オネーギン (岩波文庫 赤604-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003260418

感想・レビュー・書評

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  • 本書はロシア近代文学の嚆矢、アレクサンドル・セルゲーヴィッチ・プーシキンの傑作小説。
    プーシキンは後のロシア文学界の巨匠、ドストエフスキー、トルストイ、ツルゲーネフらに大きな影響を与えた作家である。

    本書は1832年に完成したプーシキンの韻文小説。
    プーシキンは1799年生まれであり、プーシキンが38歳の時(1837年)、自分の妻に横恋慕した友人に決闘を申し込み、その決闘で友人の発射した拳銃の銃弾の傷が元で命を落とした。
    プーシキンは1828年生まれのレフ・トルストイ、1821年生まれのフョードル・ドストエフスキーらから見れば父親的な世代であり、その作品だけでなく、生き様についてもロシア近代文学界への影響は大きかった。

    本書のストーリーは非常に単純。
    主人公は題名にあるエヴゲーニィ・オネーギンと純情な少女タチアーナの二人。
    オネーギンは簡単に言えば世間に馴染めないプレイボーイ。女の子を引っかけては捨てるということを繰り返す色男である。
    そしてタチアーナはそんなプレイボーイに恋してしまう一途な娘だ。

    オネーギンに恋した純情な少女タチアーナはある時、オネーギン宛に恋文を送る。しかし、オネーギンは「自分は貴女の気持ちを受け取れるようなまともな男ではない」と若きタチアーナをあっさりと振ってしまう。
    その後、月日が流れ、タチアーナはある貴族と結婚する。偶然、タチアーナを見かけたオネーギンは、美しく成長したタチアーナに狂おしいほど恋し、今度はオネーギンがタチアーナに恋文をしたためる。
    オネーギンと再会したタチアーナであるが、オネーギンに対して涙ながらに言う。「わたしは今でも貴方を愛しています。しかし、私はもう人妻となった身、貴方を受けいれることはできません。」ときっぱりと断り、立ち去っていく。

    という物語である。
    こんな単純なストーリーながら、オネーギンとタチアーナというキャラクターはその後のロシア文学に大きな影響を与えている。

    本書で描かれる世の中に対して斜に構えるイケメン主人公のエヴゲーニィ・オネーギンと純情可憐で一途でありながら一本筋の通ったヒロイン・タチアーナ。
    特にヒロインのタチアーナはロシア人女性の理想像と言われているのだ。

    ロシア文学に興味のある方はぜひ一読してほしい。
    この二人のキャラクターを元にしたロシア文学がわんさかあるので、そういった本を探していくのも楽しいものである。

  • 予想以上にヘンな作品で面白かった。何より、「読者にウザ絡みするのはドストエフスキーだけじゃなかったのか」というレベルに饒舌な語り手「私」。歯の浮く蝶よ花よ星よ乙女よから一転して皮肉ったり茶化したり、登場人物を突き放したり。
    あまりにも「私」が出張ってくるので、「私」の友人である筈の主人公の虚構性がどんどん強まっていって、ラストでぽん!と放り出す手際の鮮やかさ。あと内気な夢見る乙女タチヤーナは、実は初恋の人を魔王コスで自分の夢に登場させる筋金入りのドリーマーですし。エヴゲーニイ、ロックスターかよ。
    一方我らが主人公のオネーギンはと言うと、もっと若い時期に読んでいたら「この碌でなし男」と腹立てたと思うのだが、この年で読むと「こんな生育歴で、こんな神経の調子崩しそうな夜型生活を送って、これでメンタルが不調にならなかったらむしろおかしいだろ」という感想しかなく。そういう意味では、碌でなし男の自業自得ではなく、結構残酷な話ではある。

  • 巻末のエッセイが面白かった。オネーギンが哀れで滑稽だった。

  • 散文詩調というのか、なかなか文章にはまることができず、内容もよくわからなかった。ツルゲーネフのはつ恋に近いか。

  • ◆神戸市外国語大学図書館「韻文小説」
    https://www.kobe-cufs.ac.jp/library/recommend/materials/e_68.html

    ◆RUSSIA BEYOND "詩人アレクサンドル・プーシキンの韻文小説『エフゲニー・オネーギン』のショートサマリー"
    https://jp.rbth.com/arts/86796-pushkin-evgeny-onegin

  • 2通の恋文。ただそれだけの材料が、かくも味わい深く面白い物語になる。
    都会の軽薄な遊び人が、自分に夢中になった野暮ったい田舎の文学少女を振る。しかし、後に社交界の華として彼女が再び目の前に現れた時、彼女を愛し始める。
    …とオネーギンは思っているらしいが、そうではない。誰から見ても美しく洗練されて、しかも人妻である女を征服したいだけだ。この俺が相手してやるっていってるのに、何で返事寄越さないの? 大人の女になったタチヤナからしたら、この男の浅さも何もかもお見通し。初恋の思い出を当の相手に汚されるほど嫌なことがあるだろうか。こんないけ好かない男、今すぐ消えてほしいんだけど。
    ああ彼女は、今になってあの時の復讐をしてるのか…。とか何とか、勝手に悲劇の主人公を気取ればいいよオネーギン。
    (映画、観た? 白い氷上でスケートをするタチアナは黒一色の衣装で、凛とした美しさ。まあね、これではね、オネーギンでなくても見とれるよね)

  • 恋のすれ違いを描いた作品。
    まだ少女だったタチヤーナは初恋の人オネーギンに恋文を認めるが、オネーギンはそれをけんもほろろにあしらってしまう。
    数年後オネーギンは上流階級が集まる社交場でタチヤーナを見かけたが、今度は彼が彼女に惹かれてしまった。
    タチヤーナは心の奥底ではオネーギンをまだ慕っているものの、既婚者という立場上オネーギンを冷たく突き放すのであった。
    タチヤーナのオネーギンに対する態度は立派であると思うと同時に、親族からの期待を背負いそうせねばならない彼女の立場を考えると息が詰まる思いだった。
    200年ほど前のロシアの貴族の生活の様子が描かれていて興味深い。
    いまいち理解できない部分も多く、当時の国際関係や文化を知っていればより楽しめたと思う。

  • ロシア政治の先生に勧められ購入。
    ロシア式の自由主義はヨーロッパ製のものとは違う、怠惰なものでありそれをよく表現している作品だという。オネーギンはこの時代の青年貴族の象徴的存在であり、国民性がよくわかる。タチアーナはロシアの美徳を表しているという。色んな解釈が出来そうだ。

  • 峻厳・・・非常にきびしいこと。
    ex:私は冬のように冷ややかで清らかで、近づき難い、峻厳な、無欲てんてんたる、不可解な美女たちを知っている。

    嬌態の女(コケット)は冷静に男心を判断するが、

    炯眼・・・鋭い目つき
    ex.炯眼なる詩人トリケ

    階段(きざはし)
    ex.この世の階段のうちで、

    若い時に若かった人は仕合わせである。
    よい時期に成熟した人は仕合わせである。

    衒学(げんがく)
    ex.卑俗なテーマも永遠の心理も衒学趣味さえ聞かれぬ分別くさい話が、それをさえぎる。

    焦がれ死

    媚態(びたい)

    主顕節(しゅけんせつ)
    ex.主顕節のころの厳しい寒さ

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