外套・鼻 (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.65
  • (75)
  • (150)
  • (202)
  • (8)
  • (4)
本棚登録 : 1165
レビュー : 130
  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003260531

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・ゴーゴリの短編小説2編です。どちらの作品もしがない下級役人の悲哀とその役人の真面目さがかえって滑稽さに結びついているという皮肉な面白さがありました。

    『外套』は、ひたすら書写に仕事の生きがいを見出している下級役人がはからずも外套を新調することになり、それに付随して起こった悲喜こもごもの出来事を滑稽に描写した作品です。
    主人公の下級役人本人はいたって真面目ですが、その真面目さを事細かく描写することで可笑しみを増しています。読者からすれば外套の新調という些細な話ではあるのですが、ゴーゴリの手にかかれば、主人公の困惑から喜び、そして一転絶望と、その顛末に応じた感情が面白可笑しく伝わってきます。最後は意外な展開でしたが、不条理な悲哀を感じさせるものの、このどこかひょうきんな物語の締めくくりとしては、これまたゴーゴリの茶目っ気ぶりが発揮されているといえるでしょう。
    自分にとっても哀しみと滑稽さを同時に感じた複雑な作品でありました。(笑)

    『鼻』は、ある日、目覚めると鼻が無かった!という奇想天外な話です。しかも、その鼻は近くの床屋の朝食のパンの中に入っていたり、きちんとした身なりで馬車から降りて礼拝に向かうなど、ちょっとどのような光景なのか想像すらできないほどのハチャメチャな場面が真面目な様子で描写されているのが楽しいです。
    これまた主人公の下級役人のあくせくぶりが面白可笑しく表現され、実際、切実な問題(?)であったはずなのですが、事態が事態だけに主人公のその滑稽ぶりが何とも可笑しかったです。

    2作品ともゴーゴリのひょうきんさが伝わる作品ですが、惨めな人をじっと観察して笑い飛ばすような残酷な面も併せ持っているような気もします。しかし、抑制の利いた文章表現が適度な可笑しみと悲哀ぶりを両立させ、逆に印象深い作品となっています。

  • 外套は内面を変えれない主人公が外套を纏うことにより内面の向上も付随したと勘違いしてしまう。いざ外套を剥ぎ取られて内面の変化がいざ錯覚と感じて失望の中死んでしまう。
    鼻は逆で鼻を失った主人公が狼狽えて鼻を捜し結局元に戻る小説。
    二つの共通点は内面と外面はそれぞれ磨かなければならない。

  • ドストエフスキーをして「我々は皆ゴーゴリの『外套』の中から生まれたのだ!」と言わしめたというだけあって、名作。
    一見してとるに足らない人生の中にも燦然と輝く瞬間があり、死に至らしめる悲劇があり、人間の善意や悪意、傲慢や小心、清浄や猥雑、そういうものが混然とした人間世界の中で決して矮小化せずに描かれている。
    つまらない人間(?)なのに、主人公に一度会いたくなる。

  • 図書館で前から気になっててやっと読んだ。
    ゆかいゆかい。読んで良かった。

    鼻を楽しみにしてたけど思いのほか外套が良かった。ずっと漂ううらかなしさ、救いのなさ。
    冬にこの話が読めて季節ぴったし!ラッキー

    鼻はぶっとんだストーリーをこんなまじめに書き表せるなんて、ゴーゴリこりゃ賢い人だ~という感想。

  • 外套のイタイケなアカーキイ・アカーキエヴィッチの姿が心から離れない。不器用、けれど勤めを純粋に、努めて果たす人。彼の小さな幸せの出現と結幕に心が動く。

  • 青空文庫。鼻が独りでに飛び出して行く不思議な話。ロシアの官僚を風刺しているのか。。?

  • かのドストエフスキーにして「われわれは皆ゴーゴリの『外套』の中から生まれたのだ!」といわしめた作品。
    うだつがあがらず、周囲に馬鹿にされ続けながらも、日々書写という自分の仕事を全うし続けた末、唯一の希望たる新調の外套を不合理に奪われ、人知れず死んでいった主人公の哀しい話…それなのになぜ、こんなにも気持ちが穏やかになるのだろう。
    主人公のアカーキイ・アカーキエヴィッチにぜひとも会ってみたいと思えるのはなぜだろう。
    彼だけでなく登場人物すべて、この作品には心底悪意の人間は誰一人としていない。
    ゴーゴリの登場人物達に向けられた優しさの故だろうか。
    そして、舞台となるペテルブルクの描写の何と魅力的なこと。
    垂れ込めた雲の重苦しさと冷たい石壁や土埃の匂いが、この街で生活する人間の様々な営みを一層浮き立たせている。
    『鼻』、なんとも不思議で痛快な話。ある朝、床屋の主人が食べようとしたパンに誰かの“鼻”が入っていて、ある朝、少佐の“鼻”が無くなっていた。少佐は自らの“鼻”を探すべく奔走する。
    随所に見られるゴーゴリの読者への配慮が優しい。
    2作とも、登場人物に会いたいと思い、ペテルブルグに行ってみたいと思い、果てはゴーゴリその人に会ってみたいと思わせてくれる作品である。
    訳者はゴーゴリ作品翻訳にその生涯を捧げた平井肇氏。死の床でもゴーゴリの原書を放さなかったそうだが、その訳文はゴーゴリの人柄まで感じさせてくれる。
    平井氏の訳で読めることへの幸せを感じた。

  • ゴーゴリの代表作かな。外套の哀れさ、悔しさ、幽霊になってまで彷徨う主人公。小説の原点のような気がします。

  • ロシア版『芋粥』っていう話。

    実際には芥川龍之介がゴーゴリに影響されたんだろうけど。
    "鼻"の方も面白かったし、今迄ゴーゴリは未読だったけど、他の作品も読みたいと思った。

  • ドストエフスキーがそこまで言うならと思い読んでみたらこれがおもしろい。
    「外套」のアカーキイさんが不憫でかわいそうでしょうがないけど、そういう人に対するゴーゴリのまなざしはとても優しい。
    ところで「アカギ」ってこっから名前取ったんじゃないかなんてふと思ったけど考えすぎか。
    「鼻」はカフカや安部公房的なストーリーで、外套よりエンタメ。
    荒唐無稽なようでいて、自分が悪いわけでもないのにひどいことに巻き込まれるというのは人生のあるあるなので、これもまたあるあるなんだと思った。

全130件中 1 - 10件を表示

ゴーゴリの作品

外套・鼻 (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする