山猫 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2008年3月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784003271612

みんなの感想まとめ

時代の変化とともに衰退していく貴族階級の姿を描いた作品は、淡い翳りを持ちながらも、乾いた印象を与えます。物語はイタリア統一戦争を背景に、初老の公爵ドン・ファブリーツォが新しい時代を理解しつつも、変わる...

感想・レビュー・書評

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  • イタリア統一戦争下のシチリア。新しい時代を理解しながらも威厳と倦怠のうちに滅んでゆく貴族一族。初老の公爵と奔放な若者たちの感情の対比。動きの乏しい物語の中で文脈から滲む緊張感。イタリア人が愛する傑作。読書の楽しさを味わえる1冊

  • あまりに好みの作品のため読み終わるのがもったいなくて、途中まで進んだ後しばらくとっておいた。
    イタリア統一戦争を経て、それまでの社会や価値観が変革していく様を、衰退する貴族自身の視点から描いた作品。とは言ってもじっとりと暗い作品ではない。淡い翳りは漂っているものの、全体的にはむしろ乾いた印象。多分それは主人公の人物造形によるところが大きい。
    主人公であるドン・ファブリーツォは滅びゆく貴族階級の一員。王とも直接口を利き、変革後に誕生した新政府からも、是非議員に、と求められるほどの高い身分。時流を見る目も確かで、自分達とその同胞が既に過去の遺物となりつつあることをしっかり自覚しており、うろたえることなく、泰然自若とそのことを受け止めている。
    しかし社会が変わったことを理解し、認めてはいても、彼自身は変わることを選ばない。新たな時代はその担い手に預け、自身は沈みゆくかつての太陽とともに、凋落することを選ぶ。
    彼の振る舞いを見ていて、「貴族階級」の持つある種の思想の形を見たような気がした。議員にと迎えに来たシュヴァリエとの会話に、ファブリーツォの美学が表れている。また、ピオーネ神父が作中で農夫相手に語る言葉にも、象徴されている。
    見方によっては傲慢ともとれるファブリーツォの振る舞いだが、背筋の伸びたその潔い姿はとても魅力的に映った。
    また、コンチェッタとアンジェリカの対比はそのまま貴族階級と新興階級の対比になっており、見ていてとても切なかった。
    美貌だが何処か冷たく生真面目な印象を与える、古風な令嬢コンチェッタ。
    明るく華やかで、人目を惹きつける魅力を持った、村長の娘アンジェリカ。
    これからの時代を背負う重要人物がどちらを選ぶかははっきりしている。
    結局、コンチェッタはああいう生き方しかできなかったのだろう。もっと器用に生きられたらよかったのに、と哀しく思える一方で、誇りを貫く姿はやはり美しい。
    とにかく読んでる間中、優雅な雰囲気にゆったり酔えて心地よかった。著者自身が貴族階級でしかもかなり高い身分の人だったらしく、発表時はその点もあって話題になったのだとか。

    翻訳物は訳文が合わないと、どんなに素晴らしい作品も心に残らない。この本を気に入ったのは訳が好みだったというのも大きいな。

  • 死と駆け落ちするラストシーンがとても好きだ。旅情とは、官能のことであったか。

  • 1860年から本格的に始まるイタリア統一に向けた国内の動揺を背景に、山猫が家紋の貴族サリーナ公爵が没落していく過程を描く。
    特に革命側に付いた甥の存在が、公爵に新しい時代の到来を痛切に思い知らせた。
    しかも甥は公爵の娘でなく、統一の上昇気流に乗る新興階級であり素封家ともなった一族の娘に惹かれ、彼女と結ばれる。
    貴族という権威が失墜するも、公爵はそれを時流の本筋と見做し、新しい人々へ道を譲る。
    彼の実のある気高さと颯爽としたあり方が、哀しくも清々しく映った。
    死がある限り希望がある、公爵のこの信念と、天体観測で見る星の永遠性が、彼の誇りの支えとなったように思われる。
    それらを持たず、虚栄にしがみついた彼の末裔の行く末は、無残であり悲惨だった。

    本作は、ブッツァーティーの『六十物語』、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』と並び、イタリア文学界最高の賞であるストレーガ賞を受賞しており、イタリア人が一番好きな本として挙げることがあるというので興味を持った。
    読み終えて胸に残るのは、諸行無常、盛者必衰、あと滅びの美学といった感覚。
    桜好きな日本人に馴染みやすいように思う。

  • 祖母に薦められて読んだ一冊。
    祖母はかなりお気に入りのようですが、これは難しかった^^;
    途中で諦めそうになりながらも、何か惹かれるものがあり止めるに止められず・・・何とか読了しました。
    再読したらより理解が深まりそうな気もしますが、まだもう1回読む気にはなれません。

  • イタリアが統一された時代に、その勢いを失っていった貴族の話。一つ一つの描写がとても美しくて、その文章自体が貴族的。作品全体のに漂うけだるい退廃感が、その時代の貴族社会の有り様を想像させる。読み応えのあるどっしりとした小説。

