バウドリーノ(下) (岩波文庫)

制作 : 堤 康徳 
  • 岩波書店 (2017年4月15日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003271834

作品紹介

今こそ聖杯グラダーレを返還するため司祭ヨハネの王国への道を切り開くのだ!-皇帝ひきいる軍勢とともにバウドリーノは、いよいよ東方への旅に乗りだすが、待ち受けていたのは思いもかけない運命だった。史実・伝説・ファンタジーを織りまぜて描きだす破天荒なピカレスク・ロマン。

バウドリーノ(下) (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 下巻の序盤でバウドリーノの二人の父(実父と養父)が亡くなる。実父の死に際にバウドリーノは聖杯グラダーレを見出す(正確には偽造ネタを思いつく)のだけど、死ぬ間際のお父さん、結構良いこと言ってて、なるほどと思った。

    一方で養父フリードリヒの死は、歴史上の人物ゆえ史実としては溺死なのだけれど、おや、こんなところでこんな死に方?と思ったら、これまたうまいこと偽装されてしまった。フリードリヒの死因については、現代人の読者ならば実はすぐにわかるのだけれど、物語の中の彼らにその知識はなく、仲間たちの誰かが殺人犯では?という疑惑をこの後ずっと引きずることとなる。

    歴史上の人物フリードリヒが他界したことで一気に物語が史実を離れ幻想性を帯び不思議な冒険ファンタジーの世界に突入。ここからが個人的には俄然面白かった!

    司祭ヨハネの王国を目指して旅するバウドリーノと仲間たちを待ち受ける、水ではなく土砂が流れる川や、プリニウスの博物誌に出てくるような怪物たち(バジリスク、キマイラ、マンティコア、そしてなぜか猫が最恐というのはご愛嬌・笑)。そして辿り着いた王国の属州ブンダペッツィムには、一本足のスキアポデス、無頭人のプレミエス、空を飛べるほど大きな耳のパノッティ族、巨人族、ピグミー族、ポンチ族(名前の通り下ネタ的な容貌)等々奇怪な種族が共存しており、彼らを束ねる宦官たちがいる。

    さらにバウドリーノの最後の恋の相手となる美しい女たちだけの一族、一角獣を連れた麗しのヒュパティア。キリスト教徒に虐殺された女性哲学者ヒュパティアの弟子たちと、ある生き物の混血である彼女の正体にはビックリしたけれど、美しいだけでなく聡明な彼女とバウドリーノとの神についての問答はとても興味深い。

    しかし白フン族との戦いに敗れてバウドリーノの十二人の仲間たちは半分になり、ついには犬頭人に捕らわれて奴隷として働かされることに。巨大なロック鳥に乗ってなんとか逃げ出すも、彼らを待ち受けていた破綻。裏切り者ゾシタスの再登場、仲間割れ、狂気、そしてむしかえされるフリードリヒの死の真相、思いがけない結末。

    基本的には歴史冒険小説なのだと思うけれど、フリードリヒの死にまつわるあれこれだけがちょっとしたミステリー仕立てになっており、どんでん返しが待ち受けている。十代でフリードリヒの養子になったバウドリーノも終盤ではもはや還暦。ラストはこうなるしかないだろうなという感じだけれど、切なく寂しい。解説で司祭ヨハネの手紙は実在(もちろん誰かの捏造なのだろうけど)することを知ってビックリ。マルコ・ポーロの「東方見聞録」もいつか読んでみたい。

  • 嘘が本当になってしまう嘘つきが、嘘をつきすぎてわからなくなった真実を探す物語。

    お固い西洋史にはじまったかと思えば、夢想の果ての世界へまで足を伸ばすなんとも様相の変化の激しい作品でもある。

    世界観を活かした真相の提示は見事。
    しかし大きな真実の前に小さな真実を葬り去られる。
    挙句に皮肉めかして作者が一番の嘘つきだと提示してくる手腕には脱帽である。

    知識不足で小ネタが拾いきれないのが悲しい。また色々勉強して読みたい一冊。

  • 下巻はミステリーの要素が加わって面白さ倍増!! バウドリーノ達のインドへの旅が西遊記に似ていたりするが、結末は如何に?空想上の動物が登場するのも下巻から。ヒュパティアとバウドリーノの神学論争で神のエントロピー的解釈が出てきて印象に残った。後書きを読んでこういうのをグノーシス主義ということが書かれており、自分の浅学さを痛感した次第。

  • 下巻では、バウドリーノたちは東方へと旅立ちます。
    密室殺人のような事件の後、バウドリーノは12人の仲間と共に東方を目指します。その道中では、ファンタジーに登場するような住人や景色が次々と現れることで、物語の雰囲気は大きく変わります。そして再びバウドリーノは、コンスタンティノープルへと帰還します。
    バウドリーノの物語は、壮大なほら話のように感じられましたが、現実と幻が交錯するような不思議な世界観が魅力的でした。

  • 誰もいない森の中で倒れた木は本当に倒れたのか
    この議論は逆に言えば、森の中で木が倒れた音を聞いたと主張する者がいれば、真実となるということになる
    この本は12-13世紀を舞台にした「法螺話」の話である
    イタリア出身の主人公バウドリーノは我が半生は語られることによって真実となる、と第四回十字軍のさなか助けたビザンチン人に語り出す。
    バウドリーノはフリードリヒの養子となり司祭ヨハネ(プレスタージョン)の王国を目指して旅をするが主人公の話そのものが虚実が曖昧である。更に旅の途中で聖遺物の偽造で金儲けを図るが、偽の聖遺物を売って儲けた金で本物の聖遺物を購入しようとする欺瞞。更に旅の先では様々な神学論争を戦わせ、真実が曖昧となる。
    こうなると何が真実か、真実の条件は何かが不明となる
    本書は真実かそうでないかの判断基準とは何かも問いかけてくると思う

  • ※上下巻纏めて。
    文庫化で再読。エーコ作品の中でも『薔薇の名前』に次いで取っつきやすい長編。特に下巻に入ってからの冒険にはわくわくする。それぞれに癖のある登場人物も魅力的で、切ないラストも余韻が残る。

    以降は本書とは関係無い話。
    岩波書店から刊行予定だった『女王ロアーナ、神秘の炎』はどうなったのでしょうか……。

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