セルバンテス短篇集 (岩波文庫 赤 721-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003272176

感想・レビュー・書評

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  • 『ドン・キホーテ』の登場人物たちと語り口を彷彿とさせる文章が並ぶ。1600年頃の文章がなぜこんなにも読み易いのか。セルバンテスの原文がすごいのか。訳者がすごいのか。いずれにしても先入観なしに楽しく読める。ただ4篇のうち、「ガラスの学士」の中盤に展開される、主人公の当意即妙とされる問答は言葉遊びが多くてわかりにくかった。

  • 世界文学の冠たるスペインの作家、セルバンテスの短篇集。
    彼の代表作の『ドン・キホーテ』というと、哲学者のオルテガも絶賛し、喜劇でありながら真理を追求する偉大な人物と捉えられることも多いようです。もちろん、そういう読み方もあるでしょうが、分析しながら読んで作品の面白さを体感できないのは損だと思います。
    文学作品も、現代では詩的・私小説的・哲学的・前衛的な価値などいろいろな表現が試みられているようです。しかし、セルバンテスの作品は単純明快、それは物語の面白さです。物語にまかせるまま、可笑しくなったり、悲しくなったり、物語の根源的な快楽を味わえる作品を残したからこそ、古典文学の代表的な存在として、いまだに尊敬されるのだと思います。
    この短編集はそんなセルバンテスらしさを味わえる作品集です。

    『やきもちやきのエストレマドゥーラ人』
    新大陸で大金持ちになった、老境にさしかかった男がスペインに帰ってきて、14歳の女の子に恋をします。彼はその娘と結婚するやいなや、妻を男という男から隔絶するため、窓もない豪奢な家で生活をはじめます。しかし、そんな奇妙な生活ぶりに目をつけた若者が、独創的な方法でその家への侵入をこころみます。

    『愚かな物好きの話』
    美しく折目正しい妻をめとるも不安をぬぐいきれず、無二の親友に誘惑させて妻の貞操を試みようとする物語。親友はそんな試みはことが思うように運んだとしても得るものは何もなく、もしその試みが失敗した場合には失うものは取り返しがつかないので止めるようにと、しごくまっとうな忠告をします。しかし、その愚か者はその忠告に耳を貸さず、自らを不幸に突きおとすような計画をはじめます。
    本書で一番面白い短篇でした。

    ほか、『ガラスの学士』『麗しき皿洗い娘』の四編。
    余談ですが、ガラスの学士に反ユダヤ主義的なセリフがあって、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』を連想しました。やはり当時のキリスト教社会はユダヤ人たちに冷たく、文豪たちも例外ではなかったようで興味ぶかいです。

  • 天才セルバンテスの楽しすぎる短編集。
    「賢明な狂気」とは上手い表現だが、間違いなくセルバンテスの作品群を貫く重要なテーマの一つ。
    大衆性と娯楽性が表に浮かぶ普遍的な魅力はさることながら、その根底には人間存在に対する、冷ややかで批判的な視点が埋め込まれてる。
    語りの旨味と手際の良さという点では、夏目漱石を読んでる感覚にも近い。

  • 「やきもちやきのエストレマドゥーラ人」「愚かな物好きの話」「ガラスの学士」「麗しき皿洗い娘」
    が読めます。

    スペインとかの作家に興味が出たので読んでみました。
    タイトルみるとちょっとわくわくしそうな感じがしましたが、高低差の激しいところを一気に駆け抜けるような感じのお話が多く、まさしく波瀾万丈。
    意外に悲劇的に終わるものが多く、それが意外でした。
    でも湿っぽくなく「可哀想」という気持ちを起こさせるものではありません。
    あくまでも突き放した、からっとした爽快さがあります。

    解説読むともとは「模範小説集」という短篇集におさめられていた物たちらしく、その名の通り悪く言えば「典型的」な話構成らしいですけど、最近のお話ってそういう意味では「典型的」じゃないところをみんなが狙ってくるので逆に新鮮でした。
    私はハッピーエンドだった「麗しき皿洗い娘」が好きです。
    みんな幸せになって良かったね。

  • 古典だからなのか、これが西の人となりなのか、アホだなぁ!

  • 「ドン・キホーテ」の作者の短編集。確か「ドン・キホーテ」自体通読したかもあやしいのに、高校生くらいのときの私は暇だったんだなぁ…。
    古き良き(悪趣味な)ロマンスと大仰な時代がかった(新鮮な)せりふまわしが好き。

  • 小説というよりも物語とよぶほうが似つかわしい4つの短篇。どれもどことなく聞き覚えのあるような話で、スペインだけにアラビアン・ナイトの影響があるのか、イタリアの古い話に似ているのか、ある程度普遍的な物語なのか、といろいろ考えながら読んだが、この本そのものを以前に読んだことがある、というのも充分考えられることである。話にふさわしい語り口が気持ちよい。

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著者プロフィール

Miguel de Cervantes Saavedra(1547 – 1616)

「2012年 『新訳 ドン・キホーテ【後編】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

セルバンテスの作品

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