クオ・ワディス (中) (岩波文庫 赤 770-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277027

感想・レビュー・書評

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  • 愛しい女性リギアを力ずくで手にいれようとしていたウィニキウス。そんな彼がキリストの教えを信じる人々と接するうちに、自身を省みていきます。でも、神への愛に身を捧げるリギアたちの行動や考え方に、今までの固定観念を壊すことは、なかなか難しいことでした。
    この辺りは長かったぁ。だけど、うん。そうだよね。今まで当たり前のように信じきっていたものが180度変わっちゃうって、自分が自分じゃなくなるようなもの。
    それでも、彼はキリストの教えを乞いながら、リギアたちのことを知っていきます。同時に、内心の苦悩と肉体的な苦しみは、ウィニキウスの美貌はますます光り輝かせていきます。
    やっぱり、いろんなことを経験して少年は大人になっていくのよねぇ、ウィニキウスくん。いい男になったなぁ。やっとリギアと心を通わすことも出来ました。よかった、よかった。

    でも、でも。ローマの大火によって、人々の運命が急速に回っていきそうです。彼ら2人をはじめ、キリスト教を信じる人々に恐ろしい魔の手が伸びてきそうなのです。
    私にとって、それを予感させるような場面が前半にありました。とても印象に残ってます。贅沢品と大群の召使などを連れ、ネロはアンティウムへ旅行に出ます。その道すがら、きらびやかな行列を眺める群衆のなかで石の上に立つ使徒ぺテロとネロが一瞬、じっと見合うのです。
    ひとりはやがて血なまぐさい夢のように消え去るべき者。もうひとりの粗末なマントを身にまとった老人は、世界とこの都とを永久に支配すべき運命をになう人物。「地上のふたりの支配者」が互いに視線を交わすシーン。想像するとぞくぞくします。背景に大火の焰が浮かんできましたもの。

    大火によって暴動、略奪、殺戮なども起こり、破壊された絶望と恐怖の都、ローマの終焉。
    焼け出された民衆。祖国の滅亡を憂慮することなく、災禍の壮大さを悦び悲劇役者となって弦を打って吟じ続けるネロ。そして、愛するキリストを信じる信者たち。この辺りの三者三様の描写がリアルにぐいぐいと迫ってきます。

    さて、ペトロニウス。
    今回は彼のことが気になって仕方ありませんでした。
    ウィニキウスを通じて、パウロとキリストの教えに触れたペトロニウス。「わたしの性には合いませんな」と言いながらも、ウィニキウスとリギアの結婚をネロに認めさせます。
    ウィニキウスくん。大火の知らせに、何もかもほっぽりだしてリギアを探しに帰ったあなたの知らぬ間に、ペトロニウスおじさんはキリスト教信者たちへと忍び寄る不穏な動きに対して、ネロにローマを焼いたのは彼らではないと言うように進言してくれてたんですよ。それは、とっても危ない橋を渡ることだったのに!
    「おれの負けだ。破滅あるのみだ」
    ペトロニウス〰️!
    物語が動きだしましたよ。なのに、なんとここで下巻だなんて〰️

  • いよいよウィニキウスとリギアの想いが通じ合った中巻…!
    最初は予想もしていなかったけど、かなりキリスト教的な雰囲気になってきた。
    次巻で最後だけど、どういう結末なんだろうか。

  • キリスト賛美の文章にはやや辟易したが、ローマ炎上のくだりでは、現場に居合わせたかのような臨場感を感じることができた。
    しかしそれをキリスト教徒の罪としてなすりつけるとは…ネロ、噂にたがわぬ暴君。

