- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003255636
感想・レビュー・書評
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「世界に真の勇気はただ一つしかない。世界をあるがままにみることである。そうしてそれを愛することである。」
このロマン・ロランの言葉に出逢えただけで
この古典を読む価値はあったのではないだろうか。
偉大さとは一体何なのか。
それは決して弱さがない人間のように見せかけることではない。
弱さをも含めたありのままを受容して、その弱さゆえに輝きを放つ魂。
ロマン・ロランの書くミケランジェロが伝わってくる人間的な弱さ。
偉大とされるミケランジェロのありのままを見た時に、偉大さとは、幸福とは。
考えさせられる。
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アバタロー氏
1905年出版
《ロマンロラン》
1866年フランス生まれ
16才ユーゴと出会う
哲学、歴史、芸術を学ぶ
「ベートーベンの生涯」で反響
1915年ノーベル文学賞
反ファシズム
《時代背景》
・15~16世紀イタリア
フィレンツェ共和国、シチリア王国、ナポリ王国に分かれていた
生き残りをかけた緊張状態
・メティチ家とローマ教皇の存在が大きい
メティチ家は銀行家政治家で実質的なフィレンツェの支配者
ローマ教皇は贅沢で派手
命令、きまぐれ、パワハラ、報酬がもらえない場合も
《ミケランジェロ》
1475年イタリア生まれ
彫刻学校へ入学
・性格は完璧主義、人に頼れない、働きすぎ
パンとワインだけ、食べない寝ないが88歳まで長生き
親兄弟に金銭的要求
・建築家ブラマンテに敵対視され続けた
ブラマンテの罠1
生きている間に墓をつくるのは縁起が悪いとユリウス2世に吹き込む
墓建築は中断、報酬なし借金を背負う
ブラマンテの罠2
ユリウス2世、システィーナ礼拝堂の天井画の依頼
ブラマンテは失敗しそうな仕事をふり、失脚させようと策略した
ミケランジェロは絵画技法は詳しくない
この頃ラファエロがフレスコ画を大成功させていたから彼に頼んでくれと懇願
しかし法王に断られ、1年以上無一文で働き地獄の苦しみ
ほぼ1人で1512年完成
37才という若さなのに、首を上に向けて作業で骨格はぼろぼろ、視力が悪くなり醜い姿になった
・レオナルドの絵画論に彫刻家は汚い労働者のようだと書かれ、レオナルドが嫌いになった
《感想》
システィーナ礼拝堂の「最後の審判」
中央キリストの右下の皮になった者、それがミケランジェロの姿と言われている
悲痛が一目瞭然だ -
芸術の最高峰といわれるダ・ビンチとミケランジェロ。ミケランジェロの作品は新婚旅行でバチカンに行った際に「天地創造」「ダビデ像」「最後の審判」など見ていた。実際に読んでみると想像を全く違う人生に驚いた。著者は人間の弱さを真実にあぶり出すことに焦点をおいて書いたということ。作品のつくる際の決心、覚悟がものすごい。一流なこうなのかと感激した。そしてミケランジェロの信仰心にもとても感動した。「神の助けがあるならば、イタリアにかつてなかったような立派な仕事をしてみせる」「立派な絵画は、神に近づき、神と一体になります。それは神の完全さの写しに過ぎません。」とても刺激を受ける内容であった。
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かなり読みづらい。
『人生のみじめさや魂の弱さから眼をそらすような臆病な理想主義(イデアリズム)を私は嫌う』とロマン・ロランが記すように、本著ではミケランジェロの強烈な二面性が描かれる。圧倒的な芸術的才能と、決して人格者とは言えず、苦悩に満ちた人生。
依頼主の気まぐれに振り回される様は現代に通じるものを感じる。個人的にロマン・ロランは文体に苦手意識がある。 -
訳者も解説で指摘しているように、これはただのミケランジェロの伝記ではない。
ロマン・ロランによるミケランジェロの人生に対する批評である。そこに現れるのはミケランジェロをとおしたロランであり、ミケランジェロをとおしてロランが語りたかったものである。
割と高度な読解力というか、前提知識が必要なように思った。美術にも疎く、キリスト教には無知で、『ジャン・クリストフ』すら読んだことのない身には今ひとつ理解が及ばなかった。 -
訳が秀逸なのかもしれないが、ロマン・ロランの表現には一々惹かれてしまった。イタリアを訪れる前に読んでおけば…。
ミケランジェロを天才と賞賛するだけではなく、その裏で抱えていた苦悩、悲壮、弱さに焦点を当てて本質に迫ってる。豪華絢爛に展示されているミケランジェロの作品にどこかそのような一面を見出すことができるかも知れない。
【心に残った一節】
「大げさな騙されやすい幻にすぐこころひかれる一般人に対して言わなければならない。勇ましい虚言は卑怯であると。世界に真のヒロイズムは一つしかない。世界をあるがままにみることである。そうしてそれを愛することである。」
最近これが一つの真理であるようにも感じている。
蛇足だが、ルネサンス期の内実は芸術家を奴隷のように扱うクソみたいな権力闘争が背景にあったことがよくわかる。 -
この人に、偉業を成し遂げた人の『人間味』を語らせたら右に出るものはいないな…。
その人らしさが現れてるようなエピソードなどの描きっぷりは、ツヴァイク流が炸裂。
収集オタクのツヴァイクの溢れるばかりの思いを、つらつらとハキハキと、メラメラと描かれている。
ツヴァイクご本人が朗読したら、めっちゃツバ出まくってる感じ -
また読む機会があるのかもしれない。今回は響かず。
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流れるような伝記。
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「ベートーベンの生涯」に続けて、ロマン・ロランの「ミケランジェロを読了。
どちらも苦境に負けず、物凄い作品群を残した大天才という共通点があるのですが、ベートーベンの偏屈ぶりは強烈だし、ミケランジェロは、より猜疑心、保身など人間臭さが滲むのは面白い。
ロランがこれらを書いたのは世界大戦の時期。暗さを増す欧州の状況に、我が身を奮い立たせようとしたのでしょうか。
通常の偉人伝とは一味異なる2冊でした。