- Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003277317
兵士シュヴェイクの冒険 1 (岩波文庫 赤 773-1)の感想・レビュー・書評
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チェコ文学は基本どれを取っても外れ無しなのだけど、その中でも頭三つ抜けたヤバさ。第一次大戦当時、オーストリア=ハンガリー帝国の一部だったチェコを舞台に煮ても焼いても三ツ星シェフに任せても食えない「善良な兵士」シュベイクが権威と体制、戦争に踊らされる人々を罵倒後差別語入り交じりで徹頭徹尾おちょくりまくるユーモア小説。元アナキスト運動家である著者ハシェクの経歴も中々のものだが、これ程までアイロニーに満ちた小説がカフカと並ぶ国民的作家として扱われるというのはつくづく、チェコという国の業の深さを思い知らされる。
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戦争を書いた作品って、どうしても暗かったり陰惨だったりするものが多いと思うのだけど、シュヴェイクのキャラクター故になんだか気が抜ける。挿絵も絵本みたい。
たらい回しにされる先々で出会う人々が生き生きと描かれ、戯画的なのだがリアリティがある。前線から離れるためにあらゆる手を使って病気になろうとする兵士たちの話には驚き。水銀の蒸気を吸ったり石油を皮下注射したり、そこまでするかと思うけど、実際に前線にいたら逃げ出したくなるのが人情だよな…。
酔っ払い従軍司祭オットー・カッツもおもしろい。酒飲んで説教するわ泥酔してクダを巻くわトランプ賭博で大負けした上借金のカタに従僕を手放すわ、やりたい放題。このありがたみのなさが、お祈りしようがしまいが死ぬときゃ死ぬよ、というハシェクの冷静な視線の現れなのかな。戦争という状態を滑稽に描き、笑いに変える発想がすごいなあ。-
こんにちは♪
当時のチェコをはじめとする欧州の凄まじい歴史と戦争を背景にしているのですが、とても面白いでしょう! この作品は喜劇です。風刺的な笑いとマンガのような挿画がおかしい。ヨゼフ・ラダの挿画を収めているようなので、今となっては貴重な本かも。
「……生き生きと描かれ、戯画的なのだがリアリティがある」
わたしも同感です。ハシェクは第一世界大戦に徴兵され、オーストリー軍の兵士(ロシア軍の捕虜にもなる)だったようなので描写がリアルですね。もちろん「物語」なので、どこまでが事実でどこまでが虚構なのかはハシェクしかわかりませんが、この本は、事実を超えたある種の真実が描かれていて、物語の力を見せつけていますね。
2巻目以降もシュベイクのぐだぐだしい与太話や彼をとりまくバカバカしい世界が可笑しく笑えます。でも、現実世界は、これにまさるバカバカしい不条理な舞台かも(汗)。
2017/11/14
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広く読まれてるだけあるなぁ、と。
ハシェクの作品




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先の談話室のやりとりは初めてだったので、本やレビューの引用を失念してしまいました。でもまさかマヤさんがわざわざハシェクのレビューをお読みいただいているとは……感激です! 残念ながらハシェクはあまり日本では知られていないようですね。実際に読んでみると、とても面白くて歴史の重みがじわじわ伝わってきて、でもどこかドン・キホーテのような可笑しな物語で笑いが絶えません。すさまじいシュベイクの与太話に最初は唖然としたのですが、どんどん読み進めていくと、庶民の日常生活の小話の連続で、やっぱり可笑しい。卓越した作家というのはさすがですね~読ませます!
実はこの作者を紹介してくれたのがミラン・クンデラでした。そのほかにも、彼はオーストリアのムージルやブロッホも紹介してくれているのですが、いまだ懐で温めている状態です。先の談話室で紹介いただいたチェコのカレル・チャペックも含めていずれ読みたいと思っている作家たちです♪
チェコ人なのにオーストラリアの軍として戦うってどういう気持ちなのだろうとか、戦時下の日本と似ている部分があるなあとか、いろんな発見や疑問が出てきます。
それにしても、チェコは長い歴史の中で、周辺列強に次々占領されて大変ですね……確かシュヴェイクのころは、オーストリア・ハンガリー帝国でしたよね。第一次大戦後、やっとチェコスロバキアになったと思ったら、今度はナチスドイツ、お次はソ連……もう
大変な国!(チェコ作家チャペックの「山椒魚戦争」のレビュに、ナチスドイツ以降のとっても簡単な年表を書いてみましたのでご笑覧ください)。引き続きレビューを楽しみにしています♪