ペトラルカ 無知について (岩波文庫) (岩波文庫 赤 712-4)
- 岩波書店 (2010年3月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003271247
作品紹介・あらすじ
善良だが無知と同時代知識人の批判を喰った著者は?アリストテレスを神とみて哲学=自然哲学とする一派への論駁と、人間主義と反権威主義、文献収集と古典語研究、雄弁やプラトンをめぐる基本構想を具体的に述べたルネサンス人文主義の宣言書。晩年の主著。
感想・レビュー・書評
-
ペトラルカの時代において、キリスト教を信じるということは、キリスト教以外を排除することを意味したのだろうか。古典学の方法において、ペトラルカは普遍的なことを喋るが、これではキリスト教信者以外が救われない。この本の射程から宗教がない現代をどう捉えるか、が私のこれからの自分自身への課題だ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年6月14日購入
-
新書文庫
-
九州フランス語文学会出版の「フランス文学論集」No44mp
高木雅恵さんの論考にでてた。
「カルメン」が自然の描写とかかなり意識して書かれてるって話。人文主義者らペトラルカなどが自然を賛美してたって話。
で、読みたくなった。 -
日本では余り知られていないが、ルネサンス時代人文主義の大物詩人、ペトラルカ。
友人を装って接近してきたアリストテレス信者の4人がペトラルカと談話した末、ペトラルカについて「善良だが無知」と断定。この件に関する論駁の書である。
ただし、ペトラルカは自分を「無知」とされたことに対し反論はしていない。むしろ、「無知」ではあっても「善良」でありたいというキリスト教的人生観を吐露し、その観点から、自然学的な知識を重視したらしい当時のスコラ/アリストテレス主義を批判しているにすぎない。
「獅子のたてがみには毛が何本あるとか、鷹の尾には羽根が何枚生えているとか、・・・たとえこうした知識が真であったとしても、幸福な生活とはなんのかかわりもありません。けだし、人間の本性ははいかなるものか、なんのためにわれわれは生まれてきたのか、どこから来て、どこへいくのか、ということを知らず、なおざりにしておいて、野獣や鳥や魚や蛇の性質を知ったとしても、それがいったいなんの役にたつでしょうか。」(P34)
これがこの本の核心部分とおもわれるが、こんにちの目で見るとこれは学問/科学のあまりにも素朴な否定とうつるだろう。
ここではむしろ、「いかに生きるべきか」という功利主義的な考え方が、純朴な知的情熱を排除していくという意味で、反-近代的でさえある。
「人間」を視線の中心に置くという、いかにもルネサンス的な要求と、ニュートン以後の原理主義的な「知」の権力化とがいかに結びつくのか、ここではまだわからない。
とりあえずこの本は、論駁書としては途中で脱線しすぎだし、当時のアリストテレスへの過剰な信奉に対する批判はあっても、結局「美徳を求める」という、アウグスティヌスふうのスタンスからおおきく踏み出してはいないように思える。
やっぱりエラスムス等のほうがおもしろいなと思った。 -
違う訳で再読。