死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 田辺 貞之助 
  • 岩波書店
3.60
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本棚登録 : 125
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003257418

作品紹介・あらすじ

フランス文学の魔術師テオフィル・ゴーチエ(1811‐72)の傑作短篇5篇を選び収める。ヨーロッパでもっとも傑れた吸血鬼小説の一つと賞される「死霊の恋」、青年のよせる烈しい思慕に古代ポンペイの麗人が甦える「ポンペイ夜話」など、いずれも愛と美と夢に彩られたあでやかな幻想の世界へと読者をいざなう。

感想・レビュー・書評

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  • 新書文庫

  • 最近読んだ『モーパン嬢』が楽しかったので久々に再読。5編の短編をざっくり2種類に分けるとすると、

    (1)相手が幽霊だろうが吸血鬼だろうが、めっちゃ美人だから恋に落ちちゃっても後悔しない系=「死霊の恋」「ボンペイ夜話」「コーヒー沸かし」

    (2)なんか知らんけど悪魔に目を付けられちゃって不幸に真っ逆さま系=「二人一役」「オニュフリユス」

    という感じ。前者の場合、とにかく主人公が夢見がちで唯美主義、わかりやすくいえばただの面食いで、モーパン嬢におけるダルベール君と同じタイプ。絶世の美女なら幽霊でもOK。なんて身もふたもないけど、作品としてはいずれもとても美しくて大好き。

  • ゴーチェの幻想文学短篇、5篇が収められている。基督教的な背景が見え隠れするような気もするが、ひとつひとつ読み進めていくうちに繊細な描写と、裏側に込められているかもしれない意味に色々と考え込むこととなった。
    また解説者が語る通り、殆どの作品は愛と美に占められている。散りばめられた描写の中に、誰かを愛そうとする詩人的な美を、または古代への尊敬と女性の深い愛を感じることができた。

  • 詩はたくさん読んでたので、こういう作品を書くのが意外だった!
    やっぱ死霊の恋が圧巻。怖いだけじゃなく、悲しくて美しいお話でしたな。

  • ロマンチック!

  • 幻想的な短編が5編入っています。短いためか文章が読みやすいためか、どんどん先へ読み進められました。さらっと読める作品です。

    タイトルの訳はさまざまあるけれど、やっぱりこの「死霊の恋」が1番しっくりくるというか好きです。

    「死霊の恋」では、女吸血鬼が主人公を弄んでいるのかと思いきや、主人公のことを大変愛していることが描写から分かり、「吸血鬼だから悪である」と完全にはなっていないのがいい。

  • 12/22 読了。

  • 何ともうっとりさせられる話の数々だった。夢幻にとらわれ酔っている間の、とろけるような心地よさ、そしてそのはかなさ。夢から覚めた後の味気なさと、二度と手に入らないものへの喪失感、思慕の情。それらの中に、1編だけ救いがあることにまた安らげる。主人公はいずれも男性だが、話の流れや雰囲気は、どちらかといえば女性向けか。

  • 耽美怪談

  • フランスの作家ゴーチエ(1811-1872)による幻想的・怪奇的な作品集。長編小説『モーパン嬢』の序文では、功利主義的文学観を批判し「芸術のための芸術」を主張する唯美主義を唱えた。

    本書では、やはり表題の二編、特に「ポンペイ夜話」が強い印象を残す。

    「オクタヴィヤンは、まぎれもないその日の朝、博物館の陳列棚のガラス越しに押型を眺めた、あの美しい胸が、自分の心臓のうえで烈しくときめくのを、まざまざと感じた。」

    元来は画家を志していたゴーチエの文体は、絵画のように絢爛で、恰も描写されている物が読者の肉体を圧してきそうなほどに造形的・肉感的だ。「ペンで描く画家」と評された所以だろう。逆に云えば「文体で絵を描く作家」となろうか。

    この作品集の中でも、美は現実の中には無い、と繰り返し描かれているように思う。現実は醜く厳めしい。実生活は卑小である。

    「オクタヴィヤンはというと、彼は現実にはほとんど魅惑を感じないと告白した。・・・。すべての美人のそばには散文的で不愉快な付属が多すぎるからだ。・・・。彼は恋を日常生活の環境からさらって、星の世界に移そうと望んでいた。」

    美は、この世ならぬ"何処か"に在る。現実界に於ける理性という軛から解放され、自他を隔て個別化する「鎧」や「楯」を脱ぎ捨て、「清浄無垢」な裸体となって、つまり狂気へと雪がれて、美という大いなる存在を前に極微の一点となってしまった自己をその中へ溶かし消してしまいたい・・・。自己抹消という分裂した渇望だ、それは死の瞬間にのみ可能な成就ならざる成就。美への幻想が、死や恐怖や狂気と隣り合わせであるのも宜べなるかな。

    この作家に於いても、美はやはり「女」によって表象されている。「男」は「女」を美へと疎外した上で(美的であることを押しつけた上で)、自らを極微の一点でしかない主体へと貶めて(眼球という一点?肉体という一点?)、大いなる美への合一を渇望する。しかし、飽くまで主体であるからこそ、自ら主体性を放棄する豪奢な蕩尽という特権にありつける。

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