われら (岩波文庫)

制作 : Евгений И. Замятин  川端 香男里 
  • 岩波書店 (1992年1月16日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003264515

作品紹介・あらすじ

20世紀ソヴィエト文学の「異端者」ザミャーチンの代表作。ロシアの政治体制がこのまま進行し、西欧の科学技術がこれに加わったらどうなるか、という未来図絵を描いてみせたアンチ・ユートピア小説。1920年代初期の作だが、最も悪質な反ソ宣伝の書として長く文学史から抹殺され、ペレストロイカ後に初めて本国でも公刊された。

われら (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 独裁体制によって奪われた個人の自由と、普通の意味における人間性。社会が全体主義によって支配エれると、こうなるのだろうなと思い、少し背筋が寒くなる。
    この小説は、書かれた当時のロシアを参考に書き続けられたものだという。
    「われら」という言葉は、同じ思想を持った、画一化された国民達である。今の日本で考えれば、例えば「ミギ」「ヒダリ」とに分かれ、それぞれの「われら」がいる状態。一つあるだけで充分なのに二つもあると、ただ社会扮断するだけで、何も産みださない不毛な状態だ。今こそ、日本人はこの本を読むべきかも・・・

  • はるか昔からの再読本。今回は読解力が上がっているせいかいろいろ楽しめた。80年台ブックガイドで、『1984』よりもこちらのほうがマニアックなどと読んだ覚えあり。
     『単一国』の誇る宇宙船〈インテグラル〉の作製担当者である主人公は、覚え書を書くようになった。理性と秩序を愛する主人公に接触してくる謎の女性…… 1920年に発表されたディストピア小説。発禁になり著者は亡命を余儀なくされた。当時のロシア・アバンギャルドのレトリックのパロディが駆使してあり独特の比喩や表現に面食らうがなれると面白い。グロテスクな安部公房のような印象。すっかり体制側の主人公が心を乱していくさまは実に面白い。

  • SFの大作!なにがすごいって26世紀の高度文明管理社会の科学技術の風物描写もさることながら、そこに生きる人々を縛る政治制度や人々の自意識がとっても26世紀的であったこと。しかもそんな高精度な文学作品が1920年に書かれたこと。同時代のソビエト批判!翻訳の妙!面白くて、とても怖い。

  • ディストピア(ユートピア〈理想郷〉の反意語)の特徴は完全な管理社会にあると一般的には考えられているが、合理性を突き詰めた世界と捉えるのが正しいと思う。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/03/blog-post_18.html

  • 1920から1921年に書かれた本。日本では大正時代。そんな頃に、こんな未来小説、しかもディストピアものが書かれていたことに驚く。単一国という緑の壁に囲まれた国、人間がナンバーで管理された社会。ガラス張りの部屋に住んでいて、丸見えってことは、床はどうなっているのかめちゃめちゃ気になった。単一国の外の世界は首からしたが毛むくじゃらの色んな色の人々が住んでいて、でもそんな進化あるかな?と思った。もしかしたら、遺伝子操作されたのかも。小物使いも面白い小説。

  •  1924年発表、ザミャーチン著。宇宙船インテグラルの製作担当官、Dの覚え書という形で話は語られる。管理社会が推し進められた単一国家では「われら」しか存在しないはずだったが、国家転覆を企てる女性Iに感化され、Dは革命に巻き込まれていく。
     独特な小説だった。同じように元祖ディスピア小説とされている「1984年」「すばらしい新世界」とは、少し違った小説だった。ユーモアがあるという意味では「すばらしい新世界」に近いのかもしれないが、向こうが演劇的なブラックユーモアに満ちているのに対して、こちらはより精神的というか、幻想方向に振っている印象がある。ガラスでできた街や緑の壁といった設定の詩的な雰囲気、中盤以降の主人公の精神の病み具合、
     そして何より比喩表現のユニークさ。円や三角形などといった幾何学的用語が多様され、特にそういった比喩が人物の容姿にあてはめられた場合、ものすごいユニークさを発揮している。このような文章表現は今まで見たことがなかったので、とても驚き、思わず笑ってしまった。
     本小説、ストーリー自体の内容としては、幻想的描写でぼやかされていはいるものの、よく見ると王道的である気がする。ラストも、さすがにディストピアものの元祖であるので、充分予想できたオチだろう(だが、唐突に暗いエンディングを迎える、著者の潔さには感動した。結末が予想できても、やはりショックはショックである)。それでも読む価値があると思うのは、とにかく文章の異様さが、他の小説では再現不可能な幻想性を醸しているからだ。
     そして当時の社会情勢を考えると、私には、その幻想性=想像力(作中の社会ではそれは悪いものだとされている)こそが、最も著者の言いたいことだったと思われる。つまり、本小説の文章の幻想性それ自体、著者の小説に対する態度それ自体が、ストーリーそのもの以上に、隠れた切実な訴えだという気がするのだ。

  • 6年ぐらい前に先生に言われて買ってそのまま放置してた。初読。中盤あたりからおもしろくなってきたけど、終盤の恩人との問答のところがよく分からない。世界の崩壊と理性の勝利。想像力の摘出によってDはその世界で合理的に生きていくんだろう。それが幸福であるかどうかは問題ではない水準で。記録をしていた頃のDが一番人間だった。

  • 不自由こそが幸福、全体主義を揶揄したアンチユートピア小説。反ソ宣伝の書としてソ連解体まで発禁本だった。ロシアアヴァンギャルドの傑作。私って昔から人が必ず国家に所属しなければならないことを(しかも選べない)よく理解できないオバカさんなんだけど、国家存在の立て前は国民を守ることにあるわけでしょ。しかし管理の具合が過度になると個人は消失し、逆になると全体は崩れ秩序は乱れる。所詮空想の世界だからと『われら』の時代を侮ってたら足を掬われるね。現代の社会に適した考察、危険性をたくさん孕んでいる。私は私でありたいよ。

  • ディストピア小説になるんだろうけど、単純な「ディストピア観光案内」に留まってはいない。あるいはSFか、単純に「小説」と呼ぶべきか。未来人である主人公の心の動き、変化、とまどい、悩みが生々しく描かれる。

  • 人は番号で呼ばれ、行動(性行動さえも)が分単位で管理される世界。主人公はそれらの文明を他の星にも広めるための「インテグラル」の製作担当者。
    ある補助的散歩という名の行進の最中にI-330という女性に出会い、最初は抵抗するもののだんだんとその魅力の虜となっていく。そんな彼女はこの文明を壊し、自由を得るために活動しているのだった……

    結末は非常に救いの無いもので、想像力除去手術を主人公が受けI-330の目論見をすべて話してしまうというもの。
    逆にその結末だからこそ、この世界観がより恐ろしいものに感じるのかもしれないです。少なくともこのへたれの主人公が世界を救えるはずはない。

    解説中の「ユーモラスなパロディー作品」というのは的を得た表現だと思います。
    当時はユートピアがもてはやされていたのでしょう。

    この作品を読んでより一層幸せとは何かについて考えてみたくなりました。

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