  • イタリア統一戦争時代の、シチリアの名家の没落を描く作品。短編で読みたい気がする。長編ならではの、人間関係の複雑さや、社会世相の彩色などを眺めようとすると、空振りする。
    一方で、シチリアの苛烈な日射し、風景描写には、心に留め置きたくなる一文が少なからず登場する。物語よりも、そちらの方が書くモチベーションだったのではとも思える。

  •  

  • 河出文庫のほうは大昔に読んだが、イタリア語からの直接の翻訳というこちらは出てすぐに買ったきり積読になっていたのを、ようやく読了。巻末に丁寧な地図や歴史背景(イタリア統一運動とシチリアの歴史)の解説もあってとても親切。作者は晩年になって初めて執筆をはじめたというが、この複雑な構成はすごい。

  • ひとつの時代が終わるとき、それを見届ける人には、もっとも大きな勇気か、無神経な感情を要求されるのかもしれない。
    シチリアという魅力的な場所の地層に埋もれた人々のうめき声が聞こえてきそうだ。
    ヴィスコンティの映画も忘れずに見ておきたいですね♪
    タンクレーディーはロッシーニのオペラだったっけ!?

  • 映画を先に見たから、わかりやすかった。時代と共に消えゆく一族。

  • 「われわれは自分たちの息子や、たぶん孫たちのことを、真剣に心配するかもしれない。しかし自分たちの手で愛撫できるものを越えては、義務はすこしもない。だからわたしは一九六〇年の偶然の子孫たちがいったいどうなるかなどと、ほとんど気にかけていられない」という公爵の没落意識は、階級的な没落意識であると同時に、一個のエロス的人間の没落意識であって、おそらくあらゆる時代、あらゆる文化の生んだすぐれたデカダンス文学が、この二つの精神のなかの「死」に直面したのである。
    ──澁澤龍彥

  • ヴィスコンティの映画版が大好きで、最近のNetflixのシリーズもかなり気に入って、じゃあ原作を!と思って少しだけ値段が張ったけど絶版ゲット

    読んで良かった。
    映画やシリーズよりやはり原作だから細かい描写がより写実的というか、よく分かってより知れて嬉しかった
    私はこういう時代の移り変わりや、人間や社会の栄枯盛衰に色んな意味で胸を打たれるなと改めて思った

    文章もなんだか厳かで、映画版のニーノロータ作曲のオープニングの音楽がずっと頭の中に流れてた


    心に残った箇所↓

    “何人もいたはずの彼女の敵が実はいなかったので
    あって、いたのはたった一人の敵対者、つまり彼女自身であった。彼女の未来は、彼女自身の軽率さと、サリーナ家伝来の怒りの衝動で生命を断たれてしまっていて、望みを失った者に最後に残された、苦痛をまぎらすための秘薬、つまりみずからの不幸を他人のせいにするという慰めが、たった今彼女から奪われてしまったのである”


    この作品を読み始めたときに素敵な出会いがあり、読み終わると同時に幕閉じしたから余計に思い出深い作品になってしまった笑
    人間とは。人生とは。をよく考えさせられた

  • 19世紀のイタリア統一を背景に、シチリアの貴族が徐々に没落する様子を描く。ヴィスコンティの映画ではアラン・ドロン演ずるタンクレーディがメインのようだが、小説の主人公はあくまでドン・ファブリーツィオ、サリーナ公爵。
    文章がかなり周りくどく装飾的で(そして訳文もあえてその調子を残しているので)、序盤は読みにくく難儀したが、ヒロイン・アンジェリカの登場、そしてタンクレーディを意識する従妹・コンチェッタの会話あたりからスピード感が加わる。

    基本は時系列でさまざまな出来事が語られていくが、一番面白かったのはⅥ章、舞踏会の最中に突如、公爵がある人物への憎悪を自覚する場面。新興勢の台頭を打破できず、しかし完全に「旧態」でもいられない、高等遊民の悲哀。

    最終章では時代は20世紀に入り、世代も交代。資産を減らしたサリーナ家の傷口へ塩を塗る事件が起き、亡霊が一瞬息を吹き返す。

  • 旅をする前は赴く地にまつわる本や映画を楽しむことを習慣としているが、シチリアといえば、ゴッドファーザーの次に浮かぶのはこの作品だろう。以前に映画も観たことがあるが、何となく印象はあまり残っておらず、新鮮な気持ちで読んだ。
    お決まりの、ある大貴族の斜陽の物語だが、老当主に大局的な悲愴感はほとんどなく、半ば自ら進んで一族を「過去」へと葬る様が印象的だった。自身を歴史の大きな流れの一部とあまりに理解してしまっているが故の諦念と一種の怠慢は、作者自身が持っていたものだろうか。生き生きとした次世代の代表である甥夫婦も、不幸な結婚生活の示唆があちこちに散りばめられている。晩年のコンチェッタには、どうせ不実な男だから今になって後悔することは何もないと声をかけてあげたい。

  • 原書名:Il gattopardo

    ストレーガ賞

  • [ 内容 ]
    一八六〇年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。
    祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。
    ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 以前買って、読み始めたものの途中で挫折した。もう一度読んでみる。

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