死都ブリュージュ (岩波文庫 赤 578-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003257814

作品紹介・あらすじ

沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。

感想・レビュー・書評

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  • ・単純に筋だけ追うと大変めめっちいお話。
    しかし情景描写、小道具の使い方、全体を覆う憂愁が凄まじい。
    ・主役は町。
    ・町について語ることが自分について語ることになるという回路の発見。
    ・死にかけた町の中でジャーヌだけが生きている。町は彼女を放ってはおかないだろう。
    ・衰微するものへの哀歌。

  • <amazonからの転記>大学の授業で何年か前に読みました。
    象徴的な意味で、死ぬことなしには永遠という行為が得にくいこと、
    永遠であり続けるには、死に続けるしかないということが感じられます。
    死に続けるとは、時間を止めることなのか。
    無彩色のまち、黒い塔、鳴り響く教会の鐘、死したキリストを賛美する祭り。
    動いているはずのお話の中のまちが、時間を止めるように描かれているのは、
    まちを穏やかに死に続けさせるためなのかと思われます。
    そして死に続けるまちは、ずっとユーグのものとなる。

  • 若くて美しい妻と死別した男やもめのユーグが主人公。ユーグは暗くて静かな世界に身を置きたくて陰鬱な雰囲気漂う古都ブリュージュで暮らしているが、ある日死んだ妻と瓜二つのジャーヌと出会う。

    ユーグは敬虔なキリスト教信者でありながら、ジャーヌのなかに死んだ妻の面影を求めて関係を持ってしまうが、死んだ妻を求めているだけであると言い訳し続ける。

    しかしながら派手なジャーヌとおとなしかった妻とではやはり違っていて、ユーグはその差異に悩まされ始める。悩みながらも、ジャーヌ自身を愛していることにも気付き始め、今度は信仰に反していることとの二重苦に落ちていく。さらに身持ちの悪いジャーヌに夢中になる様子を街の人々に嘲笑われ、長く共に暮らしていた家政婦も出て行ってしまう。

    ジャーヌはユーグのことを愛しておらず、ユーグの遺産目当てに家を物色していて死んだ妻の肖像画や遺体から切り取って大切に保管していた髪の毛を取り上げてユーグをからかっていたところ、ユーグははずみでジャーヌを殺めてしまう。
    ユーグは疲れ果てて椅子に座り、教会の鐘の音が部屋にこだましているところで物語は終わる。

    ユーグの精神世界の描写が最高だった。このどん底感をしっかり書き落とすのはどれほど労力がかかったことか。ユーグとジャーヌのすれ違い、エゴの塊感もたまらなかった。
    ユーグ、家政婦、ブリュージュの住民たちに一切の宗教信仰がなくて、ただ単にユーグがジャーヌを好きになったという設定だったら全然違ったかもしれない。それでいいのかは別として信仰とはなんだろうなあと考えてしまう話でもあった。(この話は宗教なしでは語れないしそこが面白いのだが、だからこそその大前提が違ったらどうなるんだろうなあと考えたという感じ。)

    過去に栄えた寂しい都ブリュージュの様子もとても魅力的だった。鐘の音や教会が物語に重みを与えていてとてもよかった

  • プログレバンド「夢幻」のアルバム『レダと白鳥』で、
    タイトルそのままモチーフにされた「死都ブリュージュ」
    を聴いて以来、気になっていた本をやっと読んでみた。
    そして、バレンタインデーであり
    同時に「ふんどしの日」でもある今日、読了。
    それはさておき(笑)
    愛妻に先立たれて悲嘆にくれ、喪に服す男が、
    ベルギーはブリュージュの街角で妻に瓜二つの女を見出す――
    という、
    19世紀末の作家ローデンバックによる小説。
    敬虔なカトリック信者としてのメンタリティが言動を抑制し、
    そこから生じるストレスが暴発して……といったところでしょうか。
    ともあれ、「男」と「女」と「古い街」の
    三角関係とでも呼びたくなる様相。
    挿絵代わりに鏤められた、
    運河を初めとする当時のブリュージュの風景写真が
    寒々とした雰囲気を一層盛り立てている。
    尚、20世紀に入って
    E.W.コルンゴルトによって翻案され、オペラとして上演されたそうな。

  • ベルギー、ブリュージュ、フランドル……、私にとっては霧に包まれたような不思議な響きだ。ローデンバック(永井荷風によればロオダンバック)という名も(彼の同輩は、メーテルリンク、それともメーテルランク?)。歴史的・文化的にも複雑だから、と説明することもできるけれど、まずもって私には、この『死都ブリュージュ』のイメージが鮮明だから、かもしれない。"BRUGES-LA-MORTE" を『死都ブリュージュ』とするのは間違いだ、と、森茉莉が熱弁をふるっているけれど、私には、これでいい。この物語の主人公は(本書解説にもあるように)ブリュージュという「灰色の都」だから。そのためにも、30葉余の写真が「書割」として必要だったのだから。宿命とか、(本人たちもあずかり知らぬ)深い血のつながりによる恋の物語、どうしてこのように心をとらえて放さないのだろう、私は幾度、この本を開いては溜息とともに閉じただろう。「解説」によれば、荷風は、ロオダンバックとレニエを愛したとのこと、宜なるかな。同じく荷風先生による、掘割の都としての、ヴェネツィア、ブリュージュ、そして島原…、ああ、なるほど。

  • コルンゴルト作曲のオペラ「死の都」を見て、この原作を知りました。本文中のレトロなモノクロ写真が、物語の幻想性を盛り上げています。

  • 窓辺に吊るした鏡に映る、生と死の輪舞。幾重にも響く鐘の音は、かの面影を夜ごと水面に蘇らせる。

  • 試みはおもしろいが、うまくいっているようには思えなかった。

  • [ 内容 ]
    沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。
    愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。
    世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 悲嘆した金持ちのオッサンが死別した妻に似た女を見かけて・・という三文オペラな小説。正直、なにが佳いのか分からなかった。
    ブリュージュは最も繁栄したのが14世紀から15世紀にかけてであり、静かに衰退している町が、亡き妻と重ね合わさって「死都ブリュージュ」らしい。
    ブリュージュ住民にはすこぶる評判が悪いらしいが、それはもっともだ。

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