七人の使者・神を見た犬 他十三篇 (岩波文庫)

制作 : 脇 功 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 179
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003271926

作品紹介・あらすじ

不条理な世界の罠にからめとられた人間の不安と苦悩、人生という時の流れの残酷さ、死や破滅への憧憬などを、象徴的・寓意的な手法で描いた十五の短篇。ディーノ・ブッツァーティ(一九〇六‐七二)によるイタリア幻想文学の精華。ストレーガ賞受賞作『六十物語』から精選。

感想・レビュー・書評

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  • 幻を信じるか。どんなことでも、風と花、世の中が変わると心も変わる。心の中の神さまの存在を有りか無しかと考えるのは趣味ではない。

  • 自分が常に感じているぼんやりとした不安にものすごくリンクしてきた。
    悪夢というほどでなくとも何か不安を掻き立てられ、気になってしまう夢。そういう夢のようにこの短篇集は心の奥底に響いてくる。
    こういう物語に触れると、不思議とどこか癒される気がするのは私だけでしょうか。

  • ブッツァーティの小説世界はいつも枠組みがはっきりしていて展開もわかりやすい。でも不条理文学と呼びたくなる。抑制の効いた端正な構造の上に、人間の歪みや愚かさや理不尽さが浮かび上がる。
    1958年に刊行された短篇集『六十物語』から14篇を選んで訳したとのこと。好きなものをいくつか挙げると、まず表題作「神を見た犬」。神出鬼没の野良犬を村人が畏れ敬い始めるさまに乾いたユーモアが冴える。逆に背筋が凍るのは「竜退治」。後に退けなくなった人間がどんどん墓穴を掘り続けるのはブッツァーティの多くの作品に見られるモティーフだが、淡々とした語り口が却って登場人物たちの野蛮さ・愚かさを明確にする。「聖者たち」はそののどかさで本書の中では異彩を放っている。“そしてそれもまた神なのである”の繰り返しが、聖者たちの清澄な世界の支柱となる。

  • 何とも不思議な、心乱される作品群。

  • 光文社古典新訳文庫と数編かぶっているのでちょっと迷ったんですが、まあ15編中の4編(「大護送隊襲撃」「七階」「神を見た犬」「聖者たち」)だけなので、他のは読みたいなと。

    ブッツァーティの作品は、幻想的とか不条理とかより「不毛・・・」と思わされる作品が多い気がします。表題作の「七人の使者」や「道路開通式」「急行列車」は、終点(目的地)が実は存在しないかもしれないのに進むしかない(引き返せない)人生の寓意的な感じだし、何かが起こっているのに対処しようがない不安を描いた、タイトルそのものずばりの「なにかが起こった」や「水滴」「山崩れ」あたりもしかり。

    「竜退治」は一見ファンタスティックなタイトルですが、なんの罪もない生き物を虐殺する人間のおろかさが主題になっていて、読後感はおよそファンタジーとは程遠い(苦笑)。

    宇宙人にキリスト教のありがたさを説く神父の「円盤が舞い降りた」や、自動車がペストに感染するという「自動車のペスト」は、現代的なショートショートっぽくて、ちょっと違う面白さがありましたが、これも「幻想的」というのとは違う。

    結局いつも「ああ人間って愚か・・・人生って不毛・・・」と思わされてしまう何かがあるんですよね。とはいえ「七人の使者」は、なんだか妙に好きでした。不毛さの中にも、それでも前に進むべき、という主人公のブレない姿勢が美しいからでしょうか。


    ※収録作品
    「七人の使者」「大護送隊襲撃」「七階」「それでも戸を叩く」「マント」「竜退治」「水滴」「神を見た犬」「なにかが起こった」「山崩れ」「円盤が舞い降りた」「道路開通式」「急行列車」「聖者たち」「自動車のペスト」

  • 薦めてもらった本。
    イタリア(幻想)文学は初めてかも。

    不条理だよ、という言葉通り、最後の途方に暮れた感がよく残る。
    好きなのは「七階」。
    全体を見ると、異色の作品だったのだが、症状の軽い者から七階に、重くなってくると下の階に移されていく病院。
    最初は七階に入院した男が、病床が足りないから、とか、医者が休暇を取るから、といった理由でどんどん下の階に回されてゆく。
    最初は自分を納得させよう、一時的なことだと思う男が、段々と半狂乱になり、また、逃れられないエンディングを感じて絶望に浸されてゆく心理描写が上手い。
    男は果たして重病であったのか。それとも、病院の怠慢であったのか。

