- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003260432
作品紹介・あらすじ
プーシキン晩年の散文小説の最高峰。実直な大尉、その娘で、表面は控え目ながら内に烈々たる献身愛と揺るがぬ聡明さを秘めた少女マリヤ、素朴で愛すべき老忠僕-。おおらかな古典的風格をそなえたこの作品は、プガチョーフの叛乱に取材した歴史小説的側面と二つの家族の生活記録的な側面の渾然たる融合体を形づくっている。
感想・レビュー・書評
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すげー面白い。
全然あらすじ知らないで読んだから、誰がどういう状況に追い立てられるのか最後まで全然わからなかった。
一個ずつの伏線が最後に効いてきて、ひっくり返ってやきもきさせられる。
プガチョーフという悪役と、主人公のやりとりがたまらん。
ぞくぞくするポイントがいっぱい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
つまり対立関係にある側の娘。そこに見えないルールがある。
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軍隊に放り込まれた貴族の息子ペトルーシャがそこで出会ったマリヤ、そして出くわしたプガチョーフの叛乱の話。
ペトルーシャの若さ故のわがままなところや頑固な点も、元々持っている素直で穏和な気性で相殺されているな、という感じ。なかなかの好青年。
プガチョーフは敵とはいえ恩を忘れない律儀な人物。そうかと思えば実に狡猾なシヴァーブリンも出てきて、悪党にも色々タイプがあるな。「あの時服をやっただろう!」としつこい従僕サヴェーリイチや、ミローノフ大尉のところはおしどり夫婦だしで、思ったよりコミカルな部分が多く、読みやすかった。 -
ロシア文学の最も偉大とされる詩人プーシキンの散文小説(1833〜36)。「ボルジノの秋」も終わり、妻のナターリヤとともに屈辱の宮廷出仕を強いられていた最中に書き進められたものである。
プガチョフの反乱に材をとったものであるが、プガチョフが善玉として描かれていたのが意外だった。反乱者に英雄像を見出すのは『ポルタヴァ』のマゼッパにもつながる手法で、おそらくロマン主義の影響があるのだろう。伏線が豊富で、悪く言えばかなりご都合主義的な展開が多い。がその分純粋な冒険小説として読む面白さも備えているのだろう。
全編の雰囲気はゴーゴリ『タラス・ブーリバ』を彷彿とさせる。こういう歴史物は個人的には全部吉川英治に見える。面白いのだが再読するほどではないかも。 -
■「前書き」を読んだだけでこれ絶対に面白いゾと確信していたが。……う~む、ホンマにおもろいなぁ~。
■わたし(ペトルーシャ)は頑固おやじの思い付きから、都会ではなく僻地での最初の軍務を命じられ――
当地へ赴く道すがらケッタイな男たちと知己になり――
しかし期待してなかった赴任地で待っていたのは上司の美しい娘マリアで、たちまち彼女にのぼせ上がり――
恋敵とは殺し合いの決闘のすえ深手を負い――
生死の境をさまよいながらも看護を通じてマリアと心を通じ合わせるが――
そんなふたりの周囲にはもう、ロシアを大混乱に陥れた悪名高きテロリスト、プガチョフの軍馬の響きが迫っていた……。
■第七章「強襲」ではマリアの両親がプガチョーフによって絞首刑に処せられるのだが、この章のエピグラフがおもしろかったので(”民謡”とある)ここに載せておこう。
――わたしの首よ、わが首よ、
よくも仕えてくれた首よ!
