三大悲劇集 血の婚礼 他二編 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1992年7月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (362ページ) / ISBN・EAN: 9784003273012

みんなの感想まとめ

力強い感情と深い悲劇が交錯する物語が展開される作品では、恋人たちの苦悩や名誉を守るために命を懸ける男たちの姿が描かれています。特に「血の婚礼」では、花嫁を巡る二人の男の運命が交錯し、愛と復讐の悲劇が繰...

感想・レビュー・書評

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  • スペイン語圏ゲイ文学論『優男たち』を読んだらロルカの悲劇が読みたくなって、「血の婚礼」「イェルマ」「ベルナルダ・アルバの家」の三大悲劇が収められたこちらを。
    3作に共通する主題は、家父長制的家族の強力な規範に縛られた社会の中で、嵐のような自由への渇望をもたらすセクシュアリティの破壊的で破滅的な力である。
    「血の婚礼」では、貞淑で働きものと期待されていた花嫁が、抗いがたい力に衝き動かされて結婚式の日に駆け落ちし、2人の男たちの死をもたらす。だが男たちに死をもたらすのは、統制されない女のセクシュアリティではなく、むしろ彼らが弄ぶ小さなナイフであることが、冒頭から花婿の母の宿命論的なセリフによって暗示されている。この「小さなナイフ」を、互いへの愛ではなく暴力に変えてしまう男のセクシュアリティとして解釈することもできるのではないか。

    「イェルマ」では、家父長制家族においては母になるというただひとつの究極の目標にむけられるべき女のセクシュアリティの挫折が、激しい渇望と夫殺しにつながるさまが描かれる。ヒロインの悲劇は、自分をむしばむほどの巨大な欲望を自覚している一方で、家父長制の命令―ー家の外でセクシュアリティを解放してはならず、夫を介して母となることのみを目指せ―ーに忠実であることから生まれている。だから母の地位をあたえないような夫は彼女の情熱の前に焼却されるしかないのだ。

    家父長制権力を遂行する母となりえず自分自身の上に破滅を招くイェルマに対し、ベルナルダ・アルバはその厳然たる権力を娘たちの上に及ぼして彼女たちの人生を破滅させている。
    『優男たち』でも指摘されていたように、独裁者が死の沈黙を命じるこの家はフランコ政権下のスペインの状況を映し出して評価が高いけれど、外の規範と自らの内なる衝動の間で狂い惑うイェルマに比べて、ベルナルダの娘たちはあまりにも弱い。独裁者の支配に迎合して互いに連帯できない状態に対する葛藤を、せめてもう少しでも示してくれたらとも思うのだ。
    たとえば、本当は末娘を愛していると言いながら金目当てに長女に求婚する狡い男(これも家父長制権力の兵隊だ)に対して、長女と末娘がそれぞれに怒りを抱きながら、それでもベルナルダの権力から逃れるためにこの男の愛という不確かなものに依存しなければならない葛藤が、もっと表現されていたら。
    あるいは、自らの欲望と怒りを押し殺しつつ末娘を断罪する検事の役割をすすんで担う中の娘の倒錯、一生この牢獄から出られないと悟り、姉妹の恋愛を覚めた目で見る次女の洞察がもっと表現されていれば、この権力の支配下にある者たちの苦しさや交渉がもっと複雑に描き出すことができたはずなのに。
    いつかそのようなフェミニスト解釈による翻案を見てみたいものだと夢想してしまう。

  • アンダルシアの熱は伝わった

  • Blood wedding
    Lorca, 1932
    Bodas de sangre
    血の婚礼
    ロルカ

    戯曲。今も地中海文化に根強く居座る、恋人たちと母親の苦悩、名誉と復讐に命を捧げる男たち、力強い感情に溢れたストーリー。いつか演劇として見たい。

    英語で読了

  • 「血の婚礼」が気になっていて読んだのだが、三篇とも暗いし悲しい。登場人物みんな陰鬱としている…。
    解説の「合理的解決をはかることなく、得も言われぬ力に押しやられてしまう」の通り、その時代の常識や価値観や家などに縛られている状態のまま、全てが押し流されて終わりに向かう感じが面白くもある。