  • そうでなきゃ、ただのお喋りばかりになっちゃうからね。
    それにしても本筋まで遠かった

  • キリスト教黎明期、ネロ治世下のローマで始まる叙事詩。中巻はイケメン軍団将校ウィキニウスさんが文句なしに主役。彼の恋愛譚を大いに楽しませていただきました。
    超ロングな台詞はこの小説の特徴と言ってもいいと思うのですが、中巻でもやっぱり長い!長口上はペトロニウスやキロンのお家芸だと思ってましたが、幸せモードのウィキニウスまで滔々としゃべりだし、お前もかよ!感がありました。

    キリスト教と触れることで登場人物が少しずつ変わっていき、この中巻の終わりには、どうにも決定的な変化を生み出してしまった模様。またしても次が気になるところで終わってしまいます。
    ポーランド人の著者がこの小説を書いていた19世紀の終盤は、ポーランドという国は存在せず、1870年代にはビスマルクが文化闘争でローマ・カトリックを弾圧していた過去も。どうにもこの小説の内容と重なってきます。

    ばっちり感情移入してしまったので、登場人物の今後が心配です。

  • ウィニキウスとペトロニウス、やはり二人は別の道を歩むことになりそうだ。ウィニキウスがあまり簡単に改宗してしまっては興ざめだなと思ったけど、自分には合わない、受け入れがたい、と思う反面でどうしようもないくらい魅かれる、という葛藤が描かれていたのでまあ納得のいく展開だった。
    この巻ではペトロニウスの美学というか哲学というかモットー?ポリシー?のようなものも存分に描かれていて、彼は彼でとても魅力的だ。「やろうと思えばできないこともないけど、面倒だから嫌だ」とか、「好きなものは好き!欲しいものは欲しい!生きることを楽しんで何が悪い?」みたいなところとか、正直でよいと思う。
    この巻でもう一つ印象的だったのは、グラウコスに正体がばれたキロンが、自分が殺されずに許されたというのが理解できない、というシーン。古代ではこれが普通の反応だったんではないかという気がする。
    はじめてこの教えに触れたとき、人々はどう思ったのだろう。二千年経っても世界中で信仰されているのだから、時代や文化を超えて普遍的に受け入れられる要素がある、ということなのだろうか。
    ローマ大火の場面は手に汗握るというか、煙と熱気にまかれるウィニキウスの焦りと息苦しさが伝わってくる。
    ペトロニウスの首が大変心配な状況で、下巻に続く。

  • まあまあ面白い。

    上巻で受けた冗長な印象は拭えないが、ローマが大火事になった辺りからはワクワクしてきた。
    思うに、長ったらしい記述がダメなのではなくて、ストーリー展開とのバランスが重要なのだろう。
    目新しさのない恋愛譚だけでは伏線が少なすぎてつまらないが、ネロ帝の苦悩やキリスト教の展開が加わってくると、話も膨らみそうな期待を持てるようになってきた。

    ノーベル文学賞作家が書いた本だという理由なのか、評価が過大な気がする。
    歴史物で大部作であれば、例えば浅田次郎の「蒼穹の昴」の方がよっぽど面白い。

  • キリスト教に触れたウィニキウスの変化が面白い。

  • ネロの時代のディテールが細かい
    方々の闘技場に捉えられていた数千の獅子の遠吠えとか

    リギアと主人公の仲は順風満帆?
    と思いきや

    中巻の見せ場、ローマ大火に突入
    ここはテンポも良くて迫力のある描写が続く

    会話部分がひどく長ったらしくなる場面があるのはあいかわらす

    ネロの自己陶酔っぷりは相変わらず

    ティゲリヌスとペトロニウスの対立

    ※トロイロスの恋、注釈から
     作者の勘違い?で中世ロマンスの話が紛れ込んだ

  • リギアをさがすウィニキウス。
    なぜリギアは自分から逃げなければならなかったのか。
    それを助けるウィニキウスの叔父ペトロニウス。
    皇帝ネロに信頼され、従いながらもかわいい甥のために密かに奔走するうちに、ローマをクリストゥスがどれだけ浸食しているか、しだいに実態がわかってきます。

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