべきだった。

    「ベートーヴェンの生涯」、「ハイリゲンシュタットの遺書」、「ベートーヴェンの手紙」、「ベートーヴェンの思想断片」と続き、付録もある。その付録の中には、著者ロマン・ロランが行った「ベートーヴェンへの感謝」と題する講演記録と、本書の翻訳者片山敏彦氏による「ベートーヴェンの『手記』より」が収められている。

    表紙にこうある。「少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(1866-1944)によるベートヴェン賛歌。二十世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の中で自らの理想精神が抑圧されているのを感じていた世代にとってもまた、彼の音楽は解放の言葉であった。」

    「ベートーヴェンの生涯」は、その「序」とする文において、25年前の1902年に書いたものであると著者は述べている。つまり1902年にすでに書かれていた「ベートーヴェンの生涯」に、序文を加え1927年(すなわち、ベートーヴェン没後100年目)の3月に再度発表されたものということだ。
    ※ベートーヴェンの生涯は、1770年12月16日~1827年3月26日。

    その序文の中で、ロランは、「今、ベートーヴェン百年祭にして、生きること死ぬことを私たちに教えてくれた彼、簾道と誠実との「師」ベートーヴェンーあの偉大な一世代の人々のために「伴侶」であってくれたベートーヴェンをほめる私の言葉に添えて、あの一世代への追憶を記念する」と記されている。

    ここにいう「あの偉大な一世代」とは、表書きの言葉から、二十世紀当初の大戦、すなわち第一次世界大戦に巻き込まれた世代を指しており、その彼らもまたベートヴェンの楽曲を伴侶とし、自らの抑圧された精神を開放することができたのだろうと著者は追憶を記している。

    ベートーヴェンの生涯が波乱万丈の人生であったことは世に知られていることである。本書の中でもその生涯について一通り語られている。

    貧困な家庭に生まれ、暴力を伴う父親の過度な音楽教育の幼少期を過ごし、17歳にして最愛の母親を失い、酒飲みの父親に代わって一家(2人の弟たち)を養い、22歳で生まれ故郷のボンを離れ、ウィーンにて音楽活動を行うも、若干26歳にして腸を患い、また耳鳴り、難聴から30歳の頃にはすでにほとんど聴力を失ってしまうことになる。

    しかし、その後もその状況のままで、作曲活動に取り組み、途中テレーゼと熱烈な恋愛をし、そして身分差等による理不尽な失恋に失意のどん底に落ち、それをも音楽の糧として作曲活動を続け、1824年5月、54歳のときにあの世紀の「第九交響曲(合唱付)」を生み出し、1827年3月26日に57歳の生涯を閉じたのである。

    ロマン・ロランによるベートーヴェン賛歌。この激しいベートーヴェンの生涯に対し、ロランは語る。以下、主だった文章を抜粋した。

    「第九交響曲は気狂いじみた感激を巻き起こした。多数の聴衆が泣き出した。ベートーヴェンは演奏会の後で、感動のあまり気絶した。」

    「依然として彼は貧しくて病身で孤独であった。とはいえ彼は今や勝利者であった。彼は人々の凡庸さを征服した勝利者であった。自己自身の運命と悲哀とに打ち克った勝利者であった。」

    「かくて彼はその全生涯の目標であったところのもの、すなわち歓喜をついにつかんだ。」

    「不幸な貧しい病身な孤独な一人の人間、まるで悩みそのもののような人間、世の中から歓喜を拒まれた人間が自ら歓喜を作り出すーそれを世界に贈り物とするために。彼は自分の不幸を用いて歓喜を鍛え出す。そのことを彼は次の誇らしい言葉によって表現したが、この言葉の中には彼の生涯が煮つめられており、またこれは、雄々しい彼の魂全体にとっての金言でもあった。-「悩みを突き抜けて歓喜に到れ!」

