桜の園(訳:湯浅芳子) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1998年3月16日発売)
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  • 本 ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003262252

感想・レビュー・書評

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  • 世界的に有名な戯曲。訳者の「解説」を先に読むと、無策のまま領地を手放す主人公ラネーフスカヤ夫人の心情も理解できた。物語は130ページ(+解説が30ページ)。物語は喜劇調に進み、しかも感動する。サクサクと読める。
    天海祐希さんが、舞台「桜の園」に主演するとの新聞記事を読んで手に取りました。優柔不断で、優しいだけのラネーフスカヤ夫人をはじめ、登場人物の性格が際立つ台詞に魅了されました。

  • 1904年、露。
    既に失われた過去(老従僕)、失われつつある現在(領主兄妹)、台頭しつつある未来(学生、実業家)を、それぞれ象徴するような登場人物の対比が印象的。同じ言葉で話しているのに、話が全く噛み合わない。個人的には慕っていても、価値観が違いすぎるので、すれ違うばかり。せっかくの対話も、結局何も生み出さない。まるでその後のロシアの歴史を暗示しているようだ。この作品を喜劇だと作者は言うが、物語の内容以前に、これを喜劇と呼ぶ感覚自体、相当悲劇的だと思うのだが…。屈託なく新時代に適応しようとする娘の存在が、唯一の救いだ。

    「園の桜の実の一つ一つ、葉の一枚一枚、幹の一本一本から、人間の目があなたを見てはいませんか、声が聞こえはしませんか? 人間を所有する――この事実が、あなたがたみんなの、過去にいた人、現在いる人みんなの、人格を変えてしまった。その結果、お母さまもあなたもおじさんも、自分たちが負債をしょって生きていること、あなたがたが控えの間より奥へ通しもしないその人たちの、稼ぎによって生きていることに、気付いていないのです」

    「あなたは、大事な問題を片っ端から解いた気でいる。でもひょっとしたら、それはあなたがまだ未熟で、自分のことで本当に苦しんだ経験が無いからじゃない? あなたは、勇敢に前だけを見ている。でもそれはあなたの若い目に人生がまだ隠されていて、恐ろしいことは見えないだけじゃない?」

  • チェーホフは、この戯曲を喜劇として書き下ろしたのに、実際には悲劇として演じられたことに驚いたようです。

    確かに、話しの流れとしては悲劇でも、喜劇と思って読み始めると、そう思えてくるから不思議です。特に主役の夫人のノー天気さ。まるで誰かが何とかしてくれるだろうという、まったく他人事のような振る舞いです。その兄も変なプライドから、実業家を相手に、相手を蔑むような返事をしていたりと、現状をまったく分かっていなかったりします。この辺りは、農奴解放による主従関係の解消を頭に入れて読むと分かりやすいですね。自分は再読なので、成る程と納得しながら楽しく読めました(初読ではあまり面白くなかった)。

    この本、巻末の解説が秀逸で納得のいく説明が書かれています。翻訳者の洞察力に、ただただ感心しきりです。訳文も非常に読みやすかったです。

  • 解説まで読んで、なぜ『喜劇』として発表されたのか納得がいった!

    「人間を所有する——この事実が、あなたがたみんなの、過去にいた人、現在にいる人みんなの、人格を変えてしまった」

    登場人物のダメさや中途半端さが目立つけど、やっぱり私はチェーホフの人間愛を感じるし、信じる。

    底の知れないほど無垢で、しかし聡いアーニャは『ワーニャ伯父さん』のソーニャを思い起こさせる!

  • 舞台を見に行くので原作で予習。
    戯曲を読むのは初めてだったけれど、解説と注釈がとてもわかりやすい。

  • PARCO劇場に芝居を観に行ったので、改めて読み直した。上演を観たのは初めてだったけど原作に忠実なセリフ回しだった。ラネーフスカヤ役の原田美枝子さんがやっぱりすごかった。

  • 小田島雄志訳

    戯曲形式なので、軽く読めた。金持ち婆さんがいつまでも金持ち気分でいるところが滑稽だった。娘と養女の立ち位置が絶妙。まだ社会主義革命が起きていない頃のロシアはよかった。

  • 単に先祖から引き継いだ資産があるだけで世渡り能力のない地主階級が没落し、世間知のある新興民がその資産を手に入れる。時代の流れ。領主の女性がしょうもない男に身ぐるみはがされる、とか、領主の娘が商人や家庭教師など嘗てなら下の男と結婚を考えるなど、自然に没落ぶりが描写されている。
    でもやはり戯曲を読むのは苦手…人が覚えられないのにドンドンでてくるから。でもこれを見てわかるように演じる劇の大変さが少しわかったような。

  • 辻原登さんの「東京大学で世界文学を学ぶ」で読むべき本でチェーホフの全作品とある。
    40年近く前に大学の教養課程の演劇論で知り、「桜の園」を読んだが、こんな地味な舞台が世界で愛されているのが不思議に思った。

    訳者解説にある「誰もがへんに中途半端である」という言葉がしっくりくる。ラネーフスカヤ夫人についていえば、自業自得としか言いようがないだろうし、兄のガーエフも似たようなものだ。それでもチェーホフは働かない農奴主なんて許されないのも判りつつ、こうした登場人物達に憐みの眼を向けている。
    若いトロフィーモフやアーニャは理想に燃えるが、地に足が着いていないようだし、悲劇だけど、どこか喜劇的な色合い。

    さて、もう少しチェーホフを読もうと思う。何にしようかな。

  • お風呂で読了。貴婦人が好き。

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