- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003260661
作品紹介・あらすじ
次々と苦い現実に直面し、幻滅を重ねていく主人公。理想を抱いていた青年がやがて世間ずれした俗物と化す。『平凡物語』とは、およそありがちな過程をたどっていく一人の人間の、微苦笑を誘う平凡な歴史の物語である。
感想・レビュー・書評
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田舎から出て来た青年が叔父さんを手本に一人前の男に成長する様子を描く。結構な皮肉の効いた作品だが、グレイズドーナツの糖衣のように優しさに包まれたもので、不快なものはない。辿った道は世間で言われているこうあるべきものという体制というか、形にはまるために本来持っている純粋な気質を押し殺す行為だった。当然妻の心の機微を感じられるような感受性は持ち得ない様子で、叔父の妻が光の存在のように描かれるが、甥も夫と同じ存在になってしまったと嘆く。叔父さんは妻の気持ちに気づいても、甥の歩む道に関しては何も言わない。
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叔母リーザのように、アレクサンドルのあの手紙の立派な思い、考えに感心したものだったが、アレクサンドルはまた変わってしまった。
結局、血は争えなかった。
アレクサンドルは、叔父ピョートルの後ろを行く。
一方ピョートルは、それまでの自分の行いがリーザの病を引き起こしたことを反省し、地位も富も売り払ってリーザのために尽くす決心をする。
対極した二人の物語は、流動し、訓戒を残して幕を閉じた。
二人の姿は、現代にも通ずる。
不変的な、正しい生き様・哲学などないのであろう。
人が与えたとしても、選びとって実際に当てはめるのは自分。責は結果とともに、自分の元に戻る。
結局は、自分の生き様は自分で決めて、動き、考え、修正を繰り返していく他はないのだ。 -
相変わらず迷走してる甥。
そして容赦のない叔父。あの依頼を受けて、甥はピンと来なかったのかな?
二人に対して叔母のバランス感覚がいい。
甥の夢を壊さず、上手く気持を引き立ててあげる優しさ。
なぜ叔父みたいな人と結婚したのか不思議。条件だけでは幸せになれないことを知っていそうなのに。
ラストは解説にあったように唐突な感じがある。
甥はいくら理性の人になろうとしたところで、また素晴らしい音楽や、美しい女性に出会ってしまえば簡単に揺らいでしまうように思う。
しかし叔父夫婦に関しては、もっと早くにそんな状況にならなかったのが不思議なくらい。
最後の二人の会話にはニヤッとした。
愛情を表すのに「卑しき金属」を貸したがるのが叔父のダメなところであり、かわいげでもあると思う。 -
上巻参照。