- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003260432
感想・レビュー・書評
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ロシア文学の最も偉大とされる詩人プーシキンの散文小説(1833〜36)。「ボルジノの秋」も終わり、妻のナターリヤとともに屈辱の宮廷出仕を強いられていた最中に書き進められたものである。
プガチョフの反乱に材をとったものであるが、プガチョフが善玉として描かれていたのが意外だった。反乱者に英雄像を見出すのは『ポルタヴァ』のマゼッパにもつながる手法で、おそらくロマン主義の影響があるのだろう。伏線が豊富で、悪く言えばかなりご都合主義的な展開が多い。がその分純粋な冒険小説として読む面白さも備えているのだろう。
全編の雰囲気はゴーゴリ『タラス・ブーリバ』を彷彿とさせる。こういう歴史物は個人的には全部吉川英治に見える。面白いのだが再読するほどではないかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
■「前書き」を読んだだけでこれ絶対に面白いゾと確信していたが。……う~む、ホンマにおもろいなぁ~。
■わたし(ペトルーシャ)は頑固おやじの思い付きから、都会ではなく僻地での最初の軍務を命じられ――
当地へ赴く道すがらケッタイな男たちと知己になり――
しかし期待してなかった赴任地で待っていたのは上司の美しい娘マリアで、たちまち彼女にのぼせ上がり――
恋敵とは殺し合いの決闘のすえ深手を負い――
生死の境をさまよいながらも看護を通じてマリアと心を通じ合わせるが――
そんなふたりの周囲にはもう、ロシアを大混乱に陥れた悪名高きテロリスト、プガチョフの軍馬の響きが迫っていた……。
■第七章「強襲」ではマリアの両親がプガチョーフによって絞首刑に処せられるのだが、この章のエピグラフがおもしろかったので(”民謡”とある)ここに載せておこう。
――わたしの首よ、わが首よ、
よくも仕えてくれた首よ!
仕えてくれたよ、わたしの首は、
三十三の永の月日を。
ああ、仕えた褒美にわたしの首は
利得(おあし)もよろこびも貰わなかった、
親切な言葉も掛けては貰えず、
高い位にもありつけなかった。
わたしの首が褒美に貰ったのは
高くそびえる柱が二本、
それに渡した楓の横木と、
もひとつ絹のくくり縄。―― -
世界史を勉強する上で、教科書に出てくる小説は読んだ方がいいということを聞き昨年から少しずついわゆる文学作品を読んでいる。その中の一つがこれ。
そもそも最終的には『戦争と平和』と『カラマーゾフの兄弟』を読みたいのだが、そのためにはロシア文学に慣れないとなと思ってこの作品にした。
まずはやはり人物の呼称がいろいろ変わるところが馴染めない。きちんと見れば違う人物なのだが、なんとなく見ていると全部同じ人に読めてしまう(笑)登場人物がそれほど多くないこの作品だから何とかごまかしながらも理解できるが、これ以上増えるとやはり書いて覚えないといけないのかなとおもってしまう。
内容としては短編ながら家族の生活記録と歴史小説の融合というものが上手に出来ていて、分かりやすく、かつ心に響くものがあった。しかしすごくおもしろいかといえばそうとも言えず、何か物足りなさを感じてしまう。それはきっとエンタメ小説として読んでしまうからであって、文学としてこの作品をどう捉えるかで感じ方が自我ってくるのだとうと思った。そのあたりの捉え方が自分にはまだまだ出来ていないのかもしれない・・・そうなると『戦争と平和』などはまだまだ読むには時期尚早なのかも・・・とにかく色々読んでいこう。 -
「ロシア」のおもしろさに気づけた一冊。
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20030920
高2にはまだ早かったな。いつか再読したい。 -
1939年に初版が出ていて、そのほぼ70年後の2006年に改訂版として出されたもの。
宝塚歌劇団で『黒い瞳』として上演されて以来ずっと読みたいと思っていた作品。
やっと読めました。
舞台設定のある当時のロシア帝国についてなんて、何も知らないし、
ましてや当時のロシアの人々の生活の様子についても何も知らないけれども
ストーリーはちゃんと入ってきました。
人名がややこしくて、同一人物を指しているのか、別人なのかわからずに読んでしまっている
場面も多々ありました(本当に、冗談でなく本当に多かった)。
それに、「なんだろうこの表現は」と思った箇所も多くて、それはおそらく、
翻訳に取り組まれた時代も大きく反映されているのだろうことが
感じられる場所でもありました。