狂人日記 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1983年10月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784003260517

感想・レビュー・書評

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  • ゴーゴリは、ウクライナ生まれ。作家としての活動は、当時のロシアの首都サンクトペテルブルクに移り住んで以後のこと。本短篇集に収まるのは『ネフスキイ大通』『肖像画』『狂人日記』の三作品。この後に書かれる『鼻』や『外套』などの小品などは「ペテルブルクもの」などと呼ばれています。

    さて、短篇集の作中で、ドイツ、イギリス、フランス、フィンランド、スペインの人を頭が悪いとか、なんてばかな国民だろうなどなど…とディスっているところや、職業では画家がこき下ろされているところなど、読んでいて大丈夫なんだろうかと思いました。しかし、その他にも適宜冗談を入れてあるおかげで、どれも発狂したり精神を病んでしまう狂気を描いた作品にも関わらず、とても面白く読むことができました。

    また、時間をおいて読み直したい作品ですね。

  • 表題作「 狂人日記 」と「ネフスキイ大通り 」の中編は2編ともわりと凡庸。「狂人日記」はペテルブルクの下級官吏の妄想と破滅を描く。自分をスペイン王と思い込む。統合失調症まんまな展開。だがそれ以上の深まりもなく物足りない。

    なのだがもう1つの所収作品「 肖像画 」が面白い。この1作だけで星4つ。
    ペテルブルクの若い画家チャルトコーフの成功と破滅をたどる。彼の突然の成功をもたらしたのはある不気味な肖像画で、この絵には悪魔が塗り込められていた。このふたつの話が二重構造になっている。その構成には少々のぎこちなさはあるのだが、全編にみなぎる情念と迫力がそれを凌駕する。

    思えば“画家もの”の小説には面白いものがあると思っている。「月と六ペンス」も大好きな小説だ。
    今後も“画家もの”を読んでいきたい。

    こういう掘り出し物に出会えるから読書は楽しい。

  • 久しぶりに、ゴーゴリを読む。
    やっぱり面白い!
    本書は、狂人日記のほか、「ネフスキイ大通り」「肖像画」が収められている。
    三編とも都会のペテルブルグを舞台とした物語で、そのどれもが、妄想や幻想、発狂していく男が主人公となっている。

    「肖像画」の一部では、一人の才能ある青年画家が、偶然手にした肖像画から大金を手にしたことで破滅していく姿が描かれている。
    彼は評判を金で買い、流行画家となって権威を手にする。
    才能はあったが、貧乏であった頃にはそういった画家を蔑んでいたものの、彼も誘惑に負けてしまい、才能を磨く努力を忘れてしまう。そんな時、同じく才能があり、さらに一心不乱に努力を重ね、彼とは反対の道を歩んできた画家が描いた傑作の絵を目にし、やっと目が覚めた彼だったが、今さらそのような絵を描こうとしてみても、まったく筆が動かず、構図もありきたりなものしか思いつかない…。
    失った時間は戻らないどころか、あったはずの才能さえも完全に自分で潰してしまったのだ。
    これは、極端ではあるが、なかなかよくある事だと思う。
     二部では、その「肖像画」が描かれた経緯、そしてそれを手にした人々が破滅してきたいわくつきの過去があることが明かされている。

    「狂人日記」は、令嬢に恋している小役人が妄想にかられ、発狂していくさまが日記形式で綴られて
    おり、これぞゴーゴリ!という感じ。私の好きな滑稽なユーモアがたっぷり。
    発狂の第一サインとしては、令嬢の飼っている犬が近所の犬とおしゃべりし、手紙!のやり取りをしている、ことを発見することだ。犬が書いたとされる手紙が紹介されているが、これが令嬢の飼い犬らしく気取った口調でなかなか楽しい。
    あげくは自分がスペインの王位後継者と思いこみ、スペインからの使節が来るのを「一日千秋の思いで待っている」。
    そのころには、周りから発狂していることが認識されており、彼がやっと迎えに来たと思ったスペインの使節と行ったところは収容施設…。
    その後も気が狂ってしまった彼の言動は続くが、最後の終わり方がさすが。面白い。

  • 3篇収録。狂人日記だけで星4つ。ネフスキー通りは刺さらず。肖像画は普通。

  • ネフスキイ大通り20240812読了。

  • 日常に蔓延る非日常。毎日が祭りのような場所があるとするなら、それは非日常と呼べるだろうか。そして、それを日常と混同せずに過ごすことはできるのだろうか。認識という不確かなもの、解釈、自分だけにしかないものなら異常とされ、理解を得られるものなら正常とされる。その構図が正常か異常かなんて、馬鹿らしくて考えたくもない。日常と非日常、それが混ざり合うと人は絶望を味わうのだろう。

  • 久しぶりの外国人作家の小説。正直「ネフスキー通り」の冒頭部分は世界観に入りずらかったけど、後半からめちゃくちゃ面白かったです!「肖像画」も「狂人日記」もだんだんあることで狂っていく人間の物語でしたが、一番好きなのはやはり「狂人日記」でした。彼の日記の日付がいつもと違うことに気づいた時はゾッとしました…。「大抵は寝台でごろごろしていた」という表現が寂しくて好きです。あと、最後の一文でものすごく寂しい気持ちになりました。これが悲壮感というものなのかしら…。

  • 「ネフスキー大通り」
    よ~い、ドン!でナンパに繰り出したふたりの男たち。しかしそれがネスフキー大通りでなら簡単にコトは運ばない……。

    「肖像画」
    曰く因縁を持つ呪われた”肖像画”。それを手にする者は必ず精神に異常をきたし……。よくあるパターンのやつ。

    「狂人日記」(ゴーゴリ)
    自らの発狂を押しとどめることができず、哀れにも暗愚の底へと真っ逆さまに墜落していく男。幽閉、拷問の果てに男は”おっ母さん”を求めて声をふり絞るが……。「狂人日記系」の傑作。最後はキマった!
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    「狂人日記」(モーパッサン)……82歳で惜しまれつつ亡くなったある”高等法院長”が残した手記。そこに書かれていたのは命を奪うことへの抑えがたい衝動と彼が実際に手を下した忌まわしい殺人の記録であった。

    「狂人日記」(魯迅)……”わたし”の知人の弟がしたためた二冊の「狂人日記」。出だし、それを知人が”わたし”に「大笑いしながら」献じてくれた、という。ここがとっても気持ち悪い。

    「黄色い壁紙」(ギルマン)……これは狂人が女性。一抹の美術的なセンスが感じられる。

    「赤い花」(ガルシン)……数十年ぶりに読んだら、これは日記の体裁じゃなかったのネ……。それにしても、瘋癲病院内と狂人の心中の描写はさすが。最後の狂人の死は哀れだが、何だか神々しくさえある。これも傑作。

    「うつせみ」(樋口一葉)……これも狂人が女性。そして日記ではない。この作品だけ、発狂するにいたった出来事について言及されている。……でもそんなこと起こらなかってもこの女なら狂ってただろう。で、この狂いっぷりがとっても痛々しい。

    「河童」(芥川)……主人公は河童の国でインテリジェンスあふれるアクティブな経験をする。そんな主人公が目下収監されている精神病院には旧知の河童たちが頻繁にお見舞いに訪ねてくる。だからほかのと比べて明るくて前向きなのだ、その狂い方が。なんだかちょっと、ぼくも狂ってみたくなるくらいに……。

  • 描写は丁寧で芸術的。また、ロシアがアートな国であることは十分理解できた。ロシア語を専攻している身としてロシアの日常を垣間見れたことはプラスになるでしょう。
    内容に関しては、3編とも理性を失うまでがあまりにも急展開すぎるしきっかけも浅すぎる印象を抱いた。更に伏線も少ないため、読了したときのアハ体験が無くとりわけ大きな感想も抱けなかった。短編小説だから厚みが出ないのは仕方がないが、このようなテーマを3作品作り上げるなら1つの長編小説に込めて欲しかった。

  • 表題作はなかなかの作品で興味深く読めた。他、二作は今的な洗練とは少し距離のある小説の試行錯誤が感じられた。

  • ■ネフスキイ通り
    ・・・都会小説ってんでしょうかね?
    煙草がやめられないから鼻なんかいらないってのは
    過激だなあ。


    ■肖像画
    ・・・怪しい名画に振り回される辺り
    ドリアングレイか?と思ってたら。
    絵から人が出てきたり、最後には消えたりが
    ユルスナールの「老絵師の行方」っぽい。
    ま、芸術家の卵が金銭で堕落ってよくある構成ですな。
    一転して、二部はその裏話というかメイキングというか。
    くどさが身上!!