    「ハイリゲンシュタットの遺書」は、甥のカルルと弟のヨハンに宛てた遺書の意味を込めた書簡である。その中でも、次の「ベートーヴェンの手紙」の章で紹介されている親友への手紙の中でも、悪化していく自身の病状への憂い、運命との格闘、希望、そして自身の音楽における使命について語るベートーヴェンの思いを素肌で感じることができる。

    「たびたびこんな目に遭った私はほとんど全く希望を喪った。自らの生命を絶つまでにはほんの少しのところであった。-私を引き留めたものはただ「芸術」である。自分が使命を自覚している仕事をし遂げないでこの世を見捨ててはならないように想われたのだ。」

    「僕の芸術は貧しい人々の運命を改善するために捧げられねばならない」

    「ブルタークの本が僕を諦念へ導いてくれた。できることなら僕は運命を対手に戦い勝ちたい。」

    「僕は運命の喉元を絞めつけてやりたい。どんなことがあっても運命に打ち負かされきりになってはやらない。-おお、生命を千倍生きることは全くすばらしい!」

    圧巻は、「ベートーヴェンへの感謝」と題するロランの百年祭での講演。これは文章全体が感動であり、ここへそれを書きつくすことはできない。ロランは、ベートーヴェンのすべての楽曲にも精通していて、もしその部分にも詳しい読者であればその感動はさらに大きなものとなるだろうと思う。

    ベートーヴェンのすべての曲に貫かれているものについて語るロランの言葉により、ベートーヴェンの偉大さをようやく感じることができたことろで、そのことを念頭に、もう一度ベートーヴェンの楽曲を聴いてみたいという衝動に駆られている。

    ベートーヴェンのすべての曲に貫かれているもの。ロランはこう語っていた。

    「すなわちそれは二つの要素の間の闘い、広大な二元である。この事は、ベートーヴェンの最初の作から最後の作に至るまで表れている。(中略)しかしながら、ベートーヴェンの気魄のー灼熱せる、勝手気ままでしかも逼迫せるこの嵐のごとき気魄の統一そのものの中に、一つの魂の二つの様態、ただ一つのものである二つの魂があるのである。それらは結合し、また反撥し、論争し格闘し、互いに身体を絡ましあっているが、それは戦いのためともいえるし、また抱擁のためともいえる。不均衡な二つの力であり、また心の中で不同に発言する二人の敵手がそこにいる。一方は命令し抑圧する。他方はもがき呻く。けれどもこの二人の敵対者らは、征服者と被征服者とは、ともに同様に高貴である。そして、これこそが重要な点である。

    (中略)ベートーヴェンのこの戦いとは、魂と運命との間のそれである。(中略)彼の書いたの中にこの事はたくさんある。」

    ベートーヴェンは、自身の人生におけるすさまじい運命と、それに打ち克とうとする強烈な魂と、その壮絶な格闘を楽曲の中に込めているということだろうか。しかし、そうであるならば、それができるのは、この人生でこの格闘を貫いてきたベートーヴェンただ一人だと思われる。

    彼は聞こえなくなった耳で、神の声(音)を聞き取れるようになった。彼は、音楽は啓示を越えるものだと言っていた。彼は、そうして生み出した楽曲を、人々に伝えることを自分の使命と考えた。貧しい人、悩める人に歓喜を与えるための曲を作ることを使命として生き抜いた。自身の境遇の苦悩から、人々の歓喜を生み出した。

    人生半ばで「第五交響曲(運命)」を生み、そして最後に「第九交響曲」の歓喜の歌を生み出した彼自身の人生そのものがそれであるなとも感じられた。

    そういう人生を貫いたベートーヴェンの生きざまに改めて感動し、他の作曲家と一線を画した超人的な芸術家ベートーヴェンを再発見した感覚である。

  • 有名な「悲愴」を聴いて何て悲しみに満ちているのだろうとベートーヴェンをもっと知りたくて読みました。また以前に悩んでいたある人がベートーヴェンの伝記を読んで、こんなに辛いなら自分の悩みは大したことなかったと克服したと聞きました。才能に恵まれながらも次々と試練を受け、名曲を残してもらったことに感謝するばかりです。苦悩するベートーヴェンやそれを支えている人々の人間的な描写に共感して勇気をもらうのでした。確かに嵐のようだといわれるベートーヴェンの人生を読み、本を閉じると自分の周囲は静けさが漂うようでした。

  • 泣ける。数々の英雄的な傑作を産み出したベートーヴェン。肖像画からは気難しい印象を受けるが、実際は快活な人柄であり、神が定めたかのような苦難の連続を耐え抜き、人生の最後まで卓越した人間性を表現し続けた…
    「苦難を超えて歓喜へ」は、人類への激励であるだけでなく、正にベートーヴェンの人生そのものだ。こんな凄い人の一生に触れたら、もう戻れない。

  • ロランによるベートーヴェンの伝記部分と、
    ベートーヴェンと友人達の手紙のやりとり、
    ベートーヴェンの思想断片、
    そしてベートーヴェン記念祭でのロランの講演、
    複数の角度からベートーヴェンについて書かれている本。
    ただ、ロランの愛情たっぷりで少し偏っているかもしれない。

    『ミケランジェロの生涯』と同じく、悲劇的な側面を大きく取り上げている。
    ベートーヴェンが生み出した曲の裏側にある苦悩。
    彼を最も苦しめたのは音楽家には致命的な耳の病気。
    それに立ち向かう力強い姿と、孤独のうちで苦しむ姿。
    筆不精なベートーヴェンが友人に送った手紙から、苦悩が伝わってくる。

    ベートーヴェンは自分の障害を乗り越え、曲を残すことによって、他人に役立ちたいと考えていたという。
    そしてその曲たちは現代までその役目をしっかり果たしている。
    ベートーヴェン歿後100年の記念祭(ウィーン)でのロランによる講演の一節。

    この勝利は孤独な一人の人間のもののみにとどまらない。それはまたわれわれのものである。ベートーヴェンが勝利を獲得したのはわれわれのためにである。彼はそのことを望んだ。p.172『ベートーヴェンへの感謝』

    一番しびれたのは『第九交響曲』が生まれるエピソード(p.63-68)。
    初演では聴衆が泣き出すほどの感激を巻き起こし、演奏会のあと、ベートーヴェンは感動のあまり気絶したという。まさに歓喜の瞬間。

    悲劇のうちから歓喜を造りだした、熱い生涯。

    ベートーヴェンについて、もっと知りたくなった。

  • 偉大な作曲家だと思っていたベートーヴェンが、こんなにも辛く苦しい人生を送っていたなんて知りませんでした。耳が聞こえなくなるという、音楽家にとっては絶望的な病気になったり、耐えがたい孤独の中にありながら、人のために人生を捧げたその姿は胸をうちます。神様から与えられた素晴らしい才能を開花させるためには、これだけの辛い人生が必要だったのでしょうか。

    人生の苦しみや悲しみのとき、私たちは鋼のような強い心や意志で乗り越えようとします。でも運命は、それよりももっと強くて大きいものだと思います。起こることは必ず起こるのではないでしょうか。人間の持ち得る強さでは限界があるような気がします。彼は私たちと同じ弱い人間でした。でも「徳」をもって生きることで運命に打ち勝ったのです。

    彼の書簡にこんな言葉があります。善くかつ高貴に行動する人間はただその事実だけに拠っても不幸を耐え得るものだということを私は証拠だてたいと願う。

  • ロマン・ロランの表現(訳)は本当美しい。読み終えるのが勿体無くて1ページ1ページ噛み締めながら読んた。「賛美」とはまさにこういうものを指すんだろうという気づきを得られる。

    『ミケランジェロの生涯』と同様に、天才の裏側にある苦悩を描いている。そんな天才の一人であるベートーヴェンを簡潔に表現した一節に心打たれた。

    「人生というものは、苦悩の中においてこそ最も偉大で実り多くかつまた最も幸福でもある」とあるように彼は自分の不幸を用いて歓喜を見出した。

    これはマルクス・アウレリウス・アントニヌスの『自省録』に書かれている「これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは幸運である。」と通ずる。

    ちなみに今年2020年はベートーヴェン生誕250年!