    「血の婚礼」はレオナルドを殴りたいし、「イェルマ」はフワンを殴りたいし、「ベルナルダ・アルバの家」はもうなにこの人たち…と途方に暮れながら見ている感じだった。
    個人的には「イェルマ」だけは、最後少し解放されて終わった感じがした。ああいう終わりで良かったかはさておき、彼女が延々と苦しんでいた事から多少なりとも逃れられていたならいいな…と思うばかり。

  • 「血の婚礼」、「イェルマ」は良かった。ラテンアメリカ文学とも違う、スペイン特有のおどろおどろしさ。祝祭と血みどろ。「スペインとは世界で唯一死が見世物となる国なのです」というロルカの言葉は本当に的を得ている。

  • 血の婚礼
    ひとりの花嫁とふたりの男。花嫁と過去の男は駆け落ちをし、追いかけた花婿は男と刺し違える。
    夫とふたりの息子をナイフに奪われた花婿の母親は、ひとり家の中に取り残される。

    イェルマ
    母親になることが自分の定め。過去の男に胸を焦がしながら、愛のない夫と義理の姉ふたり、ひとつ屋根の下で孤独に蝕まれる女。仕事に逃げる夫、結婚後すぐに懐妊した友人を目の当たりにして、女はますます追い詰められていく。

    ベルナルダ・アルバの家
    ベルナルダ・アルバの夫アントニオ・マリーア・ベナビーデスの葬儀。傲慢で支配的なベルナルダと、彼女の5人の娘たち。誰ひとり結婚していない。ところが、突如長女のアングスティアスに結婚の話が舞い込む。相手はペペ・エル・ロマーノ。ペペの目当てはアングスティアスに継承されるアントニオ・マリーア・ベナビーデスの遺産。しかし、ペペは末妹のアデーラと関係を持っていた。


    抗い難い因習に縛られた女たちの悲劇。
    自由のため鎖を断ち切れば、その先には死が待ち構えている。支配的な社会制度の中では、女だけでなく男も不幸を背負う。

  • Antonio Gadesの静v.s動の舞踊が綴る宿命の愛は、白い頁上の文字を読むのとは違う気迫に満ちた緊張感が良。

  • 初読

    わ…わからん
    NTL「イェルマ」を観たので読んだのだけど、
    3編のうちイェルマは1番詩的で、はてさてこれをどう味わえば良いのか
    「ロルカが大好き」という方は原語で読んで
    韻文を堪能されているのだろうか。

    アルゼンチンのボルヘス曰く「プロのアンダルシーア人」ロルカ。
    共通するのは、アンダルシアの強烈な太陽とそれに伴う影、
    赤と黒の色彩、乾いた空気。
    ロルカが田舎の閉塞性を憎んでいたんじゃないか、
    と感じるところ。


    「ベルナルダ・アルバの家」が1番現代劇に近い感じで楽しめた。
    「血の婚礼」は来年オールドヴィクで上演されるとのこと。

  • 2017年4月9日に紹介されました!

  • しょうもないっちゃしょうもない話やなと思ってしまう。舞台に乗せるなら血と泥でずるびしゃにして花まきちらして群集!群集!アンダルシアの歌と踊り!

  • スペイン内戦のさなかに銃殺されたロルカ。スペインの中の異国とも言うべきアンダルシア。表題作『血の婚礼』は、詩人ロルカの代表的な劇作品である。因習的な地縁と血縁の中で、そして強い光と深い影が交錯する中で行われようとしていた結婚式。劇のプロットそのものはシンプルだし、セリフもけっして多くを語るわけではない。劇の全体を一貫して支配しているのは、どうにもやるせない倦怠感とその先に展望が見えない焦燥感である。そして、アンダルシアの荒涼とした風土感であり、可視的な、また観念的な意味における「血」なのだ。

  • 人が死ねば悲しい。それだけで悲劇。もしくは喜劇。

  • 「血の婚礼」
    実際にあった殺人事件を元に書かれた戯曲らしい。
    話自体は今ではよくみられるようなものだけれど、
    全体的に漂っている雰囲気が熱っぽくて、
    舞台もなんだかバラガンの色彩(あれはメキシコだけど)を彷彿とさせる、カラフルな体で重苦しい。
    独特の雰囲気にのまれてしまう。
    花婿、花嫁、レオナルドのうちこの二人が死ぬっていうのが
    少し衝撃的だった。