    冒頭「七人の使者」は、国境を目指して旅に出た王子だが、どれほど旅を続けても国境など見えてこないという話。
    有能な伝令係に逐一、王国への報告の手紙を書くのだが、旅程が進むほど、その往復の年月も重なっていくという事実に気付く。
    そして、王子はこの手紙が届く頃には自分はもう生きていないだろう、という予想を立てたのだった。

    似たようなテーマとして、新海誠の『ほしのこえ』を思い出した。
    こちらは地球と宇宙空間での電子メールでのやり取りで、同じ年に生まれた彼と彼女が、距離と共に時間さえ離れていく。
    この話を読んだ時も、時間の扱い方にちょっと感動を覚えたなぁ。

    「なにかが起こった」も、上手い。
    列車の中で、なにかが起こったことを乗客が察知して、不穏な空気に包まれる中、目的地に向かってゆく。
    なにが起こったかは分からないけれど、読者に幾つかの仮定をさせるような絶望的状況の描き方がいい。

  • どれも怖ろしく不穏で皮肉と不条理と絶望に満ちた物語。
    「何かが起こった」を読みたくて手に取ったのだけれど、プッツァーティってこんな作風の作家だったのか!と驚いた。
    光文社文庫で気になっていた「神を見た犬」も予想していた内容とまるで違っていたし。なんかこうもっとヒューマニズム溢れたイイ話なのかと思ってた。
    唯一「マント」は親子の情愛に満ちた話だといえるけれど、やはり恐怖が影を落としている。

  •  15編の短編を収めたイタリアの作家の短編集。
     同作家は以前、光文社古典新訳文庫で読んでおり、今回の岩波文庫ともかなりの数がダブって収録されているようだが、殆ど記憶になかった(汗)。
     記憶になかった、とはいっても決してつまらなかったわけではなく、僕の貧困な記憶力の結果だろうと思う……だってかなり面白く読めたから。
     寓話的な作品にしても、あるものを比喩した作品にしても、とてもわかりやすい。
     けっして単純な訳ではなく、わかりやすさ故に琴線に触れてきたり、恐ろしくなってみたりするのだと思う。
     母親が登場する切ない話も心をくすぐるのだが、やはり少しばかり恐怖の味付けがしてある話が面白い。
    「七階」にしても、「なにかが起こった」にしても、わかりやすいのに、じわじわと恐怖が迫ってくる。
     特に「なにかが起こった」などは容易く映像を思い描くことが出来るし、事実、あの「キューブ」という映画を監督したヴィンチェンゾ・ナタリの短編「エレヴェーテッド」を思い起こす。
     他の作品にしても、人の心理にグイグイとくいこんでくる内容が多く、読んでいて時間をわすれさせてくれる。
     ぜひとも他の作品も読んでみたい作家だ(その割には以前に読んだ内容を全く記憶していないんだよなぁ……)。

  • すばらしく不穏な短編小説群。

    『七人の死者』は、算数の文章題のようなテーマが文学の衣をまとったような、不思議なテイストで妙。

    『七階』は、これは安部公房のよう。

    『急行列車』、時間の感覚が歪んだが如き列車の旅。乗客が列車外の世界から無残に引き剥がされてゆく姿が残酷でありつつも耽美。

    15篇、どれも再読に耐える良篇。

  • ストレーガ賞を受賞した『六十物語』から15の作品を抜き取った短編集ということですが、そもそもストレーガ賞って何かというと、イタリアの作家による散文小説に対して贈られる、イタリア文学界最高の賞なんだそうです。
    著者は新聞記者を経て、小説家、画家、詩人のほか、舞台美術、評論、漫画まで手がけた多才な人であったらしく、幻想的で不条理な作風から、イタリアのカフカともいわれる、国を代表する作家だそうです。
    そんなことも知らず、なんとなくタイトルに惹かれて読み始めました。ちょっと古さを感じましたが、なぜかしら物語の世界に惹き込まれてしまいました。特に〝神を見た犬〟が面白かったです。アンソニー・クインあたりが主演して、映画化されてもよかったのにと思うくらいでした。心理描写がなくても、状況説明だけで人々の内面が手に取るようにわかるような書き方に、とても感心させられました。
    これらの作品が書かれた時代背景を知ると、味わいもまた変わりますネ。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

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