  • この本を読んだのは、私がメンタルの調子を崩し、言葉をうまく話せなくなって、半分ヤケになりながら自分の少しでも興味を持てることをしようと試行錯誤していた時でした。
    興味を持てることの中に、佐渡裕が指揮をする一万人の第九というイベントがあり、それはたまたま知ったもので第九は歌ったことも全曲聴いたこともなかったのですが、吹奏楽での少しの楽器の経験と、年末になるとよく開催されている第九のコンサートはどういうものなのだろうという些細な興味から応募し、2年目に当選して参加をしました。

    12回のレッスンに参加をする必要があったのですが、合唱団に参加している人には合唱や音楽の初心者も多く、私もその一人で、レッスンの中では歌をただ教わるだけでなく、ドイツ語の歌詞の意味や、作曲者のベートーヴェンの話も色々ときけて、その中でベートーヴェンの話で、ベートーヴェンは耳が聴こえなくなったから絶望したのではない、耳が聴こえないことを、まわりに知られるのが耐えられなかったのだということや、ベートーヴェンの音楽には、全ての芸術、仕事、人生に通じる哲学がある、という話をきき、印象に残って、ベートーヴェンのことを知りたくなり、この本を手に取ったのでした。

    私が圧倒的に心を揺さぶられたのが、ハイリゲンシュタットの遺書でした。そこには、当時の私がまさに経験していたような、耳が聴こえなくなったことでの苦悩や葛藤が書き綴られていました。私はその文章によって自分自身が救われ、また、この本の著者であるロランロマンがぴったりと寄り添うようにベートーヴェンに対して終始一貫して敬意を注ぎ続ける様に、共感のようなものを感じたのでした。

    何度も読み返した印象的な本です

  • 第九初演奏後の反応にしびれました。目に浮かびます。

  • 学生時代に読んだ本をKindleのセールで見つけ、再読。ベートーベンは、ゲーテ、シラー、モーツァルト、ナポレオン、シューベルトらと同じ時代を生きた。すごい時代である。関連性など、もう少し学んでいきたい。

    冒頭の言葉に衝撃を受ける。
    「思想もしくは力によって勝った人々を私は英雄とは呼ばない。私が英雄と呼ぶのは心に拠って偉大であった人々だけである。」
    「彼らは試練を日ごとのパンとして食ったのである。」

    以下の言葉で、締められている。
    「不幸な貧しい病身な孤独な一人の人間、まるで悩みそのもののような人間、世の中から歓喜を拒まれたその人間がみずから歓喜を造り出す──それを世界に贈りものとするために。彼は自分の不幸を用いて歓喜を鍛え出す。」
    『悩みをつき抜けて歓喜に到れ!』

  • 読んでいて思った。「ベートヴェンすごい苦労人だな~」と。有名な遺書も私の頭で訳すと「私は本来社交好きな活発な性格なのに、耳が聴こえないばかりに孤独にならねばいけない。音楽家の自分が聾だなんて言えるものか!故に二重の苦しみにさいなまされている」・・・めちゃくちゃ苦労している。圧倒的な音楽の才能もあって5度ものスタンディングオベーションを受けようが、貧乏って・・・切なすぎる。

    オススメ度:
    ★★★☆☆

    ノブ(図書館職員)

    所蔵情報:
    品川図書館 762/R64

  • クラシックが少しでも好き、またな興味があるひとに読んでほしい。文体は古く難しい漢字も多くてつい流し読みして無味乾燥な文字の羅列にしてしまいそうになるけれど、一節一節噛みしめるように言葉の意味を反芻しながら読んでいくとまるでスルメのように味がしてきてとても美味しく、おもしろい。

    もともとは1903年、高校師範学校時代の教え子シャルル・ペギーの個人雑誌「半月手帖」にて掲載された文だそう。

    この本は著者であるロマンロランによるベートーヴェン愛に溢れている。人が人を思う気持ちは尊い、それが例え世紀を跨いでいても!