    「イェルマ」
    洗濯女たちのシーンがとても印象的である。
    友だちが妊娠したり子どもを連れてくるシーンなんかも絶妙のタイミングでドキっとさせられる。
    妻と夫のすれ違いは色々な理由があっておこると思うけど、
    そんな事情を抱える人には切な題材なのではと思った。
    子どもの存在、その意義を実は静かに描いているよう。

    「ベルナルダ・アルバの家」
    これが一番面白かったゾ!!
    これを読むと、昔のスペインのみんながみんなこーだったわけではないと思うが、あの熱い空気と同じように人々の上にのしかかっていたものを感じる。
    風土論とかがどれくらい正しいのかよく知らんが、
    やっぱ気候による民族の違いってあるんじゃないだろーか。

  • 「血の婚礼」、「イェルマ」、「ベルナルダ・アルバの家」を収録。
    激情に全てを支配される女の姿、辿る悲惨な結末、とどろどろとした情念が渦巻く話ばかり。
    情熱と狂気の間の距離は短いのだ、とラテンの熱さに食傷しつつも惹き込まれてしまう。

  • スペインの劇作家ガルシーア・ロルカにおける三大悲劇。
    情熱や情念といった言葉がふさわしい。
    主人公(あるいはキーパーソン)の女たちは
    その体内に流れる血(あるいは子宮)の命ずる衝動に従って行動する。
    それがまさにスペインの女のイメージそのまま。

    ある必要に迫られて読んだのだが、
    こういう機会でもなければ読まなかっただろうなーと思う一冊。
    意外に読みやすく面白かったので★3で。

  • 「20世紀最高の戯曲」との誉れ高い作品…本当にそうか?と挑戦しました。舞踊劇としても著名な作品です。日本では、森山未来さん主演で舞台にかかりました。

    表題作『血の婚礼』は実話に題材をとった作品。婚礼の日に花嫁とその義理のいとこが式場に現れず…。この婚礼には以前から微妙な雰囲気が流れており、そのあたりはガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』と似たモチーフです。夫と上の息子を失っている花婿の母親、花嫁の義理のいとこのざらついた感情が見事な台詞回しで描かれています。この義理のいとこ、レオナルド役の森山さんは、荒っぽいけど清潔で繊細な感じがマルでした。これをホアキン・コルテスのようなコテコテのラテン人でやられちゃあ、日本人には濃ゆ過ぎ(笑)。

    『イェルマ』は結婚後の男女の、「子供」をめぐる話。『ベルナルダ・アルバの家』は、女ばかりの家に持ち上がった、長姉の結婚話がきっかけで起こる、ある問題を扱った作品です。これらを含めて、3作とも限られた人間関係での窒息感を描いていますが、会話劇としては『ベルナルダ-』が一番緊迫感があって好みでした。アンダルシアという田舎のザラリとした太陽の暑さと、そこに濃縮されたカトリックの教えが重要な舞台装置です。やはり「花嫁にオレンジの花の冠」などのお約束ごとを知っていないと、痛烈な皮肉を受け止めるのが難しかったりします(劇だから文による解説がない)ので、そのあたりをうまくクリアすることが必要かと思います。

    それに、ロルカが詩人だけあって、婚礼の客の歌や子守歌といった形で詩がたくさん出てきます。これをうまく日本語の舞台で処理できるかどうかが決め手でしょう。演出家さんと音楽のがんばりどころだと思います(舞台化に際しては、ロルカ自身が選んだものがあると聞きますが、それであっても)。

    私はスペイン語ができないので何ともいえないのですが、激しい原語でのやりとりのほうが数倍素晴らしい…ような気がします。十分に日本語訳でも楽しめますが、これはやはり、いい舞台にかけてこその作品だとも思いますので、この☆の数で。

  • イェルマを読んでみたくて買いました。
    子供を産めない苦悩って、今も昔も変わらないのね。。。

  • 2005/5/28

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