仕えてくれたよ、わたしの首は、
三十三の永の月日を。
ああ、仕えた褒美にわたしの首は
利得(おあし)もよろこびも貰わなかった、
親切な言葉も掛けては貰えず、
高い位にもありつけなかった。
わたしの首が褒美に貰ったのは
高くそびえる柱が二本、
それに渡した楓の横木と、
もひとつ絹のくくり縄。―― -
なんて古風なお話…!!まっすぐな貴族の坊っちゃんが恋のために戦う。主従の絆あり、敵方との親玉との奇妙な友情あり…。好みど真ん中。完璧です。
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世界史を勉強する上で、教科書に出てくる小説は読んだ方がいいということを聞き昨年から少しずついわゆる文学作品を読んでいる。その中の一つがこれ。
そもそも最終的には『戦争と平和』と『カラマーゾフの兄弟』を読みたいのだが、そのためにはロシア文学に慣れないとなと思ってこの作品にした。
まずはやはり人物の呼称がいろいろ変わるところが馴染めない。きちんと見れば違う人物なのだが、なんとなく見ていると全部同じ人に読めてしまう(笑)登場人物がそれほど多くないこの作品だから何とかごまかしながらも理解できるが、これ以上増えるとやはり書いて覚えないといけないのかなとおもってしまう。
内容としては短編ながら家族の生活記録と歴史小説の融合というものが上手に出来ていて、分かりやすく、かつ心に響くものがあった。しかしすごくおもしろいかといえばそうとも言えず、何か物足りなさを感じてしまう。それはきっとエンタメ小説として読んでしまうからであって、文学としてこの作品をどう捉えるかで感じ方が自我ってくるのだとうと思った。そのあたりの捉え方が自分にはまだまだ出来ていないのかもしれない・・・そうなると『戦争と平和』などはまだまだ読むには時期尚早なのかも・・・とにかく色々読んでいこう。 -
主人公ピョートル・アンドレーイチとプガチョーフが敵でありながら、助け合う密接な関係が面白かった。
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歴史をベースとした、壮大な冒険ファンタジーと言ったところか。特に深いメッセージがあるとは感じられないが、ワクワクしながら読み進めた。
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遠い遠い昔の読書である。題名に「娘」と入っているから、当時小学2年生か3年生の男児であった私が自分で選んだ訳ではない。姉さん達がカバヤキャラメルの景品券を集めて取寄せた物だった。それを弟の私も楽しませてもらったものだ。ザラ半紙よりはマシだと云う位いの粗末な紙を使っていた。内容は、主人公の僕と、僻地の任地守備隊司令官の娘との恋物語で、司令官殿の軍の位が大尉だと云う事だったと思う。同じく司令官の娘マーシャに思いを寄せる先輩士官のシバープリンとの決闘もあり、挿絵を見て「西洋世界の剣術はこんな感じなのか」と思った。それと反乱軍首領のブガーチョフとの間の奇妙な友情とそこから主人公が持つ複雑な感情「大敵(反乱者)でもあり、友人でもある。」が主題だったと思う。
【鹿児島大学】ペンネーム:(なし)
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鹿大図書館に所蔵がある本です。
〔所蔵情報〕⇒ http://kusv2.lib.kagoshima-u.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?fword=11111051172
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分かりやすい勧善懲悪!
とは言え、真の敵がプガチョフじゃないところが面白い。
敵が尊敬できて、味方にどうしようも無いのがいて、逆境でも自分の信念をつらぬきつつ切り抜ける主人公が、デュマの『ダルタニャン物語』のダルタニャンを思い出させた。
あれもこれも、主人公が格好良くて読後感が最高。 -
かなり読みやすい。誠実な士官の青年と純情な少女の運命にハラハラし、応援してしまう。劇のような幕切れには、幸せな気持ちになった。
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自分と他人に正直で、他人に優しくあれ、という人生の基本的な戒めが明るく分かりやすく語られている物語。サベェーリイチが最高だわ。
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「ロシア」のおもしろさに気づけた一冊。
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プーシキンの着想は史実であるプガチョフの乱に興味を持ったことですが、モチーフに大きく影響したのはある実在の人物を知ったことだといわれています。
プガチョフ一派に捉えられ通訳として働き、鎮圧後に処刑されたとも、女帝エカチェリーナ2世の恩赦を受けて釈放されたとも言われているミハイル・シヴァンヴィチ少尉がその人物です。
この人物をモデルにして、主人公ピョートル・アンドレーイチ・グリチョフと宿敵シヴァーブリンが生まれたというのが通説となっており、読んでみると「なるほど」と思います。
あまりにも通俗的で自分のためになら信念など、ころころ変えてしまうシヴァーブリン。富豪の家庭に生まれ、坊ちゃん育ちながら、様々な人生経験を経ながらも、次第に曲げてはいけない信念というものを直感的に体得、実践していくグリチョフ。シヴァーブリンは「悪」で、グリチョフは「正義」と言ってしまえば...
【開催案内や作品のあらすじ等はこちら↓】
http://www.prosecute.jp/keikan/051.htm
【読後の感想や読書会当日の様子などはこちら↓】
http://prosecute.way-nifty.com/blog/2009/06/51-5131.html -
20030920
高2にはまだ早かったな。いつか再読したい。 -
1939年に初版が出ていて、そのほぼ70年後の2006年に改訂版として出されたもの。
宝塚歌劇団で『黒い瞳』として上演されて以来ずっと読みたいと思っていた作品。
やっと読めました。
舞台設定のある当時のロシア帝国についてなんて、何も知らないし、
ましてや当時のロシアの人々の生活の様子についても何も知らないけれども
ストーリーはちゃんと入ってきました。
人名がややこしくて、同一人物を指しているのか、別人なのかわからずに読んでしまっている
場面も多々ありました(本当に、冗談でなく本当に多かった)。
それに、「なんだろうこの表現は」と思った箇所も多くて、それはおそらく、
翻訳に取り組まれた時代も大きく反映されているのだろうことが
感じられる場所でもありました。