シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003259016

感想・レビュー・書評

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  • マグリット展に行く前に読むべきだった

  • 難解!!脳ミソがおお汗かいたが暑い日夏の湯豆腐後に似た爽快感。シュルレアリスムの解説関係情報を集積してみたので読み返したい。

  • 自由
    想像
    脱凡庸

    自動記述

    私が大学に入って得たもの、そしていまも基幹をつくっているもの、
    シュルレアリスム。
    ブルトンの名前は大学3年のとき、横浜美術館でやってたシュルレアリスムの展覧会で知った。
    やっと読む機会が得られた。
    前半が「シュルレアリスム宣言」という、この人の思想や方法を一般に知らしめているようなテクストであり、後半は「溶ける魚」と題されたその方法を適用した作品。

    P.37

    「すなわちある晩のこと、眠りにつくまえに、私は、一語としておきかえることができないほどはっきりと発音され、しかしなおあらゆる音声から切りはなされた、ひとつのかなり奇妙な文句を感じとったのである。…じっさいこの文句にはおどろかされた。あいにくこんにちまでは憶えてはいないけれども、なにか、『窓でふたつに切られた男がいる』といったような文句だった。…まちがいなく、これは窓から身をのりだしているひとりの男を、ただ空中で直立させただけのものであった。けれども、その窓が男の移動についてまわっていたことから、私はかなりめずらしい型のイメージを相手にしているのだと悟り、…こうして信頼をよせたとたん、さらにそのあとをうけて、なかなかとぎれることのない一連の文句がつづいてきた。」

    P.46
    「シュルレアリスム。男性名詞。心の純粋な自動現象であり、それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようとくわだてる。理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからもはなれた思考の書きとり。」

    …まさに私がしたいこと。

    P.52
    「パーティーのとぎれ目に、火をつけたパンチ酒の鉢のまわりに楽士たちがあつまっていたとき、私は樹木にむかって、いまも赤いリボンをもっているのかとたずねた。」

    ↑なんてすんなり入ってくる文章。頭おかしいけどね。
    …私がスピッツ好きなのはきっとこのようなシュルレアリスム的歌詞のせいだ。

    P.53
    「シュルレアリスム魔術の秘訣

    できるだけ精神の自己集中に適した場所に落ち着いてから、なにか書くものをもってこさせたまえ。…あなたの天分、あなたの才能、またあらゆる他人のそういったものを無視したまえ。…あらかじめ主題など考えずに、…すばやく書きたまえ。…好きなだけつづけたまえ。…ためらわず、明瞭すぎる一行とは縁をきるようにしたまえ。…」

    ↑このような大衆向けの部分が言いたいことは非常によくわかるが、書いたものを後で見返すと非常に陳腐になってしまう。
    そこが ちがいなのか。

    P.78
    「私にとってはるかに重大に思われるのは、すでにじゅうぶんおわかりいただいているように、シュルレアリスムの行動への適用ということである。」

    ↑哲学にしろこの種の思想にしろ、自ら実践できること。
    高みにあるのではなく、ひとの考えをうのみにするのでもなく、自分レベルでそれを反映できること、が、重要だと私は思います。

    こんな感じで期待していたけど、そのあとの実践編「溶ける魚」はやや退屈だった点も否めません。
    無意識に、思考と無縁に、書いていっているのであり、恣意性はない、みたいなこと書いてあったけど、恣意性なしに物語をつくることはやや難しく、やはり少なからずどこかで傾いてしまう部分もあるのではないかとおもいました。

  • 人間のめざめが夢よりもつらく、あまりにもみごとに魅惑を断ち切ってしまうのは、贖罪といったあわれな観念を抱くようにされてしまったからである@ブルトン

    美術だけでなく文学、映画、演劇に至るまで、後年の芸術全般に大きな影響を与えた史上、最も著名な芸術論がこのシュルレアリスム宣言です。
    1924年、デ・キリコの絵画に霊感を得たアンドレ・ブルトンは、「溶ける魚」の序文としてこの宣言を書き上げました。

    私がもやは語られることも少なくなった文学や芸術に親しむのは、
    「詩は私たちの耐えているもろもろの悲惨に対する完全か補償を含んでいる@ブルトン」があるからです。
    働いた。
    飯食った。
    寝た。
    それだけじゃ「犬の生活と変わらない@ブルトン」
    読書や展覧会や音楽の楽しみは、ゴルフやパチンコやお酒よりはるかに安価です。
    モチロン、ゴルフもお酒も素晴らしい娯楽あり、まあ気が晴れるという点では本なんか読んでいるより上だよねえ。
    でもそれだけでない人生の趣向というのは得られるのですよ。
    本や芸術の中でね。

    以下、美しい言葉の紹介を
    「コロンブスがアメリカを発見するためには、狂人たちをつれて船出しなければならなかった。この狂気なるものがどのように体現され、持続されてきたかを見るがよい。狂気への恐れから、私たちは想像力の旗を、半旗のままにしておくにはいかないのだ」
    「この本は世にも純粋なかたちで、地上をはなれたいと渇望する精神の一面だけをもっぱら称揚している」
    「世界はひとつの美しい書物によってではなく、地獄あるいは天国のための美しい宣伝文によって終末をとげるだろう」
    「シュルレアリスムは、ひとつの秘密結社である死のなかへとあなたをみちびくだろう」
    「イメージの価値は、得られた閃光の美しさにかかっており、したがって、二つの伝導体間の電位差の関数なのである。直喩のように、この電位差がほとんと存在しないときは、閃光は発生しない」
    「シュルレアリスムにのめりこむ精神は、自分の幼年時代の最良の部分を、昂揚とともにふたたび生きる」
    「この夏、薔薇は青い。森、それはガラスである。緑の衣におおわれた大地も、私には幽霊ほどのかすかな印象しかあたえない。生きること、生きるのをやめることは、想像のなかの解決だ。生はべつのところにある」

著者プロフィール

1896-1966年。フランスの文学者で、シュルレアリスムを創始した。1924年に『シュルレアリスム宣言』を刊行、自動記述などの表現方法を重視した。他に著作として『ナジャ』『黒いユーモア選集』など。

「2017年 『魔術的芸術 普及版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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