  • 松丸本舗で発見して読んでみた。

  • ベートーヴェンの転機となる書物が多く収録されており、彼を心の支えとしてきた作家による讃歌となっている。

  • ベートーヴェンという天才は、他の天才的芸術家の例に漏れず、健康問題、人間関係、貧困という苦難にもまれながら名曲を残していった。
     ベートーヴェンというと、まず、難聴の天才音楽家というイメージが強いが、それによる精神的な問題以外は屈強な身体をしていた。この点が、音楽の戦闘的な戦慄、激しさ、雄雄しさにも反映されているように感じる。
    もちろん難聴という障害が彼の生涯、精神、作風に与えた影響は語りつくせぬものがあるであろうが、著者の記述からはそういった側面はあまり感じられない。耳の障害とベートーヴェンという天才、その音楽についてロランは、むしろ耳が聞こえなくなったことが一層、ベートーヴェンの自然に対する愛を深めたというように積極的に捉えているように感じる。
    一方で、彼自身は自身の才覚を意識し、「救済者」、音楽を通じて人々を救うという使命間にも似たものを背負っていたようだ。
    たとえばそれは、「俺は人類のために精妙な葡萄酒を醸す酒神(バッカス)だ。精神の神々しい酔い心地を人々に与える者はこの俺だ。」という彼の光栄の時期における発言にも感じ取ることが出来る。
    またその使命感は、家族に対する愛にもつながる。ベートーヴェンは甥カルルを引き取って正しく育てようとしたが、彼の愛は甥には必ずしも通じず、生涯を通して天才はこの問題に苦悩した。
    そしてベートーヴェンは家族愛だけでなく、恋愛にも没頭した。ジウリエッタやテレーゼといった女性を愛し、とくにテレーゼとの幸福な恋愛は彼の楽曲創造に大きく影響を与え、別かれた後も彼のより所となっていたようだ。彼はテレーゼを、「あなたは本当に美しくて偉大だったね。まるで天の使いたちのようだったね。」と表現している。
    不埒な父親や、自分の愛を受け止めない甥など、必ずしも家族愛に満ちていたとはいえないが、恋人、そして友人シントラーなどの彼の理解者は常に存在し愛にも満たされていたと思われる。
    この『ベートーヴェンの生涯』の著者、ロマン・ロランは『ジャン・クリストフ』というベートーヴェンをモデルにした大河小説によってノーベル文学賞を受賞しているが、この『ベートーヴェンの生涯』は、それが発表される以前にかかれたものである。
    従って、ロランは小説の格好のモデルとしてベートーヴェンという人物に興味を持ったのではなく、ベートーヴェンという人間に惹かれ、そしてその音楽を愛していたからこそ『ジャン・クリストフ』という大著が完成できたのであろうと察せられる。
    この『ベートーヴェンの生涯』は、ロランのベートーヴェンに対する愛にあふれる視点から、感情の起伏とその時折に創造した楽曲を含め彼の人生が描かれている。したがって、この著作を読みながら楽曲を聴いて、ベートーヴェンという天才の生涯に思いを馳せてみるというのも非常に楽しいベートーヴェンの楽しみ方ではないかと思う。

  • ベートーヴェンはロマン・ロランにとって英雄であり、彼がベートーヴェンに捧げた賛辞がこの本である。

    ベートーヴェンは政治的な面はもちろんのこと、音楽界においても権力を持っていたわけではない。また、ロランはベートーヴェンがその圧倒的な音楽的才能で英雄になったと考えているわけでもない。

    「私が英雄と呼ぶのは心に拠って偉大であった人々だけである」と書いているように、ロマンにとってベートーヴェンが英雄であるのは、彼が不幸や苦悩を抱えながら、精神の力でそれを乗り越えたことにあり、人間にはそれが可能であるということを音楽で多くの人に伝えたからである。


