山椒魚戦争 (岩波文庫)

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本棚登録 : 531
感想 : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277416

作品紹介・あらすじ

赤道直下のタナ・マサ島の「魔の入江」には二本足で子供のような手をもった真黒な怪物がたくさん棲んでいた。無気味な姿に似ずおとなしい性質で、やがて人間の指図のままにさまざまな労働を肩替りしはじめるが…。この作品を通じてチャペックは人類の愚行を鋭くつき、科学技術の発達が人類に何をもたらすか、と問いかける。現代SFの古典的傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「RUR」と並ぶチャペックの代表作かつSFの大古典。名前は知っていたがなんとなく機会を逃していたので、ここで。

    軽妙洒脱なチャペックの語り口でこのテーマというのが、最初違和感があってなかなか入り込めなかったのだけれど、だんだん調子が出てくると苦笑いみたいなものに変わっていって、面白くなってきた。ちなみにぼくは最初から山椒魚の味方。がんばれ、人間なんかやっつけちまえ!
    SFとしても、文明批評としても面白い。さすがにちょっと古くさい感じはするけど。

    チャペックという人は、気さくで親しみやすそうに見えるけれど、実はシニカルで、一歩引いて物事を眺めているたちなのかもしれないと思った。本書も虐げられた山椒魚のリベンジ戦として書くことはできたはずだし、山椒魚と人間を対比させることで人間の愚かさを強調することもできたろうけれど、チャペックはそれをしなかった。人間ってアホだけど、言っても治んないよね~しょうがないよね~と思っていたのかもしれない。
    その分、後半の盛り上がりには欠けて、ちょっと残念。

  • 日本では『家畜人ヤプー』なんかにも影響を与えたといわれる一種のユートピア(あるいはディストピア)SF。(本筋とは関係ないですが「ヴィーナスレガッタ」とか、ヤプーでもまんま同じことしてましたね)

    同じチャペックの『R.U.R.(ロボット)』では人間の造ったロボットたちが人間に反旗を翻しましたが、こちらで人間の脅威となるのは、タイトル通り「山椒魚」。進化の気まぐれで二足歩行するようになった知能の高いサンショウウオたちが偶然人間に発見され、道具を与えられ、言葉を教えられることによって、やがては人間を脅かす存在となってしまいます。最初のうちは人間にとっての安価な労働力として重宝されてるあたりは、サンショウウオもロボットと同じですね。(最初にサンショウウオにナイフを与えたヴァントフ船長は、さながら人類に火を与えたとされる神話のプロメテウスのよう。あっさり出番なくなりましたが;)

    二本足で歩き人間の言葉を話すサンショウウオの存在は、ファンタスティックであると同時にグロテスクで、彼らに対する人間の対応は、SFの姿を借りつつ、現実社会に対する辛辣な皮肉でありパロディでもあります。時代背景として1936年当時台頭してきていたナチスドイツへの批判的部分もあり、たとえばジョージ・オーウェルの「1984年」しかり、一見フィクション色の濃いSFというジャンルのほうが、社会に対する痛烈な批判を孕んでいるというのは興味深いですね。

  • カレルチャペック の人間観察眼には脱帽。
    1938年に没した者とは思えない。

    描かれる人間の尽きぬ欲望の行き着く先はいつの時代も同じなのだろう。

    SF作家としての技量は疑うべくもない。
    山椒魚をAIに置き換えれば現代にも通じるものがある。

  • 1930年代に書かれたとは信じられない。シュールすぎる展開に大爆笑。人間が人間らしく生きようとすればするほど
    山椒魚に勝てない構造になっていくのが本当に可笑しい。途中で作者が出てきてしまうような展開は、現代の日本の作家に影響を与えたかもしれないと感慨にふける本。

  • 自分の世界が危うくなるたびに優しい者に甘えつつ理屈を振りかざす私個人のように、社会も弱い労働力や、教育や、法律で、いつも何かをねじ伏せようとするけれど、結局どうにもならない。山椒魚に支配されてゆく現実を前に、哲学者が書き始める人間のエピローグに「そもそも人間には、幸福になる能力があるのか」(一個の人間ではなく人類には)という一文があり、数年ぶりにその言葉を思い出したような気分になる。架空の新聞記事を辿るような奇妙な構成と、あいまに出てくる市井の人たちの慎ましい生活描写もよかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「いつも何かをねじ伏せようと」
      平和の向こう側から聞こえてくる足音に、身構えるのは人の常でしょう。。。チェペックの場合、束の間の平和でした...
      「いつも何かをねじ伏せようと」
      平和の向こう側から聞こえてくる足音に、身構えるのは人の常でしょう。。。チェペックの場合、束の間の平和でしたが、、、
      2014/03/10
  • 4.03/527
    内容(「BOOK」データベースより)
    『赤道直下のタナ・マサ島の「魔の入江」には二本足で子供のような手をもった真黒な怪物がたくさん棲んでいた。無気味な姿に似ずおとなしい性質で、やがて人間の指図のままにさまざまな労働を肩替りしはじめるが…。この作品を通じてチャペックは人類の愚行を鋭くつき、科学技術の発達が人類に何をもたらすか、と問いかける。現代SFの古典的傑作。』


    原書名:『Válka s Mloky』(英語版『War with the Newts』)
    著者:カレル・チャペック (Karel Čapek)
    訳者:栗栖 継
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎488ページ

  • SFの名作ということで読んでみました。戦前の作品なので少し心配でしたが、読みやすい訳でなにより面白い。2足歩行の山椒魚たちを想像するとちょっとかわいいかも。?

  • エッセイでも有名なチャペックの小説。エッセイを読んでみたかったけど、先に小説を読んでおこうと思い。

    結論めちゃくちゃ面白かった!結構分厚いけど読むのが止まらない。
    ある船長が入江で山椒魚を発見し魅力に取り憑かれ、ビジネス利用を初めたところ、世界的なビジネスになり、さらに山椒魚の数も増加。夥しく増えた山椒魚が生活場所を確保するためにとった行動とは…。

    人間の愚かさ汚さと、山椒魚の純粋に生をもとめる姿が対比になっている。
    緻密すぎる設定が、山椒魚戦争は過去本当にあったことなのでは?と思わせる。チャペックはすごい。
    山椒魚が実験で脳を刻まれたりひどい環境に置かれたり、はたまた大量虐殺されたとき、本を読んでいる分には「何てひどい…」と思えたが、この世界が現実にあったとして、本当に非人道的だと思えるのだろうか?

    あとイギリスと中国の扱いが酷いが、チャペックは両国が嫌いだったのか?

  • 1938年に亡くなったチェコの作家によるSF小説。

    今のインドネシアの海に住む山椒魚が、人から次々へと知能を獲得していく過程がなんともシュールでおもしろい。

    最後は人間と対決する。

  • 最高。

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著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カレル・チャペックの作品

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