    ■狂人日記
    ・・・発狂する所の描写が凄かったぁ〜
    イプセンの「幽霊」ばりでしたわ。

  • 「ネフスキー大通り」と「肖像画」について。
    いずれも、フォーカスされている人物が破滅に陥るタイミングが早く、まだ話の終わりまでページ数が残っている理由はそれだったのかと思わされた。というのは、後半あたりで、人物の視点が切り替わるのだ。

  •  どれも面白く読みました。まず、都会に生きる人びとの、見た目だけでは分からないその暮らしぶりをあざやかに描く「ネフスキイ大通り」は、仮にも都会と呼ばれる場所に生きているわたしが一度は考えたことのあるテーマで、ぐいぐい引き込まれてゆきました。

     呪いとも言える恐ろしい絵画の物語である「肖像画」は、第一部のなかで恐ろしい絵画から金貨が発見されると言うところからして、貧乏な芸術家が「こうなったらいいなあ」と空想するのではないか、などと邪推しながら読んでゆくと、そこに著者の芸術に対する考え方が色濃く表れているように思います。

     そしてそれまでの描き方とまた違うのが「狂人日記」だと思います。下級官吏の精神病的な狂気を描き、その恐ろしい現実世界での出来事(おそらく精神病院への強制的な入院だと思います。最初は監獄かと思いましたが(笑))を認識できていない様子まで描き切ってしまう。

  • 収録の「肖像画」はホラーとして読めましたが、他の作品は分かりません。物語になってないと読めなくなったのかなぁ。

  • 資料番号:010788339 
    請求記号:983ゴ

  • 名作

  • 「ネフスキイ大通り」
    無垢で清純だと思い込み女のあとについていくと…そこは娼館で、当惑のなか自死する男。〈われわれは、淫蕩の毒気に染められた美女を見るときほど、強い憐憫の情に誘われることはない。(中略)ただわれらの頭のなかではやさしい美のみが、ただ無垢と清純とのみがむすびつくはずなのに。〉
    かと思えば軽薄な男が「これはちょろい」と思える人妻にちょっかいをかけ亭主にふるぼっこ……。
    外見にだまされちゃいけませんよ、とまとめはあるけれど何のこっちゃわかりませんな。

    「肖像画」
    ある不吉な絵画を手にしたことで世間的な名声を手に入れ、しだいに不幸に陥る画家の顛末。第二部はその肖像画が描かれた背景…。
    説得力をもたせるためかなんか知らんけど、全体的に冗長に感じる。

    「狂人日記」
    新訳でないかなあ。こんな厳めしい文章じゃ笑えない。

  • 狂ってる!!!!!魯迅先生すごい…
    人間怖いなと思いました。

  •  『ネフスキイ大通り』、『肖像画』、『狂人日記』が収録されている。どの話にも狂人になってしまう人がいた。狂人になった末、死んでしまうか、不幸な人生を送ることになってしまうか……。不思議な話だった。
     これを見て思ったことが、ロシアの作家は狂人になっていく人間を描写した話を書く人が多いのだな、ということ。最近読んだ本だと、『六号病棟』や『カラマーゾフの兄弟』なんかもそうだ。
     作品自体の話に戻る。登場人物がある女性に恋してしまい、そのために人生が狂っていくという傾向が多数見られた。それと、作品の中でも特に印象的だったのが、『肖像画』の主人公が守銭奴になって段々堕落していく様。お金にはあまり執着しすぎないでおこうという気になった。
     後から話を思い出してみると、「ああ、面白かったな。また読みたいな」と思う作品が全てだった。読書中に楽しいと思ったのは『肖像画』の第二部以降だった。このことを考えると、『鼻』や『外套』のほうが面白かったと思う。
     ゴーゴリがこの小説を書いた頃は検閲が行われいたため、限られた言葉を使わなければ、検閲官の目をくぐり抜けられなかった。もう少し自由に書けていれば、今残っているものとは違う内容になっていたのかもしれない。

  • 人間の脳髄はカスピ海のほうから風に吹かれてやってくるのさ

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著者プロフィール

ロシアの代表的な文学者。未完の大作「死せる魂」はじめ「外套」「鼻」など。後代への影響ははかりしれない。

「2016年 『死せる魂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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