    本書では、ロランは周囲との軋轢や耳の病気、家族との関係で悩みや不幸を抱えるベートーヴェンの姿にフォーカスを当てる。ベートーヴェンは対人関係において器用な人間ではなかったし、生涯を通じての友人もヴェーゲラー等数人を除いていなかった。その数少ない友人も、ベートーヴェンの付き合いにくい性格について手紙で言及している。ベートーヴェンが賞賛し尊敬していたゲーテとの間でも、望むような人間関係を築き上げられたとはいえない。

    また、ベートーヴェンは甥のカールの父親役を自認し、非常に目をかけていたが、カールの素行やベートーヴェンとの人間関係はベートーヴェンが期待していたようなものにはならなかった。ベートーヴェンのカールに対する期待の強さやベートーヴェン自身の偉大さが、かえってカールをそれとは逆の方向へ進ませるという、ある意味では「よくある」結果になってしまったということが、本書に描かれている2人のやり取りの経緯を読んでもよく分かる。

    これらは、ベートーヴェンの個性が生んだ衝突でもあり、自業自得ではないかという考え方もあると思う。しかしロランは、そのような自らのままならない部分も含めて苦悩と捉え、それを乗り越えていく精神の戦いの過程に、ベートーヴェンの偉大さを見ている。

    ロラン自身、『ベートーヴェンの生涯』を書いたときには作家として生みの苦しみを味わっていた時期であり、自分自身と向き合い葛藤の中で過ごしていた。そのため、このような自身との戦いが、決して「本当の」苦悩とは別のものではなく、人生の苦悩の中の本質的なものであるということを深く感じていたのではないか。

    本書の魅力もロランのこのような視点にあると思う。本書に収められているロランの講演の中に「人生をあるがままに見ることの、そしてあるがままの人生を愛することの、この諦念的調和」という言葉があるが、ベートーヴェンがままならない人生に対して向き合ったときの姿がロランにも勇気を与え、また多くの人にとって勇気を与えるものであるということを、本書は訴えたかったのではないかと思う。

  • 自分の芸術を他人のために役立てようという考えは彼の手紙の中で絶えず繰り返されている。ネーゲリへの手紙の中で、あらゆる利害関係的な考えから、あらゆる「ちっぽけな虚栄心」から自己を防ぎながら、彼は自分の生活にただ二つの目的を決定している。それは「聖なる芸術への」献身と、他人を幸福にするための行いとである。

  • 学生時代にたぶん角川文庫版で読んだけど、印象は変わらない。『ベートーヴェン捏造』読んだ後なんだけど、この本から受ける感銘みたいなものは変わらないのよね。もちろん出典がシンドラーだったらそこはちょっと?がつくけど、そんなに多くはないし。まぁ、思い入れが強すぎるかもしれないけど、この熱量に価値があると思う。若い時に読んで何かの糧にできるといいですよね。

  • 31歳で遺書を書いた。自殺するためではなく、芸術の為だけに生きる決意をして、一回死んだのだろう。自分が天才であることを知っていて、苦悩を突き抜けた先の歓喜。

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著者プロフィール

1866年、フランスの中部クラムシーに生まれ、1944年に没する。作家、音楽史家。第一次世界大戦中は反戦論を唱え、第二次世界大戦中も反ファシズムをアピールした。文学や芸術の領域で活動するだけでなく、現代社会の不正と戦い、人権擁護と自由を獲得するために政治的・社会的論争を起こし行動した。1915年、ノーベル文学賞受賞。主な作品に、大河小説『ジャン・クリストフ』、『魅せられたる魂』をはじめ、『ベートーヴェンの生涯』や『戦いを超えて』、『インド研究』などがあり、そのほか、小説、戯曲、伝記、自伝、評論、日記、書簡などの膨大な著作がある。

「2023年 『ジャン・クリストフ物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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